艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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162話 双子のシマエナガと雷鳥の妻(2)

「す〜ぴゃ〜みゃ〜けっろついた‼︎」

 

「ぴゃ〜‼︎」

 

ひとみといよは、目的地である、数日前に開店したお店に着いていた

 

この店に関しては、いよはほとんど噛んでいない

 

本当に”スーぴゃ〜マーケット”なのだ

 

この店は安くて量の多い食材がたくさん売っている

 

ひとみといよはしっかりと目当ての物を見つけられるのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

「次はここよ」

 

「そういやなかったな」

 

次に来たのは、今まで横須賀になかった本屋

 

敷地面積も中々広く、期待が大きい

 

「いらっしゃいませー」

 

店内は静か目のBGMが流れており、雰囲気も中々良い

 

「妙高。調子はどう⁇」

 

「元帥様、大尉様。お疲れ様です。上々ですよっ」

 

レジに居た女性は後ろで髪を纏めており、妙な色香が漂っている上品な女性である

 

…誰かと同じ匂いがする

 

「レイ、ここには漫画から参考書、んで、海外の雑誌もあるわよ⁇」

 

「素晴らしい‼︎」

 

「大尉様。妹がお礼を申しておりました」

 

「妹⁇」

 

こんな上品な女性の妹だ

 

助けた覚えはないが、さぞ別嬪だろう

 

だが、その淡い期待はすぐにバッキバキ砕かれた

 

「大尉様が居たから、今の様な良い殿方と知り合える事が出来ました」

 

「妹ねぇ…名前は⁇」

 

「足柄です」

 

特に理由は無いが、聞きたくない名前が聞こえた

 

「足…何だって⁇」

 

「足柄です。駄菓子の」

 

「嘘だろ⁇妙高が妹じゃないのか⁉︎」

 

「妹は姉の私から見ても、妙な色気がありますから、いつも年上に見られるんです」

 

「なるほど…」

 

「これ、下さい」

 

妙高と話していると、客がレジに来たので身を避けた

 

「あらっ⁇レイ⁇」

 

そこに居たのは鹿島だった

 

「さっ、横須賀。次行くぞ次。妙高、頑張れよ‼︎また来るからな‼︎」

 

「ちょっ、ちょっと‼︎」

 

「あっ、はい‼︎ありがとうございました‼︎」

 

横須賀の背中を押し、急いで妙高書店を出た

 

「レイ‼︎ちょっと待って下さい‼︎」

 

鹿島が追って出て来た

 

俺は横須賀の背中を押しながら、背後にいるであろう鹿島に話し掛けた

 

「旦那とは上手く行ってんのか⁇」

 

「レイ、こっち向いて下さい」

 

「デート中なんだ。ワリィな。また遊びに行くよ」

 

とにかくその場を去りたかった

 

そんな俺に対して、鹿島は俺の服を掴んで引き留めた

 

「レイはあれからずっと私を避けてます。たまにはお話しましょうよ」

 

「また今度な。デート中なんだって」

 

「約束ですよ⁇」

 

「約束する」

 

俺は淡々に鹿島に言葉を返す

 

鹿島の声を聞くと、どうしても情が出てしまう

 

本当は一刻も早くこの場を去りたいのに…

 

鹿島は諦めたのか、俺達と逆の方向に歩いて行った

 

「冷た過ぎじゃない⁇」

 

「帰る場所がある奴にはこれで良い」

 

「また情が湧いちゃいそう⁇」

 

「…まぁな」

 

「良いじゃない、また情が湧いちゃったって。ちゃんと私の所に帰って来たら、それでいいわ。次が最後よ‼︎」

 

そう言えば、朝霜が言ってたな…

 

母さんはタフだって

 

コイツと一緒に居ると、知らないコイツの知らない部分が出て来て、また好きになって行く…

 

「最後はここよ‼︎」

 

「スーぴゃ〜マーケット」

 

ここまで来ると、おんどりゃあやずいずいずっころばしがマトモなネーミングセンスに見えて来た…

 

「涼し〜‼︎」

 

中はかなり広い

 

流石にタウイタウイモールの様な大きさでは無いが、平面でも充分な奥行きだ

 

「酒匂達がやってるのよ⁇」

 

「だからスーぴゃ〜なのか…なるほどな」

 

最近、毒されて来ているのだろうか⁇

 

この店の名前もマトモに聞こえて来た…

 

「ペットボトルのジュースでも買いましょ」


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