艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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166話 もう一人の恩師(3)

「中々イケるわね⁉︎」

 

「美味しいよ‼︎」

 

「うんっ、美味い‼︎」

 

「へへっ、良かったぁ‼︎」

 

最上も嬉しそうだ

 

そして、いつも気になるネーミングセンス

 

…どうにかならなかったのだろうか

 

最上のスティックミート…か

 

合ってるっちゃ合ってるんだが、な〜んか違う気がする…

 

「美味しかった‼︎また来るね‼︎」

 

「うんっ‼︎ありがとう‼︎」

 

肉を食べ終え、店から出る

 

そしてすぐにきそと霞が口を開いた

 

「スッゴク美味しかったけど、あの名前、どうにかならなかったの⁇」

 

「味と価格で勝負してんじゃない⁇」

 

やはり二人も思っていたか…

 

「さてとっ…」

 

「レイ。僕、霞とその辺にお買い物行って来てい〜い⁇」

 

「おぉ、いいぞ。ちょっとタナトス見て来るから、飽きたら帰って来いよ⁇」

 

「分かった‼︎霞、行こう‼︎」

 

「えぇ‼︎」

 

きそと霞と別れ、俺はタナトスが停泊している場所に来た

 

《創造主でち》

 

「中に入れてくれるか⁇」

 

《OKでち‼︎》

 

ちゃんとタナトスに許可を入れてからじゃないと、無理矢理入ったりしたら潜行してしばらく上がって来なくなる

 

タナトスの中に入り、先程のUSBメモリを取り出した

 

「調べ物がしたい。いいか⁇」

 

《外部からの通信をシャットダウンしたでち》

 

「いい子だ」

 

USBメモリを挿し、情報を開示する

 

「これは…」

 

《見た事ある奴でち》

 

探していた人物は案外近くに居た

 

深くため息を吐き、頭を落ち着かせる

 

「タナトス。この情報に嘘が無いか調べてくれ」

 

《今の所は無いでち。どの写真にも合成箇所はないでち》

 

「だったら俺は、今まで気付かないままで居たのか⁇」

 

《そういう事になるでち。まぁ、これだけ変わっていれば誰だって分からないでち》

 

ため息を吐き、肩を落とす

 

「だからグリフォンの設計図くれたり、クラウディアの建造に付き合ってくれたのか…」

 

《そう言う事でち》

 

「参ったな…」

 

《創造主お得意の遠回しで探りを入れて見るでち》

 

「そうするか…ありがとうな⁇」

 

《これ位ならいつでもでち‼︎》

 

USBメモリを抜き、タナトスから出る

 

そして、とある場所を目指す…

 

 

 

 

「ン⁇」

 

着いた先はマークの研究室

 

「マーカスカ。ハカセハキュウケイチュウダ」

 

「ヴェアと話に来た。嫌か⁇」

 

「ン〜ン。ウレシイ。コーヒーニスルカ⁇ソレトモタンサンガイイカ⁇」

 

目の前で冷蔵庫を弄るヴェアは、俺が彼女に言っていないハズの嗜好品を何故か知っている

 

「炭酸にする」

 

「ホラッ」

 

サイダーを投げ渡され、缶の周りを少し指で叩いた後、蓋を開け、ヴェアの横に座る

 

「メズラシイナ、ヴェアニアイニクルナンテ」

 

「色々お礼を言いたかったんだ。グリフォンの設計図とか、クラウディアの建造とか」

 

「ヴェアハシリタカッタダケ。マーカスノゲンカイヲ」

 

ヴェアは俺の横で同じ様にサイダーを飲む

 

「ソウイエバ、マーカスハユビワヲモウヒトツワタシテナイラシイナ。ジェミニガサワイデタ。ダレニワタスツモリダ⁇」

 

面白半分でそれを聞いてくるヴェアも、やっぱり乙女なんだな…

 

「実は渡そうと思ってるんだ」

 

「ダレニダ⁇」

 

「世話になった人さ。俺に兵器の造り方や、AIの産み方を教えてくれた人だ」

 

「…マーカスモリチギダナ」

 

ほんの数秒前まで俺の目を見ていたヴェアは、急に前にあったPCに目を向けた

 

俺は椅子から立ち、机にもたれ、ヴェアの横にあった灰皿を此方に寄せた

 

「吸うか⁇」

 

「ヴェア、サイキンガムニシタ」

 

それでも俺はヴェアにタバコの箱を突き付ける

 

ヴェアは諦めたのか、差し出したタバコの箱から一本取り出し、自身のライターで火を点けた

 

「メンソールの方が良かったか⁇」

 

「レギュラーデモイイ」

 

ふと、灰皿に目をやる

 

吸殻が立っている様な状態で、所狭しと刺さる様に火が消されている

 

クセのある火の消し方だ

 

嘘つきだな、ヴェアは…

 

たまにいる、喫煙女性の独特の体臭

 

俺からすれば、妙に心をくすぐられる微妙な匂いだ

 

ヴェアにはふとした瞬間それがした

 

「ヴェアは好きな人いるのか⁇」

 

「ハカセ」

 

即答だった

 

「デモ、ハカセヨメイル」

 

「そっか…話、変えようか。深海棲艦になったら、記憶が消えるってのは本当らしいな⁇」

 

「コジンサハアル。チョットノコッテルノモイレバ、イマノタカコサンノヨウニ、ナカナカモドラナカッタイヒトモイル」

 

「お前もいつか、戻るといいな⁇」

 

「ヴェッ‼︎」

 

そう言って、工廠で時折掛けているメガネをヴェアに掛けた

 

「じゃあな。また来るよ」

 

「ウン…」

 

 

 

 

 

 

俺が出た後、ヴェアはメガネを取り、まじまじとそれを見つめた

 

「ほんっと…遠回しな子なんだから…全部気付いてる癖に」

 

ヴェアはメガネを掛け直し、何故か嬉しそうにPCに向かう

 

メガネの両縁には文字が彫ってある

 

かなり昔の物の様で、少し擦れて読めなくなってはいるが、片方の文字からすると、何かの記念品の様だ

 

そして、もう片方にはマーカスが尊敬している人物の名前が、そこには彫られていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀 博士




レイが缶を指で叩いていましたが、炭酸系のジュースの缶は、外周をグルリと一周、指で弾く様に叩くと吹きこぼれにくくなります

これは実際にも使えるので、是非お試し下さい

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