艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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165話 傷物にされた旅行鳩(3)

《しぇんしゅかろんほ〜‼︎》

 

《うちから‼︎はじえ〜‼︎》

 

「はっ‼︎伏せろ‼︎」

 

空から何かが放物線を描いて飛んで来たと思った瞬間、数隻の戦闘艦に突き刺さり、大爆発を起こした

 

「な、何が起こって…」

 

「艦が爆発したぞ‼︎」

 

「うはは‼︎凄い凄い‼︎」

 

爆発を起こした艦が、たったの一撃で轟沈して行く…

 

《えいしゃ〜ん‼︎》

 

《たすけにきたお〜‼︎》

 

「いよ‼︎ひとみ‼︎」

 

ひとみといよの声がタブレットから聞こえた瞬間、巨大な潜水艦が巡洋艦に体当たりをかましながら現れた

 

《ったく…世話の掛かる創造主でち》

 

「タナトス‼︎」

 

タナトスが援護に来てくれた‼︎

 

《子供の頼みは断れんでち》

 

どうやらタナトスの中にひとみといよが乗っているみたいだ

 

だが、相変わらずグリフォンには乗れない

 

空は既に多数の紫電が制空権を確保しており、ベテランのパイロットが乗っているであろうあの機を相手にしたら、幾らジェットと言えど飛んでもすぐにオダブツだ

 

グリフォンは特殊合金で出来ているので心配は無いが、滑走路付近に停めてあるT-50が破壊されるのも時間の問題だ…

 

仕方無い…”アレ”を試してみるか‼︎

 

「”クラウディア”‼︎発艦‼︎」

 

《クラウディア、発艦でち‼︎》

 

タナトスの中心部から何かが撃ち出され、空中で外殻とブースターが外れ、中から戦闘機が出て来た

 

その戦闘機は主翼を畳んでおり、空中で広げた後、バーナーを吹かして攻撃態勢に入った

 

「あれが言ってた無人機か⁉︎」

 

「そうだ」

 

空を見上げるラバウルの連中をよそに、クラウディアに命令を出す

 

「クラウディア‼︎ラバウルの連中ときそが機体に乗るまでハエを叩き落としてくれ‼︎」

 

《了解しました。戦闘開始》

 

上空でクラウディアが戦闘を始める

 

「アレン、鹿島を貸せ。今の内に機体に乗れ‼︎」

 

「任せた…ぞっ」

 

アレンから鹿島を受け取る

 

「きそ、ラバウルのみんなとスカイラグーンに帰れるか⁉︎」

 

「タナトスに乗るんだね⁉︎大丈夫‼︎任せて‼︎」

 

全員を見送った後、タナトスに通信を入れる

 

「負傷者がいる‼︎乗せてくれるか⁉︎」

 

《ちょい待つでち‼︎》

 

《でっち〜‼︎つい、あれねあって‼︎》

 

《ひとみ、よあいとこさあす‼︎》

 

どうやらタナトスの中では、いよが敵を指定し、ひとみが弱点を探しているみたいだ

 

《よし‼︎創造主を乗せるでち‼︎》

 

《えいしゃんのせう‼︎》

 

《れっち〜はよ‼︎》

 

《創造主‼︎30秒で乗るでち‼︎》

 

タナトスは俺を乗せられそうな場所に停泊した

 

自動で防水扉が開き、鹿島をおんぶしたまま、急いでタナトスに入る

 

「乗ったぞ‼︎」

 

《行くでち‼︎》

 

防水扉を閉めながら、タナトスはその場を離れた

 

「ふぅ〜…」

 

深い息を吐いた後、鹿島を背負いながら、とりあえずメインルームを覗いてみた

 

「わるいおふね、あとなんつのこってう⁇」

 

「よんつのこってう‼︎」

 

ひとみといよは椅子の上に立ち、モニターを見ていた

 

「でっち〜、しぇんしゅかろんほ〜なんつのこってう⁇」

 

《まだまだいっぱいあるでち‼︎》

 

「じぇんぶぶっこおいら‼︎」

 

「よんつともぶっこおいら‼︎」

 

《任せるでち‼︎》

 

ひとみといよの言った通りに、タナトスは艦首爆雷投射機の標準を定める

 

「でっち〜‼︎ここねあって‼︎」

 

《了解したでち‼︎マグナム‼︎》

 

ひとみが定めたポイントに、掛け声と共に爆雷を撃ち出す

 

4隻同時に命中。4隻共、大爆発を引き起こす

 

「ろか〜ん‼︎」

 

「ぶっこおい〜‼︎」

 

《戦闘終了‼︎帰還するでち‼︎》

 

戦闘が終わったのを聞いて、二人に声を掛けた

 

「ひとみ‼︎いよ‼︎」

 

「えいしゃん‼︎」

 

「おかえい‼︎」

 

鹿島を降ろし、椅子から飛び降りて駆け寄って来た二人を抱き留める

 

「危ないから来ちゃダメだろ…」

 

「らいじょ〜う‼︎たあとすつおい‼︎」

 

「たあとすかたい‼︎」

 

ドーンと胸を張る二人を見て、ちょっと安心した

 

「鹿島をネンネさせて来るから、ちょっとだけ頼めるか⁇」

 

「ろ〜すう⁇おうちかえう⁇」

 

「よこしゅかしゃんのとこいく⁇」

 

「スカイラグーンに行けるか⁇」

 

「わかた‼︎でっち〜きいたか⁉︎」

 

《航路をスカイラグーンに設定したでち》

 

タナトスはちゃんと航路を設定していた

 

「えいしゃんもねんねすう⁇」

 

「えいしゃんおつかえ⁇」

 

「大丈夫。すぐ帰って来る。タナトス、二人に何か見させてやってくれ」

 

《了解したでち》

 

相変わらず気絶したままの鹿島を、船内のカプセルに放り込んだ

 

万が一の為に載せておいて良かった…

 

計器を操作し、症状が判明した

 

過労、貧血、栄養失調、臀部裂傷、内臓損傷…

 

そして、公には言えない部分にも傷を負っていた

 

これ位の傷なら、スカイラグーンに着くまでに治る

 

スタートボタンを押した後、タバコに火を点けた

 

スカイラグーンに着くまで後三時間

 

鹿島の治療が終わるまで二時間

 

良い感じに終わるな

 

俺は鹿島の治療が終わるまで、ずっとタバコを吸ったりしてそこに居た

 

「…レイ⁇」

 

「起きたか⁇」

 

カプセルの中で鹿島が目を覚ました

 

「また…助けてくれたのね⁇」

 

「しゃ〜なしなっ」

 

「うふふっ…レイはいつもそう…」

 

「感謝するなら、ラバウルの連中と、ひとみといよに言うんだな」

 

「レイ…私…私…」

 

「分かってる。何も言うな。治してやるから、内緒にしておけ」

 

「ありがとうございます…」

 

「その…なんだ」

 

いつもの癖で、後頭部を掻く

 

「冷たくして悪かったよ」

 

「いいんですよ…また、鹿島とお茶してくれれば…」

 

「分かったよ…大湊で美味いコーヒー淹れて待ってろ」

 

「はいっ…レイ…」

 

 

 

 

 

そして二時間後…

 

「う〜ん‼︎スッキリしました‼︎レイは凄いですね‼︎」

 

「そりゃど〜もっ」

 

「レイ…」

 

鹿島が背中にゆっくりと抱き着いて来た

 

「嫌…ですか⁇」

 

「俺に横須賀を裏切れと言うのか」

 

「いいえ…ただのお礼です…」

 

「…お前に棚町を裏切らせたくない」

 

「今は全部忘れて下さい…棚町さんも、横須賀さんも…」

 

鹿島に迫られるが、理性は保っていた

 

「人妻を食う気にはなれん‼︎」

 

「酷い…」

 

鹿島は目をウルウルさせながら俺を見詰める

 

「…悪かったよ」

 

「ふふっ…えいっ‼︎」

 

ちょっとでも気を許した俺がバカだった…

 

再び鹿島に抱き着かれ、長い一時間となった…

 

 

 

 

 

スカイラグーンでは、ラバウルの連中とグリフォンが既に到着しており、喫茶ルームで待ってくれていた

 

「じゃあ、二人を任せたぞ」

 

《了解でち‼︎》

 

「はよかえってこいお〜」

 

「き〜つけてな〜」

 

防水扉から顔を出しているひとみといよに手を振り、喫茶ルームに続く階段を登る

 

「行くんだ…」

 

鹿島の背中を押し、喫茶ルームの中に入れる

 

「まゆ…まゆ‼︎」

 

「棚町さんっ‼︎」

 

二人は互いに抱き合い、熱いキスをする

 

「レイさん‼︎ありがとうございました‼︎」

 

「棚町‼︎」

 

棚町に指環を投げ返す

 

「おっと…」

 

「愛しのハニーに付けて貰うんだな。今度は離すなよ⁇」

 

「はいっ‼︎」

 

棚町は鹿島に指環を嵌め直して貰い、互いの顔に笑顔が戻ったのを見て、喫煙所に来た

 

「いいのかレイ⁇」

 

真剣な目をしたアレンがタバコを咥えながら隣に来た

 

「何がだ⁇」

 

「まだ好きなんじゃねぇのか⁇」

 

「ケッ‼︎俺は鹿島みたいな従順な奴は無理だ。それこそローマみたいなキツキツメガネの方が良いね‼︎」

 

「ホントにローマは満更でもないのか⁇」

 

「アイツ、意外に子供の面倒見良いんだよ。んで、何かと俺に気を使ってくれる」

 

「へ〜ぇ…」

 

「横須賀が居ない間、アイツが色々埋めてくれてるんだ。感謝してる」

 

「抱いたのか⁇」

 

「バッ‼︎仮にも隊長の妹だぞ‼︎抱けるかよ‼︎」

 

「そっか」

 

「お前はホンットバカだな‼︎」

 

「バカで結構‼︎」

 

「けっ‼︎」

 

「へっ‼︎」

 

互いに罵倒しあいながら、ようやく長い一日が終わった…

 

 

 

 

ひとみといよが何故来てくれたかと言うと、俺が朝方飛び立った後、ひとみといよは横須賀に逢う為に、お目付け役のはっちゃんと共に秋津洲タクシーを使用し、横須賀に来た

 

その時、タイミング悪く鹿島が失踪したのを知り、はっちゃんは横須賀と共に執務室で各基地に連絡を取っていた

 

ひとみといよは横須賀とはっちゃんが忙しいと分かり、イルカの動画を見る為にタナトスに侵入。そのまま出港してしまい、パラオに来た…と言う訳だ

 

 

後の総司令の調査によると、再三再建されたパラオはほとんど老人ホームの様になっており、介護する人間が少なかったらしい

 

そこで面倒見も容姿も良い鹿島を拉致監禁し、老人達の世話役に置いた

 

パラオの中で鹿島は昼夜問わず散々な事をされ、救出されるまで気が休まる時が無かったと言う…

 

 

 

 

 

 

パラオ泊地が立ち入り禁止区域に指定されました

 

鹿島拉致監禁事件のデータベースがアップロードされました




鹿島失踪事件の全貌が知りたい方、感想の最後の部分等で教えて下さい

別の方法でも構いません

要望が多ければ、別の場所になるかも知れませんが書きたいと思います

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