艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、154話が終わりました

今回のお話は、レイの知り合いの周りで、レイソックリな人物が出現しているとの情報が出回ります


155話 ドッペルゲンガー

俺はこの日、きそを連れて震電の演習に当たっていた

 

現状、震電の飛ばし方を教えられるのは俺一人

 

必然的に教官になっていた

 

「ほぉ〜、震電か」

 

いつの間にか居た親父が震電を撫でている

 

「親父も乗るか⁇」

 

「俺はコルセアでいいさ。そうだ‼︎マーカス見ろ‼︎パパコルセアの色塗り替えたんだ‼︎きそちゃんも見て‼︎」

 

「あ〜…」

 

「どれどれ‼︎」

 

親父はあの一件から、母さんにもちょくちょく逢引したり、基地に遊びに来たりしている

 

最近ようやく家族四人でずいずいずっころばしに行った

 

横須賀に言われ、たいほうと一緒に絵日記を書いたのを覚えている

 

「すごいだろ‼︎」

 

「へぇ〜‼︎」

 

「トゥルントゥルンだぁ‼︎」

 

親父の愛機であるコルセアは、ステルスコーティングを施されたのか、青いカラーリングから、光沢のあるトゥルントゥルンの黒に変わっていた

 

因みに震電にもこのトゥルントゥルンのコーティングが施されている

 

「スッゲェ…」

 

震電のパイロットからため息が漏れる

 

何せ、一応歴戦を切り抜けたパイロットが三人も目の前にいるのだ

 

「リチャード‼︎」

 

「げっ‼︎」

 

「レイ‼︎」

 

「げっ‼︎」

 

互いの妻がやって来た

 

現状、部下を引き連れてサボッているこの状況

 

多分親父は母さんからビンタされる

 

「休憩しましょう⁇疲れたでしょう⁇」

 

「あ、はい」

 

母さんが膝に置いていた紙箱には、焼き立てであろう小さなマフィンが沢山入っていた

 

「お茶もいっぱいあるわよ」

 

横須賀の手にはデッカいペットボトルがある

 

俺達は黒いコルセアの下にマットを敷き、マフィンを食べ始めた

 

「リチャード。まさかサボッてたんじゃないですよね⁇」

 

「い、いやぁ〜‼︎ま、まさか‼︎さささサボッてるなんてまたまた〜‼︎」

 

親父の目が泳ぐ

 

「リチャード‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

「私の目を見て言いなさい」

 

「サボッてました。はい」

 

「マーカス⁇お父さんがサボッていたら、撃っても良いからね⁇お母さんが許します」

 

「オーケー」

 

そこにいた全員が笑う

 

「あっ、そうだ‼︎部隊の名前決めなきゃ‼︎報告しなきゃダメなのよ‼︎」

 

「スーパー最強無敵強靭部隊なんてどうだ⁉︎あだっ‼︎」

 

親父がメチャクチャダサい名前を付けようとした途端、母さんは親父の頭を平手打ちした

 

「レイ、きそちゃん。二人が決めないとそれにするわよ」

 

「そ、それで良いんじゃないかなぁ…ははは」

 

きそは面白半分でホントにその名前にしようとしている

 

「お前らは何か良い名前はあるか⁇」

 

「マーカス大尉が決めて下さい」

 

「我々はスーパー最強無敵強靭部隊でも構いません‼︎」

 

震電の若いパイロットの素直さが怖い…

 

「そんな名前じゃ無線で呼びにくいな…”サンダース隊”…なんてどうだ⁇」

 

一同から「おぉ〜」と声が上がる

 

ようやくまともな名前が出て、尚且つカッコ良さげだ

 

「いいわね‼︎異議がなければそれで通すけど…」

 

誰も異議を言わなかった

 

震電の名に恥じない部隊名であり、そして彼等が憧れているであろうサンダーバード隊からも名を貰っている

 

「オッケー。なら決まり‼︎貴方達はサンダース隊。んでレイ。アンタ仮の隊長ね」

 

「俺は隊長ってガラじゃ…」

 

隊長と言われると、どうしても気が引けてしまう

 

越えてはならない壁の様な気がするからだ

 

「心配しなくていいわ。彼等が立派なパイロットになったら、リチャード中将に任せるから」

 

「お任せあれ‼︎」

 

「リチャード⁇ちゃんと教えなきゃダメよ⁇分かった⁇」

 

「そりゃあもちろ…」

 

「お酒のくすね方とか」

 

「ゔっ…」

 

「お釣りのチョロマカシとか」

 

「ゔっゔっ…」

 

「エッチな本の貸し借りとか」

 

「ゔっゔっゔっ‼︎」

 

親父は母さんに散々言われ、ついにいじけてしまった

 

「分かりましたかリチャード‼︎」

 

「う…はい…」

 

母さんは嬉しそうだ

 

オヤツタイムも終わり、今日は解散になった

 

腹が減ったので、きそと一緒に繁華街に行こうとしたら、親父も着いて来た

 

「あ、そうだマーカス。お前何で昨日タウイタウイモールで無視したんだ⁇」

 

「あ⁉︎タウイタウイモールだぁ⁉︎行ってねぇぞ⁉︎」

 

「居ただろ⁉︎アレは完全にお前だ‼︎」

 

「他人の空似じゃねぇのか⁇昨日は1日基地にいたし…なぁ⁇」

 

「うん。昨日レイはみんなとスゴロクしてたよ‼︎」

 

「じゃあアレは誰だ‼︎」

 

「知るか‼︎アレだ‼︎俺のクローンだクローン‼︎」

 

「お前が言うとシャレにならんぞ…」

 

「ったく…行くぞ」

 

俺達はいつもの様にずいずいずっころばしに入った

 

「やってるか⁇」

 

「いらっしゃい‼︎げっ‼︎中将‼︎」

 

「ちったぁデカくなったか‼︎はっはっは‼︎あだっ‼︎」

 

挨拶早々、親父は瑞鶴にセクハラ発言をブチかます

 

俺は母さんがそうしているように、頭を平手打ちした

 

「開幕早々セクハラしてんじゃね〜よ‼︎」

 

「んっ‼︎かんぴょう巻き流してくれ‼︎」

 

「かしこまりました‼︎」

 

横一列にカウンター席に座り、きそは流れて来たマグロとタマゴを取り、先に食べ始めた

 

「かんぴょう流しま〜す‼︎」

 

「来たぁ‼︎」

 

瑞鶴の握ったかんぴょう巻きがレーンに流れた瞬間、親父は全部取った

 

「中将はホントかんぴょう巻き好きですねぇ」

 

「甘くてグッドだ」

 

「それと中将‼︎私この間計ったら2センチ増えてました‼︎次ナイチチ扱いしたら爆撃するからね⁉︎」

 

「素晴らしい‼︎バストは大きい程素晴らしい‼︎」

 

俺の巨乳好きは親父から受け継いだのか…

 

「かんぴょう食べたらおっきくなるのかなぁ…」

 

きそは何故かずっと胸を気にしている

 

周りに巨乳が多いからなのかも知れない…

 

「にしても親父。瑞鶴と仲良いな⁇」

 

「瑞鶴は話し易いからな」

 

「そう言って頂けると幸いです、ちゅ〜じょ〜⁇」

 

瑞鶴はカウンター越しに、イタズラに親父に顔を近付ける

 

どうやら何か因縁があるみたいだ

 

その後俺達は寿司をたらふく食べ、いざデザートに手を伸ばそうとした

 

「いやぁ〜‼︎食った食った‼︎」

 

「親父」

 

「ん〜⁇」

 

「瑞鶴となんかあったろ⁇」

 

「なっ、ないっ‼︎」

 

「姫に言うよ⁇」

 

「それはいかん‼︎」

 

きその一撃が効いた様で、親父は口を割った

 

「瑞鶴とは…その…」

 

「だいぶ前に、襲われてる所を助けて貰ったんですよ」

 

「…」

 

話を聞くと、瑞鶴が横須賀から出て買い出しに行った時、ナンパされたらしい

 

瑞鶴は断っていたのだが、男性は無理矢理何処かへ連れて行こうと腕を掴んだ

 

そこに親父が急にバイクで現れ、男性を蹴り飛ばし、瑞鶴を背後に乗せて救出したらしい

 

「スッゴクカッコ良かったんですよ⁉︎」

 

「俺はいつだってカッコイイッ‼︎」

 

「うはは‼︎レイソックリだ‼︎」

 

「そう…貴方、またナンパしようと…」

 

「そうそう‼︎ホントは俺がナンパしよう…と…ハッ‼︎」

 

親父の横には、いつの間にか母さんがいた

 

「ふふっ…リチャード⁇」

 

「なぁに⁇スパイトしゃ…どわぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

親父が言う間も無く、母さんの笑顔の右ストレートが炸裂

 

親父は顔がメリ込む位殴られ、軽く吹っ飛んだ

 

「ズィーカク。ホントにごめんなさい」

 

「あぁ…いえいえ…あはは…」

 

「リチャード‼︎」

 

「はひっ‼︎」

 

「…今日は分かってるでしょうね⁇」

 

母さんが真顔で手をバキバキ鳴らす

 

「うひっ…」

 

きそが俺の腕を掴む

 

こんなに怒った母さんを見るのは初めてだ

 

「…今からイセに行って、私とデートしなさい」

 

「喜んで‼︎じゃあなレイ‼︎きそちゃん‼︎」

 

親父はすぐに母さんの車椅子を引き、ずいずいずっころばしから出て行った

 

「気を付けてな…」

 

「ばいば〜い…」

 

呆れ半分で親父と母さんを見送る

 

アレだけ渾身の右ストレートをモロに喰らって無傷の親父も相当だぜ…

 

「中将って、マーカスさんのお父さん⁇」

 

「そっ。よく似てるだろ⁇」

 

「特に性格が似てます‼︎」

 

「顔も似てるよ‼︎」

 

殴り飛ばされたり、セクハラしまくるのに、何故中将になれたのか不思議だ…

 

「そう言えばマーカスさん。数日前お一人でいらした時、お会計多目に頂いたみたいで…」

 

「ちょっと待て…俺はここに一人で来た事ない」

 

「えっ⁉︎じゃああの人は誰ですか⁉︎」

 

「中将も同じ事言ってたね⁇」

 

「俺のニセモンがいるのか⁇それともホントにクローンか⁉︎」

 

「マーカスさんが言うとシャレにならないんですけど…」

 

「う〜ん…」

 

どうやら、俺にソックリな奴が居るらしい

 

「あ…言われてみれば、何か無口だったかも」

 

「ますます分からん…」

 

「レイ。明日タウイタウイモールに行ってみようよ‼︎何かヒントがあるかも‼︎」

 

「そうだな。ごちそうさん‼︎」

 

「ありがとうございました‼︎またのご来店を‼︎」

 

俺達もずいずいずっころばしから出た

 

店を出てすぐ、きそと手を繋いで繁華街をブラブラする

 

「瑞鶴ってさ、いい匂いするよね。甘〜い感じの‼︎」

 

「目ェ離したら親父が手ェ出すぞ…」

 

瑞鶴のあの絡みやすさ、好きな奴は多いんじゃないだろうか…

 

それよりとにかく明日だ

 

そんなに俺に似ているのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リチャード中将とスパイトは…

 

「美味しいか⁇」

 

「おいしい‼︎リチャード、ありがとう‼︎」

 

スパイトは口の周りにいっぱいクリームを付け、リチャードの前で幸せそうにケーキを頬張る

 

姫は本当に好きな人の前では、極端に甘えん坊になる

 

「リチャード、スパイトのことすき⁇」

 

「好きだよ。だから頼むから許してくれ‼︎」

 

「スパイトしってるよ。リチャード、ズィーカクをたすけただけでしょ⁇」

 

「そうだっ‼︎」

 

「なら、スパイトにチューして‼︎」

 

「こっ、ここでか⁉︎」

 

「はやく〜っ‼︎」

 

この後青葉にキス写真を撮られ、全提督に知れ渡るまで、さほど時間は掛からなかった…

 


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