艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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155話の続きのお話です

ドッペルゲンガーを探しに、タウイタウイモールにやって来たレイときそ

久方ぶりに、みんなの娘が登場します


156話 タウイタウイモールでチョット休憩

「いやぁ〜‼︎着いた着いた‼︎」

 

翌日、きそを連れてタウイタウイモールに来た

 

俺にソックリな奴を探す為、そして軽く買い物をする為だ

 

相変わらず人で溢れかえっている

 

「よっこら…」

 

「うはっ‼︎」

 

きその脇に手を入れ、肩の上に乗せる

 

「どうだ‼︎見渡せるか‼︎」

 

「すっごい見えるよ‼︎」

 

ずっとたいほうやひとみといよを乗せているせいか、最近肩に何か乗っていないと落ち着かない

 

「マーカス大尉‼︎お疲れ様です‼︎」

 

ストラットが挨拶に来た

 

これは丁度良い

 

「ストラットさん。二日前、レイを見た⁇」

 

聞きたい事はきそが聞いてくれた

 

「えぇ。女性と一緒でしたよ⁇」

 

「はは〜ん…レイ浮気⁇」

 

「ソフトクリーム無しな」

 

「分かったよぉ‼︎ゴメンってばぁ‼︎」

 

「私が呼んでも通り過ぎて行きましたので、何か怒らせたのかと…」

 

「そいつは俺じゃない‼︎ニセモンかクローンだ‼︎」

 

「なるほど…他人の空似ですか」

 

「俺達は買い物しながら探してみるよ。ありがとう」

 

「どうぞごゆっくり」

 

ストラットと別れ、とりあえずきそとの約束であるソフトクリームを食べに屋上へ向かう

 

「いらっしゃいまへ〜」

 

「いらっしゃいまへ〜、だって‼︎何売ってるの⁇」

 

「阿武隈ドーナツです‼︎はいっ、どうぞ〜」

 

阿武隈は相変わらず小さく切ったドーナツを食べさせてくれた

 

「美味しい‼︎」

 

「十個入りを二つくれるか⁇」

 

「はいっ、ありがとうございます‼︎」

 

「レイ。あぶくまチャレンジだってさ‼︎」

 

「どれ…」

 

レジの横の小さなのぼりに

 

”あぶくまチャレンジ‼︎あぶくまの名前を漢字で書いてみよう‼︎”

 

”10個買う毎に一回チャレンジ‼︎あぶくまの名前を漢字で書けたら一個サービス‼︎”

 

「書いてみて」

 

阿武隈から紙を渡され、俺は名前を書いてみた

 

「こうだ‼︎」

 

阿武隈と書いた紙を阿武隈に返す

 

「すごいすごい‼︎二つサービスです‼︎」

 

阿武隈はサービスで二つドーナツをくれた

 

…阿武隈よ

 

名前を書いてみてと言うのは良いが、看板に思いっきり

 

”阿武隈ドーナツ”

 

と書いてあるのはどうなんだ…

 

その後、きそは阿武隈にソフトクリームも作って貰い、近くのベンチで座って食べ始めた

 

「ソフトクリームもちょっとハチミツ味で甘いよ‼︎」

 

「中々イケるな」

 

「マーカスさん」

 

「山風。一人か⁇」

 

「ううん。お母さんと一緒だよ」

 

山風が屋上遊園地のアトラクションから降りて来て、声を掛け来た

 

「マーカスさん、この前は風船ありがとう」

 

「風船⁇」

 

「うん…山風が手を離したら飛んで行っちゃって…マーカスさん、代わりの風船くれたでしょ⁇」

 

「そ、そうだったか⁇」

 

子供にはホントの事を言い難いな…

 

「この前、隣にいた人だぁれ⁇真っ白な肌をした人。凄く可愛かったよ⁇」

 

「あれは〜え〜と、その〜…」

 

「やっ、山風ちゃん‼︎その人、レイじゃないんだ‼︎」

 

「ホント⁇なら、マーカスさんにソックリで、撫で方も凄く似てた」

 

「そんなに俺に似てたか⁇」

 

「うんっ。ちょっと無口だったけどね」

 

「ホントに分からん…誰なんだ…」

 

「あたし、お母さんとお買い物に行くから、もう行くね⁇」

 

「あ‼︎山風‼︎これやる‼︎」

 

俺は手にしていたドーナツを山風の前に出した

 

「はむっ…」

 

山風は一口食べた後、すぐに一礼して去って行った

 

「どうも女と一緒だったらしいな…」

 

「しかも真っ白な肌って言ってたよ⁇」

 

「心当たりが全くない‼︎」

 

謎は益々深まって行く…

 

今の所得られたのは、山風が可愛いって事だけだ

 

 

 

 

多少情報が得られたが、所在が掴めないまま、一旦ゲーセンに来た

 

「ハギィ。ちょっとやって見るダズル」

 

「HAGYに出来ますでしょうか…」

 

「あっ‼︎榛名さん‼︎」

 

ゲーセンには榛名とHAGYが居た

 

「は、ははは榛名お前…HAGYにもハンマーを…」

 

HAGYの手にはハンマーが握られている

 

「人聞きの悪い事言うんじゃないダズル‼︎ケチの横須賀がやらせてくれないからココでしてるんダズル‼︎」

 

よく見ると、HAGYの前には機械のワニが出現している

 

HAGYはそれを叩き、引っ込ませる

 

「終わりました」

 

「50点ダズルか。榛名もやるダズル‼︎」

 

榛名は袖を捲り、HAGYからハンマーを受け取る

 

「さぁ、かかって来るダズル‼︎」

 

榛名は出現したワニにハンマーを振り下ろす

 

HAGYの時にはパンパンやバシバシだったが、榛名が叩くとバシンバシンバキバキィと音がし始めた

 

数十秒もしない内に、悪いは出て来なくなった

 

「はんっ‼︎怖じ気付いたダズルか‼︎」

 

《お店の人を呼んで下さい》

 

「貧弱なワニダズル‼︎榛名に楯突こうなんざ10年早いダズル‼︎」

 

《お店の人を呼んで下さい》

 

ワニを叩くゲーム機からは、お店の人を呼んで下さいとしか言わなくなった

 

「は〜る〜な〜っ‼︎」

 

煙を吹きながら、何処かの回線がショートしてバチバチしているゲーム機に気付き、ようやくワンコが来た

 

「榛名は壊しとらんダズル。ワニが勝手に出て来んくなっただけダズル」

 

「横須賀のワニも壊したでしょ⁉︎」

 

「横須賀のワニも貧弱ダズル‼︎」

 

「とにかく‼︎榛名は金輪際コレしちゃダメ‼︎分かった⁉︎」

 

「何でダズル‼︎」

 

榛名は地団駄を踏んでワンコに刃向かう

 

「榛名だってワニしたいダズル‼︎」

 

「じゃあ榛名⁇今月、このワニ何台壊した⁇」

 

「榛名は壊しとらんダズル。勝手に壊れたんダズル」

 

ワンコは指を4本立てた

 

「今月まだ始まったばっかりなのに四台目‼︎」

 

「んな事は無いダズル」

 

「横須賀で二台、ここで一台。そんで今日もう一台‼︎」

 

「…榛名が悪いんダズルか」

 

「悪いとは言ってないよ。ただ、加減はしようって言ってるだけさ」

 

その時、榛名の目からポロポロと涙が落ちている事に気が付いた

 

「榛名だってワニ叩きたいダズル‼︎提督のアホ‼︎提督なんかハギィに茹でられるといいダズルゥ‼︎うえ〜〜〜〜〜ん‼︎」

 

よほどワニを叩きたかったのか、榛名はその場で大泣きし始めた

 

「ホントすみません…」

 

「榛名。俺達が造ってやるよ」

 

「僕達が造ってあげるから、ねっ⁇泣かないでよ‼︎」

 

「ひっく…えぐえぐ…」

 

よっぽど悔しいのか、中々榛名は泣き止まない

 

「榛名。HAGYは榛名をカッコイイと思いますよ⁇」

 

「ゼッテー…ひっく…嘘ダズル…」

 

「ホントですよっ…」

 

「俺もそう思うぞ。清霜が榛名みたいになりたいって言ってたぞ⁇」

 

「僕も榛名さん好きだよ‼︎」

 

「ほらっ。マーカスさんもきそちゃんもそう言ってますよ⁇」

 

HAGYは榛名の背中をさすり、何とかなだめようとする

 

「榛名はハンマーが無いと生きられんダズル…」

 

「榛名⁇」

 

「何ダズル…」

 

「このゲームが壊れたら、他の子供が出来なくなるでしょう⁇榛名はそれでもいいの⁇」

 

「それはいかんダズル…」

 

「なら、次からはもうちょっとゆっくり叩こう⁇ねっ⁇」

 

「…うん」

 

どうやら最近、榛名はストレスが溜まっているらしい

 

ニムも自分を慕ってくれ、HAGYは自分の面倒を見てくれる母親の様な存在

 

そしてそんな二人に止められ、提督へのダイレクトアタックも控えている

 

海へ出撃もするが、時たま現れる不審船を叩きのめして沈める位である

 

榛名にとって、これ程ストレスが溜まる生活はないが、良い方に考えれば、マトモな生活を送れる様になって来ている

 

そんな中、ここのゲーセンや横須賀にある遊戯場、そして自身の基地にある訓練室でハンマーを振り続けている

 

「榛名。ニムにお土産を買って帰ろうか⁇」

 

「アイス食べたいダズル」

 

「うんっ、アイスも食べましょうね⁇」

 

「レイさん、きそちゃん、今日はこれで」

 

「また遊びに行くよ」

 

「バイバイ」

 

榛名はHAGYとワンコに連れられ、ゲーセンから去った

 

「さてと…」

 

「おもちゃ売り場行こう‼︎」

 

俺もきそも、ゲーセンで居る気が無くなってしまい、おもちゃ売り場に来た

 

「うはは‼︎何これ面白い‼︎」

 

きそは手に付かない砂で遊び始めた

 

「おっ」

 

きそが砂で遊んでいる横で、俺はプラモデルに目が行った

 

「へぇ〜。昔の映画に出て来た機体か」

 

映像作品に出て来た架空の航空機のプラモデルの特設コーナーがあり、沢山ある中の一つを手に取った

 

手に取ったプラモデルの箱には、フィリップに似た機体が描かれている

 

何だか懐かしい気がする…

 

きそとたいほうが作りそうだな…

 

買って帰るか

 

となると、もう一つ欲しいな…

 

「こいつは…」

 

もう一つ手に取ったのは、今度はグリフォンにソックリな機体が描かれた箱

 

前進翼がカッコ良く、実に近代的なボディをした機体だ

 

これにしよう

 

「レイ、何か買うの⁇」

 

きそが戻って来た

 

「ん〜⁇フィリップとグリフォンに似てるなと思ってな」

 

きそに二つの箱を見せる

 

「ホントだ‼︎え〜と…フレイムフォックスと、戦闘精霊突風かぁ…カッコイイね‼︎」

 

「たいほうと一緒に作ってくれるか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

プラモデルを二つ買い、今度は手を繋いでその辺を歩く

 

「いないね」

 

「う〜ん…」

 

目的である、自分とソックリな人を探すが、幾ら探しても見つからない

 

目撃情報こそあるものの、真相は全く掴めないでいた

 

そんな時、大和とアイちゃんが前方から来るのが見えた

 

「よっ。買い物か⁇」

 

「あれっ⁇マーカスさん⁉︎さっき外でアメリカンドッグ食べてましたよね⁉︎」

 

「Dr.レイが二人⁉︎」

 

「来た‼︎来たよレイ‼︎大チャンスだ‼︎」

 

ようやく来たチャンス

 

逃す訳にはいかない

 

「あ、アイちゃん‼︎そいつどこで見た⁉︎」

 

「船着場の近くのホットスナックよ‼︎」

 

「ありがとう‼︎きそ、行くぞ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

俺はドーナツが入った袋

 

きそはプラモデルが入った袋を持ったまま、船着場へ走った

 

「ヤマト。何でDr.レイが二人いるの⁇」

 

「さぁ…分からないわ…」

 

「ちょっと行ってみようよ‼︎」

 

「あ、コラ、アイちゃん‼︎」




きそネティック

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