艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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166話 もう一人の恩師(2)

「はぁ…」

 

中にはシスター・ヌードルが降り、椅子に座って即席麺を食べながら、ブラウン管のテレビを見て爆笑していた

 

「きそ。アレンに送ってやれ」

 

「あやややや‼︎それはダメでし‼︎」

 

シスター・ヌードルは急いでテレビを消し、シスター・グリーンの手伝いに向かう

 

数分後、お盆に5つコップを乗せて二人が椅子に座る

 

「はいっ、出来たわ‼︎ミントティーよ‼︎」

 

全員に行き渡り、きそと霞もコップの中身を飲もうと手を伸ばした

 

「先に飲んでみろ」

 

「えっ⁉︎」

 

「うっ…」

 

きそと霞が伸ばしていた手を引っ込めた

 

シスター・グリーンは冷や汗を流し、シスター・ヌードルは顔が引きつる

 

「流石はマーカス君でし」

 

「ふふっ…マーカス君とアレン君には敵わないわね⁇」

 

シスター・グリーンはミントティーを飲み、安全である事を保証して見せた

 

「飲んでいいぞ」

 

きそと霞もミントティーを口にし、ささやかながらお茶会が開かれる

 

「あっ、そうでし‼︎ヌードルのオヤツがあるでし‼︎」

 

シスター・ヌードルが席を離れ、レトロ感溢れる冷蔵庫からお菓子を取って戻って来た

 

「ヌードルが作ったでし‼︎抹茶、チョコ、イチゴ味でし‼︎」

 

ヌードルは早速置いたお菓子を口にする

 

どうやら安全みたいだ

 

「”マカロフ”か。洒落たモン作るじゃねぇか」

 

「「え⁉︎」」

 

「マーカス君⁇」

 

「それはピストルでし」

 

きそと霞は俺の方を見て、口を開けており、シスター二人は馬鹿にした様な目で俺を見てくる

 

「レイ。これはマカロ”ン”‼︎はい‼︎」

 

「マカロン‼︎」

 

「そろそろローマにチクろうかしら‼︎」

 

「ダメだ‼︎それだけはいかん‼︎」

 

「ふふっ、冗談よ‼︎」

 

最近、霞の冗談がシャレにならない位上手くなって来た

 

「これ美味しいや‼︎」

 

「いっぱいあるから、好きなだけ食べていいでし」

 

「ちょっと一服してくる。シスター、二人を任せた」

 

「これ食べてるでし」

 

反応したのはシスター・ヌードルだけ

 

俺は裏口から外に出て、海の見える防波堤に座り、タバコに火を点けた

 

「よいしょ」

 

隣に座ったのはシスター・グリーン

 

俺はタバコを吸う為に外に出る時、シスター・グリーンにアイコンタクトを送っていた

 

なのでシスター・グリーンは反応しなかった

 

話があるから、そのまま出て来いとの合図だ

 

「指環でもくれるのかしらっ⁇」

 

「例の人は見付かったか⁇」

 

シスター・グリーンの話を無視して話を進める

 

実は、大分前からとある人物を探して貰っている

 

その人は俺の尊敬する人で、AIの産み出し方、そして教育の仕方を教えてくれた博士だ

 

流石に隊長には敵わないが、心底感謝している

 

ただ、反攻作戦前後辺りから行方を眩ませている

 

せめて俺が力になれるなら、なってやりたい

 

そして、あわよくば…

 

「一つ聞いてもいい⁇」

 

「答えられる事ならな」

 

「どうしてそこまでして、その人を探してるの⁇」

 

「世話になった人なんだ。何にもお礼をしてない」

 

「好きだったの⁇」

 

「そうじゃない。ただ、尊敬はしてる」

 

俺は何にも考えずに少し座り直した

 

「嘘ね。マーカス君、自分を隠す時、ずり落ちても無いのに座り直すもの」

 

「…好きだと言えばそうなのかもな」

 

「そう…一応、探してはおいたわ」

 

そう言って、シスター・グリーンは服をズラし、谷間を見せた

 

そこにはUSBメモリがネックレスに付けられて、首から下げられていた

 

「ここに、マーカスの知りたい情報が入ってるわ」

 

「対価は何がいい⁇」

 

「ゆb…」

 

「指は困る。戦闘機を動かせなくなるからな」

 

「じゃなくて‼︎ゆびw…」

 

「指環以外な」

 

「んもぅ…」

 

シスター・グリーンを困らせるのは面白い

 

「あげるっ」

 

シスター・グリーンはUSBメモリを付けていたネックレスを取り、俺の首に付けた

 

「これまでマーカス君を利用した事、これで少しは償えたかしら⁇」

 

「充分だ。まっ⁉︎後は手当たり次第薬を入れなきゃ、シスターはモテるぜ⁉︎」

 

「ふふっ…私はババァなんでしょ⁇」

 

シスター・グリーンは、少し悲しそうに微笑んでいる

 

「俺達を利用してなきゃ、渡す相手はアンタだった」

 

「…じゃあっ‼︎来世に期待しよっかなぁ‼︎」

 

「その前に良い奴来るさ。低身長で巨乳。デメリットがあるとすりゃあババァなだけだ」

 

「見てなさい。マーカス君並に良い男捕まえてあげるわ‼︎」

 

「その意気だ」

 

シスター・グリーンからUSBメモリを貰い、休憩室に戻って来た

 

「さっ‼︎肉食べに行くか‼︎」

 

「うんっ‼︎ごちそうさま‼︎」

 

「美味しかったわ‼︎」

 

「また来ると良いでし‼︎」

 

「マーカス君、気を付けてね⁇」

 

「ありがと」

 

シスター・グリーンの前で少し屈み、額に掛かっていた髪を掻き上げ、額にキスをした

 

「良かったでしね‼︎」

 

「え…えぇ…」

 

シスター・グリーンは顔を真っ赤にしている

 

シスター・グリーンが好きなのは本心だ

 

本当に感謝してる

 

俺達をスパイとして利用しなければ、それさえ無ければ、あれだけ俺を好いていてくれる女性を無下にはしない

 

教会を出て、俺達は最上のミートスティックに向かう

 

「うはは‼︎良い匂い‼︎」

 

「あっ‼︎大尉‼︎お疲れ様です‼︎」

 

ハチマキを巻いて、汗が落ちるのをしっかりとガードした状態で、最上は肉を焼いていた

 

「僕、ホワイトソース掛けウインナーにする‼︎」

 

「私はぐるぐるソーセージ‼︎」

 

「俺はマスタードウインナーで‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎すぐ焼き上がるので待ってて下さい‼︎」

 

目の前でしっかりと焼かれて行く肉達

 

先程マカロンを数個食べたが、これは別腹だ

 

「はいっ‼︎どうぞ‼︎」

 

「「「頂きま〜す‼︎」」」

 

二人共、美味しそうに肉にかぶり付く


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