艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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174話 ハンマー榛名、唯一の悩み(2)

食堂に着くと、既に蒼龍と飛龍がケーキを食べていた

 

「おい提督‼︎テメェなに一人だけケーキ食ってるダズル‼︎」

 

「榛名のもあるよ‼︎ニムもおいで‼︎」

 

榛名はワンコの左側に座り、また左側にニムも座る

 

「はいっ‼︎今日はお疲れ様‼︎」

 

「あはっ‼︎イチゴちゃんダズル‼︎」

 

榛名とニムの目の前に置かれたのは、クリームたっぷりのショートケーキとブルーベリーのケーキの二種類が置かれた

 

作ったのは勿論トラックさん

 

「…イチゴちゃんは赤色ニム」

 

「イチゴちゃんも真っ赤っかで美味しそうダズル‼︎いただくダズル‼︎」

 

榛名は左手でフォークを持ち、ケーキを食べ始める

 

榛名は両利きであり、いつもお箸やフォークが置いてある方の手で、それ等を持って食べる

 

「イチゴちゃん美味しいダズル‼︎」

 

「ニムはブルーベリーニム‼︎」

 

榛名もニムもご満悦

 

トラックさんもそんな二人を見てご満悦の様子

 

「榛名ちゃんには勝てない相手はいるのかい⁇」

 

「いるダズル。大佐の所の貴子ダズル」

 

そこにいた全員から”あぁ…”と、声が漏れる

 

「力としても、女としても勝てん相手ダズル」

 

再び全員からため息が漏れる

 

横須賀分遣基地の提督である大佐の嫁…貴子さん

 

褐色で巨乳なだけでも男を堕とせるのに、面倒見の良さと家庭的な性格のお陰で、榛名の様なチョット大人な艦娘から見てもかなり立派な女性である

 

…そして、空で無類の強さを誇る大佐を唯一撃墜したのも彼女である

 

貴子さんの事は反対派の中でも度々噂に上がり

 

・トラックさんが脱帽するレベルの料理の腕

 

・榛名を感服させる程の腕力

 

・横須賀以上の包容力

 

・怒ったら呉さん以上に怖い

 

等々…

 

大体は褒め言葉が出て来る

 

「ははははは‼︎シチューしか作れんダズルは何一つ勝てんニム‼︎イテェ‼︎」

 

榛名は黙ったまま、ニムのつむじにゲンコツを落とした

 

「半分は後で食べるダズル。美味しいモンはゆっくり食べるダズル」

 

「今日中には食べてね⁇」

 

「分かったダズル」

 

榛名は冷蔵庫に半分残したケーキを入れた

 

「では、ありがとうございました」

 

「またお相手してね‼︎」

 

「楽しかったわ‼︎」

 

数十分後、トラック基地の連中が高速艇で基地を去る

 

ワンコは執務室に戻り、ニムは自室に戻った

 

食堂には榛名一人だけが残った

 

「お疲れ様、榛名」

 

「ハギィ」

 

洗濯物を干し終えたHAGYが戻って来た

 

「ハギィはトラックさんのケーキ食べた事あるダズル⁇」

 

「いえ…でも、とても美味しいのですよね⁇」

 

「これをやるダズル」

 

榛名は先程残しておいたブルーベリーのケーキを冷蔵庫から出し、HAGYの前に置いた

 

「とっても美味しいんダズル」

 

「頂いて良いのですか⁇」

 

「ハギィに食べて欲しいダズル」

 

「では、お言葉に甘えて…頂きます」

 

「ふふふ」

 

HAGYの向かい側の席に座り、頬杖をつきながらHAGYを見る榛名

 

榛名はこうしてHAGYを見るのが好きだ

 

身近にいる母親の代わりの様な存在である彼女に対して、榛名は恋心に近い感情を向けていた

 

健康を気にして本当に美味しい物を食べた事が少ない彼女を連れ出して横須賀の繁華街に行ったり、色々な遊びを一緒にするのも大体彼女である

 

霧島やニムも付き合ってくれるが、一番最後まで榛名に着いて行けるのは彼女しかいない

 

榛名は身近にも越えられない相手が居たのだ

 

「お腹イッピーです‼︎」

 

「提督には内緒ダズルよ⁇」

 

「えぇ‼︎内緒です‼︎」

 

そんなHAGYも、段々と榛名に甘える様になって来ている…

 

 

 

 

そんな二人の様子を、食堂の陰から一人の少女は見ていた

 

「ダズルは良い奴すぎるニム…こうなったら…」


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