艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名は変わりますが、前回の続きです

熟れた狼とは誰なのか⁉︎

きそが欲しかった物とは⁉︎


159話 熟れた狼の駄菓子屋

きそとたいほうはすぐに見付かった

 

駄菓子屋の前で駄菓子を食べていた

 

「きしょ〜」

 

「たいほ〜」

 

「おかえり‼︎」

 

「おいで‼︎」

 

ひとみといよは俺の肩から降り、たいほうの所に行った

 

「何食べてるんだ⁇」

 

「酢イカ‼︎美味しいんだよ⁇」

 

きそは俺の前に、食べていた酢イカの袋を出す

 

硬めの細切れにされたイカを一つ貰い、口に放り込む

 

酢で味付けされており、中々美味しい

 

「お家帰って食べる分は買ったか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

きその隣には、大きめの袋がちょっと膨らむ位に詰められた駄菓子達があった

 

最近、ひとみもいよもよく食べるからな…

 

そんな二人はたいほうからあんずを貰い、大人しく食べている

 

「俺も何か飲むかなっ…」

 

「いらっしゃい」

 

駄菓子屋の中では服の腕を捲り、団扇を仰ぎながら店番をしている足柄がいた

 

一応俺の気配は察知しているのか、いらっしゃいとは言ってくれたが、備え付けられたテレビで流れているサスペンスの再放送に夢中になっている

 

妙な色香が漂っており、若干子供が

近寄り難い感じがする

 

「昼間っからんなもん見てると、またBBAとか言われっぞ⁇」

 

「失礼な‼︎誰がババ…マーカス大尉‼︎」

 

ようやく俺に気付き、体勢を立て直す

 

「ラムネと棒のゼリーくれるか⁇」

 

「は、はいっ‼︎少々お待ちを‼︎」

 

足柄はレジの横にある冷蔵庫からラムネと棒のゼリーを取り、台の上に置いた

 

「ふ、袋にお入れしましょか⁇」

 

「すぐ食べるからいい」

 

「ひ、160円です」

 

終始ビビりまくりの足柄に代金を渡し、その場でラムネを開けた

 

「ら、ラムネの瓶、返しに来てくれたら10円渡してるの…」

 

「中々サービス良いじゃないか」

 

「…」

 

マズい所を見られたと思っているのか、足柄はモジモジしている

 

「気にしなくていい。横須賀はもっと酷い」

 

「あはは…」

 

「真田とはどうだ⁇」

 

「二週間に一回デートしてるわ。この前、一緒に映画に行ったの。その後、お夕飯を食べて…」

 

今度は照れくさそうに真田の話をする

 

「まっ、上手く行ってる様で良かったよ」

 

「さっき、マーカス大尉の所の子が来てくれたわ」

 

「きそとたいほうか⁇」

 

「たまに来てくれるわ。朝霜ちゃん達も、清霜ちゃんを連れて来てくれたりね」

 

「清霜はお菓子好きだからなぁ…ごちそうさん」

 

飲み干したラムネの瓶を足柄に返した

 

「あ、ちょっと待って‼︎」

 

足柄はラムネの瓶を受け取り、本当に10円をくれた

 

表に戻ってくると、ひとみはたいほう、いよはきそにくっ付いていた

 

「さっ、遊戯場でも行くか⁇」

 

「うんっ‼︎UFOキャッチャーしたい‼︎」

 

「ひとみはたいほうとぼーるぷーはるいこうね⁇」

 

「たいほ〜とあそう‼︎」

 

たいほうの姉具合を見て、口角が上がる

 

出逢った当初と比べて、たいほうは随分と成長した

 

特にひとみといよが来てから、思考が著しく成長している

 

嬉しいと思う反面、俺は心の奥底で少し寂しいと感じていた…

 

遊戯場に着くと、きそはUFOキャッチャーをやり始め、たいほう、ひとみ、いよはボールプールに向かった

 

たいほう達の事を見ていようと思ったが、ボールプールの担当が頼り甲斐のある子だったので、安心して良さそうだ

 

「いらっしゃいませ、マーカス大尉‼︎ポーラがいつもお世話になっております‼︎」

 

「ざら‼︎」

 

「ざぁ⁇」

 

「ざぁざぁすう⁇」

 

ひとみといよはざらの足元をペタペタ触る

 

「ざらはざらざらしないよ。こっちきてたいほうとあそぼ⁇」

 

「いく‼︎」

 

「ひとみも‼︎」

 

三人は中々広いボールプールに入って行った

 

「マーカス大尉。三人はお任せ下さい‼︎」

 

「頼んだぞ」

 

とは言うが、手持ち無沙汰になった

 

仕方ない…

 

どれっ、久しぶりに打ちますかね

 

新世界に居た時、休みになるとたまに打ちに行っていた

 

何年振りだろうな

 

タバコに火を点け、パチンコ台の前に座る

 

確か、横須賀が横に居たらよく当たるんだよな…

 

懐かしい記憶を思い出しながら、無心でパチンコを打ち続ける

 

「ちっ…今のは当たりだろ‼︎」

 

「台叩いちゃやぁよ⁇」

 

いつの間にか隣に横須賀が座っていた

 

「サボり⁇」

 

「バカ、チゲェよ。お前ちょっと打て」

 

横須賀を打っていた台に座らせ、ハンドルを握らせる

 

「最近のパチンコ嫌いなのよね…リーチ長いし…あら、逆回転」

 

横須賀は滅多な事が無いとパチンコを打たないのだが、何故かやたらと詳しい

 

「お前、何でそんな詳しいんだ⁇」

 

「お父さんがパチンコ好きでね。あ、ほら、昔って子供も入れたから、私は横で見てたの」

 

「なるほどな…」

 

みるみる内に横須賀の背後にはドル箱が積まれていく

 

ようやく大当たりが終わり、パチンコ玉を景品と交換する

 

「あ、私その徳用鈴カステラ‼︎」

 

「タバコのカートン3つ」

 

横須賀は当分困らない程のお菓子を貰い御満悦

 

俺は俺で久々の海外のタバコが貰えて御満悦

 

それでもまだまだ玉は余っている

 

「横須賀。これ…」

 

目に入ったのは、残りの玉で貰える新入荷の景品

 

かなり高いが、それなりの品ではある

 

「プレゼントする⁇」

 

「これ、貰えるか⁇」

 

「うっしっし…取った取った」

 

タイミング良くきそが帰って来た

 

ビニール袋をズリズリ引き摺っている

 

「アームのパワー弄ったろ」

 

「い、いやぁ〜‼︎そそそそんな事僕はしないよぉ〜‼︎ししし失礼だなぁレイは‼︎」

 

きその額から冷や汗が流れている

 

「他のゲームセンターでしちゃダメよ⁇」

 

「うんっ‼︎ありがとうお母さん‼︎」

 

「ただいま‼︎」

 

「「たらいま‼︎」」

 

三人も帰って来た

 

「よこしゅかしゃんら‼︎」

 

「らっこして‼︎」

 

「おいでっ‼︎」

 

横須賀は走って来たひとみといよを抱き締めた

 

横須賀は嬉しいのだろう

 

ひとみといよは、ファーストコンタクトから横須賀を好いてくれる

 

そんな二人を、横須賀も可愛くて堪らない

 

「たいほうはこっちだなっ‼︎」

 

「すてぃんぐれいのあたま‼︎」

 

たいほうを頭に乗せた時、きそが一歩引き下がったのが見えた

 

きそが一歩引き下がるのには意味がある

 

多分、きそは気付いていない

 

本当は自分もして欲しいのだが、どうしても自分より年下である子供達を優先させてしまう

 

本当に優しい子だ

 

「きそ」

 

「ん〜⁇」

 

「お前にはアレをやる。それで我慢してくれるか⁇」

 

俺の目線の先には、先程貰った高額の景品がある

 

「セグウェイだ‼︎くれるの⁉︎」

 

「横須賀がプレゼントしてくれたんだ。大事に乗れよ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

きそは嬉しそうにセグウェイに乗り、俺達の横を走り始めた

 

「お母さん、ありがとう‼︎」

 

「事故しちゃダメよ⁇」

 

「うんっ‼︎いひひっ‼︎」

 

遊戯場を出て、きそはその辺でセグウェイを乗り回し始めた

 

余程嬉しかったのだろう

 

きその喜ぶ顔を見るのは俺も嬉しい

 

「今日はありがとね。朝霜に付き合ってくれて」

 

「アイツはいつか俺を越える素質を持ってる。いつでも付き合うさ」

 

「ふふっ。じゃあね⁇」

 

「あいがろ〜‼︎」

 

「ばいば〜い‼︎」

 

横須賀と別れ、俺達は基地に帰った…

 

 

 

 

その日、基地に帰って来ても、きそはセグウェイを乗り回していた…

 

 

 

 

 

 

 

 

タナトスが横須賀来航するまで後二日になりました


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