艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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165話 雷鳥の群れ(3)

「夕張」

 

「ばばりば、あっ、レイさん‼︎」

 

「またばりばり言わしてる…」

 

「朝霜は来てないのか⁇」

 

「そこに居ますよ」

 

工廠の隅っこの方で、何かを振ってカチカチさせている朝霜が居た

 

「なに造ってるんだ⁇」

 

「あ、お父さん‼︎アタイ、スッゲー発見したんだ‼︎はいっ‼︎」

 

「どれっ…」

 

朝霜が振っていたモノを渡され、手に取って見る

 

見た所、普通のサブマシンガンと普通の電池に見える

 

「ちょっと外行こうぜ‼︎工廠で撃ったらエライ事になる」

 

「あ、あぁ…」

 

朝霜に言われるがまま外に来た

 

「野郎たち‼︎集まんな‼︎」

 

朝霜の掛け声と共に、足元にズラズラ〜っと妖精達が集まって来た

 

「凄いや‼︎朝霜ちゃんも呼べるんだ‼︎レイみたいだね‼︎」

 

「お父さんみたいに全員は呼べないさ。ちょっとお父さんも呼んでみてよ‼︎」

 

「よし、手本を見せてやる‼︎」

 

腕を組み、足を軽く広げ、顔をクワッ‼︎とさせ、いつもの様に叫ぶ

 

「野郎共‼︎集合〜‼︎」

 

すると、朝霜の倍以上の妖精がゾロゾロ集まって来た

 

数人の妖精は頭の上に乗っている始末だ

 

「と、まぁこんな感じだ」

 

「スゲェ…」

 

「僕もやってみよ‼︎」

 

きそも同じ様に叫ぶ

 

「野郎共‼︎しゅ〜ご〜‼︎」

 

「呼んだか⁇」

 

「なんだなんだ⁇」

 

たまたま近くに居たその辺の工兵の男性が二人、きその号令で寄って来た

 

「ちょ、違う違う‼︎ごめんなさい‼︎」

 

すぐに事に気付き、二人は去って行った

 

「ダメだ…僕は本物の野郎しか呼べないよぉ…」

 

「ははは‼︎そう落ち込むな。でだ、本題はコレだったな⁇」

 

「んっ。野郎ども、的を出してくれ」

 

”あいあいさー”

 

妖精が小さなリモコンのボタンを押すと、海上に的が数個出た

 

「お父さん、アレを撃ち抜けっか⁇」

 

「どれっ…」

 

渡されたサブマシンガンの様なモノを構え、引き金を引いてみた

 

「うわっ‼︎」

 

引き金を引いた途端、前髪が風圧で上がり、ほぼ同タイミングで的が粉々に吹き飛んだ‼︎

 

「す、凄い…」

 

「着弾までの時間がほとんど無いな…」

 

「そいつは試作の小型の電磁投射機さ。バッテリーやら、電力やら、問題は色々あんだけど、ベースはコレで完成した」

 

「僕にも撃たせて‼︎」

 

きそにもそれを渡し、同じ様に的を撃たせてみる

 

「うはは‼︎凄い凄い‼︎」

 

面白い様に壊れて行く的

 

「ありゃ⁇」

 

数発撃つと弾が出なくなった

 

「あ〜、バッテリー切れだな。ちょっと貸して」

 

朝霜に投射機を返すと、グリップの底を開け、中にあったバッテリーを取り出した

 

「ばりばりしないのか⁇」

 

「しない‼︎このバッテリーは夕張が感電した時に思い付いて、一緒に造ったんだ‼︎」

 

「おろろろろろろろろ‼︎」

 

言ったしりから工廠から夕張の声が聞こえた

 

「はぁ…ま〜た感電してやんの…大丈夫か〜‼︎」

 

「大丈夫で〜す‼︎あっ…」

 

夕張が絶頂した声を聞き、朝霜は頭を抑えてため息を吐いた

 

「…最後のは聞かなかった事にしてくれ」

 

「オーケー…お前も大変だな⁇」

 

「毎日数回は自爆の感電だかんな。まっ、お陰で内部にはしっかり充電出来て、外部には漏れない電池が出来上がったんだ‼︎でた、この電池は振ると充電出来る」

 

「振るのか⁇」

 

「そっ。母さんがアレをシゴくみたいにな‼︎」

 

「となると…こうか‼︎」

 

電池を持ち、高速で上下に振る

 

先程朝霜がカチカチ言わせていたのはこの音だった

 

「もうそんくらいでいい。もっかいグリップの底から入れて…」

 

「こうか⁇」

 

「そっ。んで、弾が入ってりゃあまた撃てるし、もし補充が必要ならストッパーが掛かる」

 

「うはは‼︎」

 

どうやらきそのお気に入りになったみたいだ

 

「これ、機銃みたいに高速で撃ち出せる様になるか⁇」

 

「あ〜…大分時間は掛かっけど、何とかして見るよ‼︎他にも色々造ってんだ‼︎」

 

「他はどんなの⁉︎」

 

「内緒にしとくよ。お父さんときそ姉をあっ‼︎と驚かせてやるかんな‼︎」

 

「楽しみにしてるぞ‼︎」

 

「ありがとう‼︎良い武器だね‼︎」

 

「へへっ…」

 

俺達に褒められ、朝霜も満更でもないようだ

 

「これから間宮でラバウルの連中と話ついでに飯食べるんだ」

 

「分かった。あんがとな‼︎」

 

「またね〜‼︎」

 

朝霜は終始満面の笑みで俺達を見送ってくれた

 

「いやぁ〜‼︎凄かったね‼︎」

 

「あれが機銃になったら革命だぞ‼︎」

 

引き金を引いた時には着弾している機銃が完成すれば戦闘機界に革命が起きる

 

俺は精々信管を特殊な物にして散弾にする位しか出来なかった

 

朝霜はその上を行こうとしている

 

 

 

 

「着いた着いた‼︎2名で〜す‼︎」

 

間宮に着くと先にきそが入り、人数を言う

 

「レイ‼︎きそちゃん‼︎こっちだ‼︎」

 

アレンの手招きで席に座り、冷たいサイダーを間宮に頼む

 

「タナトスに新鋭機を載せるらしいな⁇」

 

「一機はもう載ってる。今造ってる機体が量産機体の最後だ。ラバウルに配置する」

 

「来た来た‼︎」

 

大湊に行って数日後、建造を進めていた潜水艦搭載の戦闘機が完成し、内部の人間のみに知らせ、タナトスに積載された

 

その戦闘機はコックピットが無く、完全自立起動で動く

 

AIに付き物であり、危険視されているハッキングだが、その機体のAIは主人とその周りの人間の言う事しか聞かない様に設定してある為、ハッキングは事実上不可能だ

 

それと、万が一の際、最終的には主人の言う事を聞く様にも設定してある

 

「じき実戦投入され…なんだよ‼︎」

 

横須賀から通信が入った

 

《レイ‼︎聞こえる⁉︎》

 

「なんだ⁇」

 

《鹿島が行方不明になったの。アンタ知らない⁇》


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