艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さ、151話が終わりました

今回のお話は、榛名が萩風と共に横須賀の繁華街を訪れます


151話 大きな子供

榛名はHAGYを連れ、横須賀の繁華街で食べ歩きをしていた

 

「どうダズルハギィ。ウメェダズルか⁇」

 

「はい、美味しいです‼︎」

 

HAGYは瑞鳳のプリンを食べてご満悦の様子

 

「榛名さんだ‼︎」

 

駄菓子屋の帰りであろう、清霜とガングートが榛名達の前に来た

 

「ハンマー見せて下さい‼︎」

 

「いいダズルよ」

 

榛名は振袖からいつものダズル迷彩のハンマーを取り出し、地面に立てて置いた

 

「キヨシー。ハンマーの良さが分かって来たダズルか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

榛名はニヤつきながら清霜の様子を眺める

 

実は榛名が振り回しているハンマー、榛名以外の戦艦の艦娘が持とうとしても、重すぎて上がらないのだ

 

榛名はそんなハンマーを持ち上げようとする清霜が可愛くて仕方ない

 

「振りやすいね‼︎」

 

「おぉ…」

 

清霜は榛名のハンマーを軽々と持ち上げた

 

初めてハンマーを持ち上げた人物を見て、榛名は驚いている

 

「いつかキヨシーも持てるといいダズルな」

 

「うんっ‼︎きーちゃんもいつか榛名さんみたいになる‼︎ありがとう‼︎」

 

清霜は二、三回ハンマーを振り、榛名に返した

 

「んで。なんダズル。このちっちゃいのは」

 

榛名はガングートに目を向け、抱き上げる

 

「離せ‼︎このシマウマ女‼︎」

 

「ハッハッハ。チッコイ割りには威勢がいいダズルな」

 

「この子はガングートちゃん‼︎ロシアから来たんだよ‼︎」

 

「ソ連ダズルか。よっと」

 

榛名はガングートを降ろした

 

「ロシアと言え、ロシアと」

 

「おそロシアダズル」

 

「くっ…何故だか分からないが屈辱だ…イディオットにチクッてやる‼︎」

 

「ハッハッハ。イディオットとはレイの事ダズルな⁇」

 

「ロシア語が分かるのか⁇」

 

「榛名はバイリンガルダズル。外国語なんざイッピー話せるダズル。だがな、榛名に合わせて言語を変えない奴はコレで一発ダズルな」

 

榛名は仕舞ったハンマーをチラリと見せる

 

「わ、分かった。ガン子が悪かった‼︎」

 

「分かればいいダズル。んで⁇駄菓子屋に行くんダズルか⁇」

 

「うんっ‼︎きーちゃん、キャラメル買うの‼︎」

 

「ガン子はきな粉棒を買う」

 

「うぬ。ならコレで買って来るといいダズル」

 

榛名はハンマーを仕舞っている逆の振袖から小銭を数枚出し、それぞれの手に落とした

 

「いいの⁉︎」

 

「いいのか⁇」

 

「榛名からお小遣いダズル」

 

「ありがとう‼︎」

 

「ハラショー‼︎」

 

一応横須賀の教育は良いのか、礼儀作法は二人共キチンとしている

 

二人が手を繋いで駄菓子屋に向かう後ろ姿を、榛名はしばらく眺めていた

 

「ハギィ。食ったダズルか⁇」

 

「あ、はい‼︎ごちそうさまでした‼︎」

 

「んじゃあ次行くダズル」

 

榛名とHAGYは満腹になってはいたが、喉が渇いていた

 

冷たいモノを飲むため、二人は間宮の暖簾を分けた

 

「やっとるダズルか⁇」

 

「はっ…榛名だ‼︎」

 

「ヒィッ‼︎榛名なんで⁉︎」

 

榛名が入って来た瞬間、数人の客が床にコップを落としたり、ビビって飲み物を零した

 

榛名とHAGYはカウンター席に座り、榛名が間宮を呼ぶ

 

「おい間宮‼︎」

 

「はっ、はい‼︎」

 

間宮はビクッと肩を上げた後、引きつった笑顔を見せながら榛名達の所に来た

 

「アイスミルクとメロンソーダを出すダズル。ハギィ。お前はどうするダズル」

 

「えっと…オレンジジュースを頂けますか⁇」

 

「かっ、畏まりました‼︎」

 

「間宮‼︎」

 

「ヒィッ‼︎」

 

「テメェ分かってるダズルな。この前みたいにアイスミルクだと言って脱脂粉乳を出してみろ。厨房から引き摺り出して蒼龍送りダズル」

 

「だっ、大丈夫ですよ…あはは」

 

間宮はカタカタ震える手で注文された品を準備し始めた

 

「Are you Haruna⁇」

 

「外人さんダズル」

 

榛名の横には、少し前に転任して来たアメリカのパイロットがいた

 

「YesDazzle。My Name Is HarunaDazzle」

 

「HarunaDazzle⁉︎」

 

「Yes。HarunaDazzle」

 

「HaHaHa‼︎」

 

アメリカのパイロットは訳が分からなくなったのか、急に笑い始めた

 

「Fu●kin'Dazzle」

 

榛名は笑顔で彼を罵倒する

 

「ハッハッハ‼︎久々だな、榛名‼︎」

 

「冗談はよすんダズル。リチャード、嫁にチクるダズルよ⁇」

 

「それはいかん‼︎すまん‼︎奢ってやるから勘弁してくれ‼︎」

 

「金が浮いたダズル」

 

アメリカのパイロットの正体はリチャードだった

 

リチャードは時たまこうして榛名に英語で話しかけて遊んでいる

 

「ハギィ。この人はレイのお父さんダズル」

 

「初めまして。萩風と申します」

 

榛名と違い、萩風はニコやかにリチャードに頭を下げた

 

「お淑やかな子だな…」

 

「リチャードは知らんだけダズル」

 

「おっ、お待たせしました‼︎」

 

二人の前にアイスミルクとメロンソーダ、オレンジジュースが置かれる

 

「頂くダズル」

 

「頂戴致します」

 

榛名はアイスミルクを一口で飲んだ後、メロンソーダも一口で飲み干す

 

「ぷは〜っ‼︎お口スッキリダズル‼︎」

 

「美味しいです‼︎」

 

「そっ、それはようございました」

 

「ハギィ。早く飲むダズル」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい‼︎」

 

萩風はストローでチュウチュウ飲んでいる為、飲むスピードが遅い

 

数分かけてオレンジジュースを飲み干した後、二人は席を立った

 

「ごちそうさまダズル。リチャード。支払い頼んだダズル」

 

「任せな‼︎」

 

「じゃあな。また来てやるダズル」

 

「ごちそうさまでした‼︎」

 

萩風が律儀に間宮に頭を下げ、二人は間宮を出た

 

 

 

 

「散々食ったダズルな」

 

「もうお腹”イッピー”です」

 

萩風は徐々に変わり始め…毒され始めていた

 

「…はっ‼︎」

 

「ふふふ…ハギィも慣れて来たダズルな。んじゃ、食後の運動に行くダズル」

 

榛名は萩風を連れ、遊戯場に来た

 

「榛名はこれが好きなんダズル」

 

榛名の目の前には、大きなボタンをハンマーで叩いて目盛りを上げ、頂点に達したら景品が貰えるゲームがある

 

「見てるんダズル」

 

榛名は腕を捲り、備え付けのハンマーを手にした

 

「うおりゃあ‼︎」

 

渾身の一撃がボタンに直撃し、軽く衝撃波が発生する

 

だが、目盛りは半分位しか上がっていない

 

「ハッ‼︎貧弱なハンマーダズル‼︎」

 

榛名が握っていたハンマーは柄の部分が折れてしまっていた

 

「コイツで一発行くダズル‼︎」

 

「それで叩いて大丈夫なんですか⁇」

 

「大丈夫ダズル‼︎」

 

榛名はいつものハンマーに持ち替え、構えに入る

 

「どぅおりゃあ‼︎」

 

「きゃっ‼︎」

 

先程よりも激しい音が響き、もっと激しい衝撃波が発生する

 

「うわっ‼︎」

 

衝撃波は近くにあったUFOキャッチャーの窓ガラスにヒビを入れ、プレイ中の人をビビらせた

 

「よ〜し‼︎やっぱりハンマーはこうダズルな‼︎」

 

上がり幅の限界を超えた目盛りはゲームから飛び出し、天井に当たって落ちて来た

 

ゲーム画面には”係員を呼んで下さい”と表示されている

 

「ちょっ、榛名‼︎またそれしたの⁉︎」

 

たまたま遊戯場の視察⁇に来ていた横須賀が異変に気付き榛名達の所に来た

 

「景品出ないダズル」

 

榛名は筐体を破壊したにも関わらず、景品をせびる

 

「景品以前に今月これで12台目よ⁉︎何回自前のハンマーで叩くなって言えば分かるのよ、もぅ…」

 

「じゃあ景品は諦めて別のんするダズル」

 

「ワニの奴はダメよ‼︎」

 

「何故ダズル‼︎」

 

「アンタが叩いたらワニが変になるのよ‼︎」

 

「ぐぬぬ…」

 

過去に榛名はワニを叩くゲームをやり、筐体全てのワニを本当の意味の戦闘不能になるまで叩きのめした

 

叩かれたロボットのワニは回路が狂ったのか、レイが辛うじて直してくれた今でも、叩いたら声こそするものの「ぴにゃ」とか「ぷべぁ」等、変な声しか出さなくなった

 

「…仕方ないダズル。勘弁してやるダズル。ハギィ、すまんな」

 

「いえいえ…あはは…」

 

遊戯場を出ると、迎えの船が来ていた

 

「おうち帰るダズル」

 

「そうしましょう」

 

榛名はHAGYの前に手を出した

 

「おてて繋ぐダズル」

 

「ふふっ。はいっ‼︎」

 

二人は手を繋いだ

 

それは親と子と見間違う位身長差がある

 

だが、HAGYにとって、榛名は”子供”と認識し始めていた

 

HAGYは気付いた

 

榛名はこれ程強いのに、まだ子供っぽい所がある

 

恐らく榛名自身はその事に気付いていない

 

HAGYは幾度と無く子供っぽさを見せる榛名に母性本能をくすぐられていた

 

元々面倒見の良いHAGYは、いつしかそんな榛名から目を離せなくなっていた…

 

 

 

 

 

 

萩風が毒され始めました


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