艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名は変わりますが、前回の続きです


165話 傷物にされた旅行鳩(1)

パラオ泊地へと近付く中、モニターには鹿島の位置がずっと表示されていた

 

「イージス艦、巡洋艦…よくまぁこんなに…」

 

パラオ泊地にはそこそこの数の艦船が揃っていた

 

ざっと見積もっても、十数隻は配備されている

 

それに航空機も配備されている

 

紫電か…

 

パイロットによっちゃあ面倒になる機体だ

 

《SS隊各員、着陸許可が下りました。着陸した後、鹿島を救出。パラオを脱出します。宜しいですか⁇》

 

《バッカス了解》

 

《”オルトロス”、了解です》

 

健吾のTACネームが前と違う

 

「姓名判断師に見て貰ったのか⁇」

 

《コレに固定したんです。SS隊に入る前はこの名でしたからね》

 

「なるほどっ」

 

4機がパラオに降り立つ

 

ラバウルの連中全員が機体から降り、俺はタブレット片手にグリフォンを降りた

 

「落とすなよ」

 

「はいは〜い」

 

きそにタブレットを預け、この基地のトップが居るであろう部屋に来た

 

何にせよ、まずは話し合いだ

 

「何用だ」

 

隊長やラバウルさんが執務をしている様な机と椅子に、一人の老人がコーンパイプ片手に座っていた

 

いけ好かないタイプの人間って事だけは分かる

 

「アンタがココの新しい司令か⁇」

 

「口に気を付けたまえ」

 

「マーカス。ここは私が」

 

ラバウルさんが俺の肩を掴み、そっと後ろに下げてくれた

 

「ここに鹿島と言う女性が訪問致しませんでしたか⁇」

 

「来ておらんな」

 

「そうですか…では、少しばかり調査をさせて頂きます」

 

「断る。私の基地内で好き勝手はさせん」

 

「ふふっ。やましい事が無ければすぐに終わりますし、謝礼も出ますよ⁇」

 

「悪いが金には興味は無い。お帰り願いたい」

 

「困りましたね…きそちゃん、総司令は何と仰りましたか⁇」

 

「強制捜査を許可する。我々も其方に伺います…だって‼︎」

 

きそはタブレットをパラオの提督に見せた

 

「そんな物では証拠にならん。もう一度言う。お帰り願おう」

 

「お断りします。アレン、健吾、マーカス基地内の捜査を。きそちゃん、私を護ってくれるかい⁇」

 

「うんっ‼︎分かった‼︎レイ、後はお願いね⁉︎」

 

「任せな」

 

「了解です‼︎」

 

「行ってきます‼︎」

 

アレンと健吾が先に部屋から出た

 

「気を付けて下さいね⁇」

 

「”キャプテン”もな」

 

俺も二人に続いて部屋を出た

 

「ふふっ…マーカスの口からキャプテンと出ましたか…」

 

「貴様…勝手な真似を…」

 

「今しばらく彼等を待ちましょう。もう一度言いますが、やましい事が無ければすぐに終わります」

 

ラバウルさんはパラオの提督に不敵な笑みを浮かべながら、一人掛けのソファーに腰を降ろし、壁に掛けられている日本刀をほんの一瞬見た後、きそと共に俺達の帰りを待った

 

 

 

 

「ちっ…」

 

「ここは一体…」

 

「どうなってやがる…」

 

俺は舌打ちをし、健吾は驚き、アレンはため息混じりで各部屋を見渡している

 

「老人だらけじゃねぇか…」

 

「それに、あまり友好的な視線じゃありませんね…」

 

「キャプテンから発砲の許可を貰ってる。いざって時は躊躇わずに撃て」

 

「オーケー。とにかく鹿島の反応がある場所に行こう」

 

タブレット片手に、鹿島の反応を目指す

 

「もう少し先だな…」

 

鹿島の反応を目指している最中にも目に入る、老人達の敵意剥き出しの視線

 

少しずつだが、左腕が疼き始めている

 

「大丈夫ですか⁇」

 

「心配すんな。鹿島の状態を見て暴れるか決める」

 

そして、鹿島の反応位置まで来た

 

「ご…ごはんですよ〜…」

 

「いた‼︎」

 

ホールの様な場所で、目の下にクマを作りながら老人達にごはんを配膳している鹿島がいた

 

目に見えて疲労困憊しており、今にも倒れそうだ

 

「確保‼︎」

 

俺の一言でアレンと健吾が鹿島を確保する為に飛び出した

 

「あ…貴方達…」

 

「鹿島を保護‼︎」

 

アレンが鹿島を確保し、健吾は二人を護り入った

 

「レイさん‼︎至急司令部に伝達を‼︎」

 

「オーケー‼︎」

 

すぐに横須賀に連絡を入れる

 

「クラーケン‼︎鹿島を確保した‼︎」

 

《了解したわ。今、総司令の部隊がそっちに向かってるわ‼︎ありがとう‼︎》

 

「ちょっと忙しいからまたな‼︎」

 

横須賀との通信を切り、この場から出ようとした

 

「何処へ連れて行く‼︎」

 

「わしらの楽しみを返せ‼︎」

 

「楽しみだぁ…⁇アレン、待て」

 

アレンに背負われて安心したのか、気絶した鹿島を見た

 

スカートの一部分がパリパリになっている…

 

「テメェラ…」

 

「ヤバッ‼︎」

 

「レイさん」

 

今度は健吾に止められる

 

健吾は右腕で俺の左腕をしっかりと持ち、深海化を抑えてくれた

 

「アレン、先に行って。俺は大丈夫だから」

 

「健吾…」

 

鹿島を背負ったまま、アレンは一瞬足を止めた

 

「たまには俺にも護らせてよ」

 

健吾がアレンに笑顔を送る

 

いつもなんやかんやでアレンに護られていた健吾が、今度はアレンを護ろうとしている

 

「ったく…分かったよ‼︎レイを頼んだ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

アレンと鹿島がその場から離れ、先程いた部屋に戻る為に角に入った瞬間、数発の銃声が響いた


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