艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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立て続けに特別編です

前回の続きの様なお話です

遂に売られる事になってしまったアイガモ達

その事を知った、たいほうと照月は一体何を思うのか…


特別編 生命の疑問

「が〜が〜しゃん‼︎」

 

「がぁ〜がぁ〜‼︎」

 

表でひとみといよ、そして照月とたいほうがアイガモの散歩をしている

 

「そろそろ時期じゃないの⁇」

 

「まぁなっ…」

 

叢雲の言う通り、日本の法律に従って、アイガモはそろそろ食わなければならない

 

あれ程愛着のあるアイガモを、四人は食べられるのだろうか…

 

当初は命の大切さを学ばせる為に飼い始めたアイガモだが、あまりにも残酷過ぎる気もする…

 

それに、調理出来る人間がここには居ない

 

もし出来たとしても、子供達の前で残酷なシーンは見せたくない

 

「子供達には良い思い出になるかも知れんな…」

 

「だと良いんだが…」

 

特にたいほうと照月は本当によく面倒を見てくれた

 

アイガモ達は、ほぼ毎日照月に追い回されていた

 

暑い日は照月に頭にマヨネーズを付けられ

 

寒い日は照月に体にマヨネーズを付けられ

 

照月の「お腹空いたぁ〜」との声が聞こえれば、アイガモ達はマヨネーズを付けられていた

 

………

 

よくよく考えたら、照月にマヨネーズを付けられ、食べられそうになっている思い出しかない…

 

照月…

 

ガンビア…

 

「あ‼︎そうだ‼︎神威に引き取って貰おう‼︎ボスなら何とかしてくれる気がする‼︎」

 

「ボスなら良いかもしれんな」

 

 

 

 

「それで、私に頼みに来たのかい⁇」

 

物資を搬入する為に基地に寄ったボスを捕まえ、食堂に連れ込む

 

「ボスにしか頼めないんだ‼︎」

 

「まぁ、出来ない事は無いけど…取り敢えず、そのアイガモを見せてくれるかい⁇」

 

「こっちだ」

 

子供達が昼寝をしているこの時間…

 

チャンスは今しかない

 

「ほぉ〜⁇中々良い頃合いに太ってるじゃないか‼︎」

 

ボスは平然とした表情で一羽のアイガモを捕まえる

 

「一羽1000円でどうだい⁇」

 

「金はいい」

 

「ダメだ。タダで貰う訳には行かない。照月ちゃんとたいほうちゃんにあげておくれよ」

 

「なら、それで頼む」

 

「了解したよっ」

 

ボスにアイガモ達を引き取って貰う事になった

 

俺はアイガモの代金を受け取り、内ポケットに仕舞う

 

「岩井とは上手く行ってるのか⁇」

 

「上手く行ってるさ。岩井が私を嫌わなければ…だけどね⁇」

 

「なら良かったよ」

 

「アンタもまた大湊に来るんだよ⁇」

 

ボスはそう言って、俺に耳打ちする

 

「…鹿島の顔見なくたって、ご飯位は食べに来ておくれっ…黙っといてあげるから」

 

「ありがとう」

 

「じゃあね‼︎」

 

ボス達が去り、アイガモ達も基地を去る…

 

さて、どう説明するかな…

 

 

 

 

「ごちそうさま‼︎」

 

「お散歩行って来ます‼︎」

 

オヤツを食べ終えたたいほうと照月は、日課であるアイガモの散歩に行こうとする

 

「た、たいほう、照月」

 

「ん⁇」

 

「ちょっとこっちおいで」

 

たいほうと照月を呼び止め、机を挟んだ向こう側に座らせる

 

「アイガモさんな、結構太って来ただろ⁇」

 

「そろそろ食べ頃だよねぇ〜‼︎照月、早く食べたいなぁ〜‼︎」

 

「あいがも、ほんとうにたべれるの⁉︎」

 

「食べれるよ‼︎照月、アイガモのおそば好きなんだぁ〜‼︎」

 

「アイガモさんな、欲しいって人が居たから、その人にあげたんだ」

 

「何であげちゃうの⁉︎照月が食べるんだよ⁉︎だから毎日マヨネーズで味付けしてたのに‼︎」

 

「あいがも、もういないの⁇」

 

「日本の法律はややこしいんだ」

 

「照月、日本嫌い‼︎」

 

「たいほうもきらい‼︎」

 

「まぁ、その気持ちは分かる。それでな⁇その人が二人に育ててくれてありがとうって、お金をくれたんだ」

 

アイガモは全部で11羽

 

一羽1000円で、合計11000円

 

一人5500円を二人に渡す

 

「大人って汚いよね…照月達の自由を全部奪う…」

 

「あいがも、たべられるためにうまれてきたのかなぁ…」

 

照月はかなり怒っており、たいほうは呆れ返っている様に見える

 

「照月、国のシステム変えようかなぁ…全部倒せば、照月がリーダーだよねぇ…」

 

照月は余程怒っている

 

照月は散々アイガモにマヨネーズをかけたりしていたが、それ相応に愛情も注いでいた

 

それをいきなり売ってしまった俺にも責任はある

 

「だめだよ‼︎き〜ちゃんいってた。そのうちくたばるからほうっておけって‼︎」

 

たいほうはたいほうで、既に諦めている様に見える

 

「そうなのかなぁ…」

 

「パパもいってたよ。くにのぼうそうはいつかおわるから、ほうっておけばいいって。こっかいぎいんは、せっぱつまるとわかるんだって‼︎」

 

「照月が切羽詰らせてあげようかなぁ…」

 

「コラコラ。そんな事言っちゃいかんぞ。どうだ⁇そのお金でお菓子買うか⁇」

 

「貯めておこうかな。いつか叩き返す為に…」

 

これ程怒っている照月を見るのは初めてかも知れない…

 

「すまん、二人共。アイガモを売ったのは俺だ‼︎」

 

「何でお兄ちゃんが謝るの⁇」

 

「すてぃんぐれいわるくないよ⁉︎」

 

「お前達が悲しむと思って、黙って売った俺が悪いんだ‼︎」

 

「それは違うよ。悪いのは国だよ⁇国が作った法律だよ⁇照月達から自由を奪う為に作ったルールだよ⁇」

 

「そのうち、たいほうたちもくにのるーるでころされるのかなぁ…」

 

たいほうの疑問で、軽く息が詰まる

 

総理はそんな人ではないが、別の政治家ならやり兼ねない…

 

そんな中、台所に居た貴子さんとグラーフが反応を示した

 

「そんな事ないわたいほう」

 

「大丈夫。もしそうなったら、マーカスもパパも助けてくれる」

 

「照月もいるよ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

そうならない事を祈りたい…

 

「照月、チョー☆ゴー☆キン買おっかな‼︎それなら、国に持って行かれないでしょ⁉︎」

 

「たいほうはぷらもでるかう‼︎きそとつくるの‼︎」

 

「よしよし。なら、今からタウイタウイに連れてってやる‼︎準備して来い‼︎」

 

「マーカス君。私もお買い物行きたいから、秋津洲ちゃん呼びましょう⁇」

 

「そうだな」

 

その日、貴子さんと俺、そしてたいほうと照月でタウイタウイモールに行った

 

照月の国に対する不信感と嫌悪感は異常なまでに膨らんでいる

 

周りの影響もあるだろうが、アイガモの一件で更に嫌悪感を見せている

 

それに、照月の力なら本当に破壊しかねない

 

そして、たいほうが抱いている不安…

 

もしそうなった場合、俺は子供達を助けられるだろうか…

 

俺の考えが取り越し苦労だと良いのだが…

 

俺はその晩、あまり眠る事が出来なかった…




次回からは本編になります

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