艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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2話 鷹は舞い降りる(2)

「さ、今日はお開きにしよう」

 

”また頼むわな”

 

「いつでも」

 

そう言って、彼らは散り散りになった

 

妖精達が去った後、ふと孤独を感じた

 

思い出したのは、空軍時代の部下達

 

嬉しそうに笑う声

 

真剣に講義をまとめる者

 

色んな部下がいた

 

だけど…彼奴らは…

 

”提督”

 

「ん⁇」

 

”たいほうの改装が終わったで”

 

「行こう」

 

開発ドックに行くと、しっかり目を覚ましたたいほうがいた

 

「おはよう」

 

「おはよ…たいちょう」

 

「えっと…大鳳…だったかな⁇」

 

「そう、あたしがたいほう」

 

”あのな、提督”

 

「ん⁇」

 

妖精に連れられ、物陰に隠れた

 

”あの娘な、大鳳ちゃうねん”

 

「じゃあなんだ⁇違う空母か⁇」

 

”ちゃうちゃう。大鳳は大鳳やねんけど、”たいほう”やねん”

 

「正直に言ってくれ…失敗したな…⁇」

 

”せ、せや…”

 

「…まぁ、これも何かの縁だ。あの娘と…」

 

あの娘と、暮らしてみよう

 

もしかしたら、何かが変わるかもしれない

 

「ま、とりあえず装備でも見てみるか」

 

「はい、これがあたしのそうび」

 

れっぷう

 

てんざん

 

ごーにーがた

 

すいせい

 

「な、何でひらがな表示なんだ⁇」

 

”ゆうたやろ。たいほうやって”

 

「しかもなんだ⁇」

 

たいほうの持っているカートリッジを取ると”こう”と書いてあり、中にはクッキーが詰まっていた

 

「こうって、攻撃の攻だよな⁇」

 

”ちゃう。香ばしいの香や”

 

「…やってしまったな」

 

”やってしもたな”

 

「たいちょう、たいほうはなんでもできるよ︎」

 

ガッツポーズを決めるたいほうだが、鼻水を垂らしながら言っているので、迫力が無い

 

「はいはい。鼻水ふけ」

 

ハンカチをたいほうの鼻に当てると、自分で鼻水を拭いた

 

「ありがとう」

 

「ふっ」

 

たいほうを見ていると、戦う気が無くなってしまった

 

さっきまでは、ほんの少しはあったんだがな…

 

「よし、今日からお前は俺の”家族”だ︎」

 

「かぞく⁇」

 

「そうだ。家族だ」

 

「パパ⁇」

 

「パ、パパだ︎」

 

「パパ︎」

 

「うっ」

 

抱き付いて来たたいほうを抱えた時、本当にこのままで良いと思った

 

この娘といれば、俺は…本当に…

 

「たいほうは今日から俺の艦隊に所属する。でも、戦いはしない」

 

「なにするの︎」

 

「海岸の散策、木の実拾い、後は俺と一緒の時だけ海に入ってよし︎」

 

「いってきます︎」

 

ビシッと敬礼するたいほうの手を取り、腰骨の辺りに置いた

 

「いってきますだけでいい」

 

「いってきます︎」

 

「ん、行ってらっしゃい」

 

たいほうを見送った後、私はしばらく本を読んでいた

 

”提督、なにしてんねん”

 

机に乗ってきたのは、工廠の妖精だった

 

「ん⁇あぁ。空軍にいた時はあまり読めなかったからな。今なら読めるかなって」

 

”エロ本か⁇”

 

「違う違う。ほら」

 

”軍用機の乗り方か…本間に空軍に戻りたいんやな…”

 

「まぁな」

 

”…よっしゃ︎提督のために、ちょっと骨折ったろ︎”


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