艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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170話 粘土で遊びたいでち‼︎(2)

数分後…

 

「これは…」

 

目を開けたタナトスは、不思議そうに”手”を動かす

 

「おはよう、タナトス‼︎」

 

「緑色…タナトスはどうなったでちか⁇」

 

カプセルから出て来たタナトスは、少しだけ嫌そうにきそを見つめた

 

「それはタナトスのボディだよ。僕からのお詫びっ」

 

「凄いでち…」

 

ボディを持ったタナトスは、不思議そうに辺りをキョロキョロする

 

「おっ‼︎中々可愛い奴が出て来たな⁉︎」

 

「別嬪さんだな‼︎」

 

「‼︎」

 

俺に気付いたタナトスは、すぐに抱き着いて来た

 

「創造主でち‼︎」

 

「初めましてだなっ」

 

タナトスの頭をしっかりと撫でる

 

タナトスはしばらく俺に抱き着いたまま離れようとしなかった

 

タナトスをくっ付けたまま、粘土をしている子供達の所に戻って来た

 

「でっち〜ら‼︎」

 

「れっち〜ら‼︎」

 

「ひとみといよでち‼︎」

 

「行って来い」

 

タナトスを離し、ひとみといよの所に行かせる

 

「でっち〜‼︎」

 

「れっち〜‼︎」

 

タナトスはひとみといよを同時にギュッと抱き締めた

 

「ずっとこうする夢を見てたでち…」

 

「んっ‼︎レイの子だな‼︎」

 

「すてぃんぐれいみたい‼︎」

 

「レイそっくりだね‼︎」

 

「流石は生みの親」

 

隊長、たいほう、れーべ、まっくすは当時の事を知っている

 

今のタナトスを見て、自分でもそう思った

 

「れっち〜。ひとみたちとねんろしよ‼︎」

 

ひとみから紙粘土を受け取り、タナトスは不思議そうにそれをこねる

 

「でっち〜なにつくう⁇」

 

「これが粘土…おぉ…凄いフニュフニュしてるでち」

 

今のタナトスは、見る物触る物全てが不思議な状態だ

 

産まれて初めて触れた物体が粘土なら尚更だ

 

ひとみといよ、そしてたいほうと同じ様に遊ぶタナトスを見て、胸を撫で下ろす

 

破壊神や死神と言われた子が今、子供達と共に遊んでいる

 

そんな光景を見て、何だかホッとした

 

「あ、そ〜だ‼︎タナトスに新しい名前付けなきゃ‼︎」

 

「タナトスはタナトスで良いでち」

 

「そ、そっか…」

 

「この名前が好きなんでち。創造主がタナトスに付けてくれた名前でち」

 

「何か、良い意味で思ってたのと違うって思ってるの僕だけ⁇」

 

「タナトスは元々命を大切にする子だ。ただ、降り掛かる火の粉を自力で弾き返す力を持ってるだけさ」

 

しかしまぁ、随分可愛いボディを造って貰ったな…

 

 

 

 

 

「みんなご飯よ〜‼︎」

 

貴子さんの声で、子供達が食堂へと向かう

 

それぞれの作った紙粘土は、もうほとんど完成に近付いている様に見える

 

そんな中、タナトスだけ粘土をこね続けていた

 

「タナトスも行く…」

 

タナトスが作っていた紙粘土も既に完成に近付いている

 

ただ、あまりの完成度に息を飲んだ

 

「これはひとみ。こっちはいよでち」

 

タナトスの手元には、ひとみといよがそれぞれのイルカに乗っている粘土細工が出来上がっていた

 

「凄いじゃないか‼︎」

 

「その内創造主も作るでち」

 

タナトスは褒められて御満悦の様子だ

 

「さっ。ご飯だ。行くぞ〜」

 

「タナトスも食べて良いでちか⁇」

 

「勿論さ‼︎貴子さんの料理は美味いぞ〜」

 

タナトスはマットから立ち、俺の後ろを着いて来た

 

「でっち〜きた‼︎」

 

「れっち〜ここすわう‼︎」

 

ひとみは自身の隣をポンポン叩き、タナトスが座るよう促す

 

「あらっマーカス君‼︎お盛んね‼︎」

 

「慣れて来てるのが怖い…」

 

「ふふっ、冗談よ。きそちゃんから聞いたわ。貴方がタナトスちゃんね⁇」

 

「貴子さんでちか⁇」

 

「そうよ。宜しくね⁇」

 

口では返事をしないが、タナトスはちゃんと頷いている

 

「あ、そうそう。大人用のオカズ作り過ぎちゃったのよね…」

 

「ゔっ…」

 

貴子さんが持って来たのは、ゴーヤチャンプルー

 

俺は瓜科のアレルギーを持っているので、食ったら死ぬ

 

と言うか、貴子さんが瓜科を使った料理をするのは珍しい

 

「信号機みたいな子達が持って来てくれたのよ。無碍にする訳にもいかないと思って…」

 

「これは何でち⁇」

 

「タナトスちゃんにはちょっと早いかもね…」

 

貴子さんがそう言うと、タナトスはゴーヤチャンプルーに手を伸ばした

 

「事を知るのに遅い早いは関係無いでち‼︎タナトスが食べるでち‼︎頂戴しますでち‼︎」

 

案外丁寧に貴子さんの手からゴーヤチャンプルーを取り、タナトスはひとみといよが待つ席に座る

 

「あら…」

 

「ホントにレイそっくりだな⁇」

 

「事を知るのに遅い早いは関係無い…か」

 

タナトスは俺の口調が少し移ったのか⁇

 

色々と俺に似ている気がする

 

「んっ⁉︎」

 

「ほらほら‼︎やっぱり苦いでしょう⁉︎」

 

貴子さんが心配そうに近寄ると、タナトスは口にしたゴーヤチャンプルーを飲み込んだ

 

「美味しいでち‼︎」

 

「あらっ、苦いの好き⁇」

 

「タナトスはご飯食べるの初めてでち。これが苦いでちか…でも、貴子さんの料理は美味しいでち‼︎」

 

「ふふっ、気に入ったわ‼︎」

 

「おい緑色‼︎」

 

「はいはい」

 

「さっき名前を決めろと言ってたでちな⁇」

 

「決まった⁇何でも良いよ⁇それで登録してあげる‼︎」

 

「ゴーヤにするでち」

 

「ゴーヤ⁉︎それはまたどうして⁇」

 

「タナトスが初めて食べたご飯を忘れない様にする為でち。創造主、ゴーヤでも良いでちか⁇」

 

「んっ⁉︎意味があるならそれでいい。立派な名だ‼︎」

 

「ご〜や⁇」

 

「れっち〜ちあう⁇」

 

「ひとみといよはでっち〜で良いでち。そっちの方が呼び易いでちよ⁇」

 

「じゃあしおい、でち公ってよ〜ぼお‼︎」

 

「はっちゃんはでっち〜にします」

 

「ぐっ…お…」

 

嫌がり方も俺そっくりだ

 

「よしっ。名前が決まったお前に、俺からプレゼントだ」

 

「ん⁇」

 

ゴーヤは産まれてからずっと、前髪が目にかかっていた

 

俺はゴーヤの前髪をかきあげ、髪留めを付けた

 

「おぉ…」

 

「見やすいか⁇」

 

「見やすいでち‼︎ありがとう、創造主‼︎」

 

「それは電探になってる。誰かが逸れたら、それを使って探してやってくれ」

 

「了解したでち‼︎」

 

「いよはこれあげう‼︎」

 

「ひとみもこれあげう‼︎」

 

ひとみといよがワンピースのポケットから出したのは、花弁の髪飾り

 

恐らく、スーぴゃ〜マーケットか何処かで買ったのだろう

 

「付けてあげるわ。ひとみちゃん、いよちゃん、貸してくれる⁇」

 

「「あいっ‼︎」」

 

髪飾りを貴子さんに渡し、ゴーヤはそれを付けて貰う

 

「うんっ‼︎よく似合ってるわ‼︎」

 

「うふふ…」

 

ゴーヤが思い切り笑った顔を初めて見る

 

異名とは違い、年頃の女の子の笑顔を見せてくれた…

 

 

 

 

 

潜水艦”伊58”が、時々遊びに来る様になりました‼︎




伊58…チャンプルー娘

タナトスのAIから産まれて来た艦娘

タナトスの時とは違い、暴力的な性格は影を潜めている

趣味は潜水と粘土細工を作る事

時折基地に遊びに来て、しおい、はっちゃんと共に海の幸を採って遊んだり、ひとみといよと近海で泳いだりする事もある

産まれてこの方、きそが大の苦手であり、きそを”緑の奴”と呼ぶ

きその事は嫌いではなくて、苦手

いつ機能制御されるか分からないかららしい

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