艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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169話 被害者続出‼︎Panic In The Yokosuka City(3)

「何だ⁉︎」

 

女の子の悲鳴に気付き、コーラを置いて声のした方に行ってみる

 

「すまんすまん、怖かったダズルな…」

 

「オボッ…オボロロロロロ…」

 

「どうした⁉︎」

 

「は、榛名…」

 

榛名が背中をさすっている女の子は、ずっとゲボを吐いている

 

「モグラ吹っ飛ばしたら、この子の前に落ちちゃったダズル…」

 

「ビックリしたな、朧」

 

「ヒック…エグエグ…」

 

朧の足元には、引き千切れたモグラの模型があり、首から何かの液が出ていた

 

大人でも一瞬たじろぐ怖さがある

 

朧の口元を拭いた後、よほど榛名が怖いのか、朧は俺に抱き着いたまま離れなくなった

 

「酷い事をしたダズル…」

 

「榛名…」

 

流石にワンコは榛名を叱ろうとした

 

俺はそんなワンコの腕を止めた

 

「ここは遊戯場だ。お前達、ザラの所にジュース置いてある。それ飲んでちったあ落ち着け」

 

「はい…」

 

「分かったダズル…」

 

流石の榛名も反省している様子だ

 

「朧っ」

 

朧は俺の腹部に顔を埋めたまま離れようとしない

 

「よいしょっ」

 

朧を抱きかかえ、顔を見る

 

かなり怯えている様子だ

 

「榛名は怖いな⁇」

 

「…はい」

 

「でも、榛名だって遊びたかったんだ。賢い朧なら、分かってくれるな⁇」

 

「はい…」

 

「あっ‼︎レイさん‼︎」

 

「このクソパイロット‼︎朧にまで手を出したの⁉︎」

 

漣と曙が来た

 

どうやら、ここで遊ぶ予定だったみたいだ

 

「朧を返しなさい‼︎早く‼︎」

 

「曙ちゃん、違うよ。レイさんは朧を助けてくれたの。よいしょ」

 

「ハァ⁉︎」

 

「レイさん‼︎ウチの朧がお世話になりました‼︎」

 

曙がキツイ分、漣は案外礼儀正しい

 

「これで冷たいモンでも飲ませてやれ」

 

三人分のジュースが買える小銭を、漣に渡す

 

「コイツ、金で揉み消すつもりよ‼︎」

 

「レイさんはそんな人じゃないよ‼︎」

 

「レイさん、ホントにありがとうございました」

 

「気にすんな。ほら、行って来い」

 

三人を見送るが、曙だけは嫌そうに此方をチョイチョイ見返して来た

 

ザラの所に戻って来ると、榛名は珍しく下を向いて落ち込んでいた

 

「今日はやり過ぎちゃったね⁇」

 

「うん…」

 

珍しく榛名の語尾にダズルが付かない

 

これは重症だ

 

「そんな落ち込むなっ」

 

「レイ…」

 

榛名の横に立ち、余っていたコーラを飲む

 

そして、三人に気付かれない様に榛名のコーラにあの薬を入れる

 

さて、榛名はどう出るか…

 

「子供に嫌われたり、泣かれたりするのはイヤダズル…」

 

そう言いながら、榛名はコーラを口にする

 

俺は生唾を呑んだ

 

「ワニは良いけど、もうモグラはしちゃダメだよ⁇分かった⁇」

 

「提督はお優しいのですね…」

 

「へっ⁇」

 

「えっ⁉︎」

 

ワンコとザラが榛名の方に振り向く

 

「榛名がハンマーを振り回したり、”ニムさん”や”萩風さん”を叩いたりしても、提督は榛名をキツく叱ったりしません」

 

「ニムさんって…榛名⁇」

 

「そんな提督だからこそ、榛名は提督をお慕いしています」

 

そう言って、榛名はワンコに微笑みを送る

 

いつもの流し目の様な怖い微笑みではなく、本心から出た優しい微笑みだ

 

「あ…う、うん‼︎」

 

「ふふっ‼︎あっ‼︎提督、榛名と”ぷりくら”を撮りませんか⁇あれなら、榛名はハンマーを振り回さずに済みます‼︎」

 

「うんうん‼︎行こう行こう‼︎」

 

ワンコはよっぽど嬉しいのか、すぐに榛名を連れて、ぷりくらコーナーに消えて行った

 

「な…何あれ…」

 

「さっすが鹿島の薬だな…」

 

ザラに見せびらかすかの様に、あの薬を見せる

 

「それなんですか⁇」

 

「抑え付けてた感情を表に出す薬さ。榛名の本心はあぁなんだよ」

 

榛名は元から根は優しい子だ

 

それが薬の効果で表に出た

 

しっかしまぁ…アレだけ逆転するとはな…

 

語尾にダズルが無くなり、暴力的な性格は影を潜めている

 

…数時間後が楽しみだ

 

「れ、レイさん…私もそれを飲めば、抑え付けてた感情が表に出ますか⁇」

 

「何だ⁇飲んでみるか⁇」

 

「私も何か変わるのかな…って」

 

「良いだろう。飲みモンあるか⁇」

 

ザラはすぐに自分の分のジュースを淹れて来た

 

その中に薬を入れ、軽く混ぜた後、ザラは一気に飲み干した

 

と、同時に5時の時報が鳴る

 

「ザラ、交代するね」

 

時報と同時に来た女の子は、左目が義眼になっていた

 

「古鷹。後は頼むわね」

 

「古鷹…」

 

「こんにちはレイさん」

 

「その子は最近此処に来たの。優しい子よ⁇」

 

「そっか。宜しくな」

 

「はいっ‼︎」

 

「レイ、行くわよ」

 

「へっ⁉︎あ、あぁ‼︎」

 

ザラに呼び捨てにされ、遊戯場を出る

 

「どこ行くんだ⁇」

 

「間宮よ。レイと飲みたいのもあるけど…まずは片付けなきゃイケナイ奴がいます」

 

間宮に着くと、久々に見た顔が居た


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