艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、147話が終わりました

今回のお話も新艦が出て来ますが、この子は少し屈折して出そうと思います

彼女は艦娘⁇に当たるのかな⁉︎




148話 アイヌの恋人(1)

大湊の執務室でガンビアの艦長、岩井とボスが棚町の前に立っている

 

「私の任務は補給艦の艦長かい⁇」

 

「そう。今日この基地に補給艦”神威Mk.2”が来た。ボスにはその艦長を任せようと思う」

 

「神威ねぇ…私の産まれた土地の言葉だねぇ。気に入ったよ‼︎」

 

「なら話は早い。行こうか。鹿島、何かあったらすぐに呼んでくれ」

 

「はいっ」

 

鹿島を執務室に残し、三人は埠頭に向かう

 

その道中、岩井が口を開いた

 

「不安じゃないのか⁇」

 

「私に言ってるのかい⁇」

 

「お前以外に誰がいる」

 

互いに目は合わさずに正面を向いているが、会話は成立している

 

「不安じゃないよっ」

 

「そうかい。なら良かった」

 

「何かあったら、アンタが助けに来てくれるんだろ⁇」

 

「まぁ…」

 

「フフッ、なら不安じゃないさっ‼︎私にはアンタが付いてる‼︎だろっ⁉︎」

 

ボスは岩井に歯を見せて笑顔を送る

 

岩井はそんなボスを見て、完全に心を射抜かれていた

 

埠頭に停泊していた神威Mk.2は今までのタンカーより一回り大きく、そして速い

 

しかも、軽い兵装まで付いている

 

「ほほぅ⁇これでアンタにゃ負けないねぇ⁇」

 

「守られるのは我々の方かも知れないな…」

 

一通り説明を受けた二人は談笑をし始めた

 

ボスは元々船長だったので、粗方の操作法は理解していた

 

後はプロである岩井に任せた方が良い

 

「…艦長」

 

「ん⁇」

 

そんな二人の後ろで、棚町とボスの手下が話し始める

 

「あの二人、デキてんすかねぇ…」

 

「人の恋路は邪魔しちゃならん。温かく見守ろう」

 

「へへっ。そっすね‼︎」

 

ボスは今まで見た事ない女の顔をしていた

 

完全に岩井に惚れている

 

そしてまた、岩井もボスに惚れている

 

「ボス、これはいりやすか⁉︎」

 

違う手下がボスの服一式を持って来た

 

「残ってたのかい⁉︎」

 

「いつかボスが着るかと思いやして」

 

「いいねぇ‼︎任務の最中はコレを着よう‼︎」

 

ボスは手下から服一式を貰う

 

見た所、バンダナや黒いサラシがある

 

民族衣装に近い服の様だ

 

「では、明日から頼むぞ」

 

「はいよっ‼︎ちゃんと守っとくれよ⁉︎」

 

ボスは軽く前傾姿勢になり、岩井の鼻先を突いた

 

「まっ、任された…」

 

岩井の心臓は飛び出しそうな位、鼓動を早めていた…

 

その日、岩井の部屋からは、今しばらくモソモソ動く音が聞こえたと言う…

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、岩井は早くからガンビアに乗り込んでいた

 

「よーし、いつでも発進可能だ‼︎」

 

岩井はいつも以上に気合いが入っていた

 

「艦長、何かおかしくないか⁉︎」

 

「いつも以上にやる気が入ってんな…」

 

いつも以上に早く作業が終わったガンビアの艦載機パイロットの二人が、岩井の張り切り具合に驚いている

 

「お前ら‼︎」

 

「はっ‼︎」

 

怒られると思ったはすぐに立ち上がり、背後に煙草を隠した

 

「ライター貸してくれるか⁇」

 

「あ…はっ、はい‼︎」

 

パイロットの一人が岩井が咥えていた煙草に火を点けた

 

「艦長、今日どうしたんですか⁇」

 

「え⁉︎」

 

乗組員もパイロットも、こう言った話が多い

 

つまらない事でもなんでも話し、岩井ともう一人の艦長も話し易い雰囲気作りをいつも心掛けている

 

二人共、怒った所を見た事がない位だ

 

本当に強いて言うなら、照月が乗艦して来た時に軽くパニクる位だ

 

「何か凄い張り切ってる気がします」

 

「あぁ…そう見えるか⁇」

 

「「凄く」」

 

二人にそう言われ、岩井は鼻で笑う

 

「あれだ。守るべき人が出来た…って感じだ」

 

「なるほど…」

 

「さっ‼︎私は行くよ‼︎振り落とされるなよ⁉︎」

 

「「了解です‼︎」」

 

岩井は操舵室に入って行った…

 

明るく話し易い艦長をバカにする連中は、この艦には一人も居なかった

 

むしろ、応援してやらねばと思っていた

 

「艦長、神威Mk.2艦長が改めてご挨拶したいと」

 

「んっ。通してくれ」

 

乗組員がボスを操舵室に通す

 

「神威Mk.2艦長でございます」

 

そこにいた一同、ボスの外見を見て”おぉ…”とため息を吐く

 

ボスは昨日の民族衣装の様な服に着替えていた

 

白く長い髪を青いバンダナで纏め、足には黒いサラシを巻いている

 

服は色んな所に隙間が出来ていて、太ももや横乳が見え隠れしている

 

「これは私の正装なんだよ。似合うかい⁇」

 

「に、似合ってる」

 

「艦長‼︎」

 

「ぐわっ‼︎マジか‼︎」

 

岩井は笑顔で親指を立てながら、両鼻から鼻血を出していた

 

岩井は鼻から大量のヘモグロビンを噴出するが、周りにいた乗組員のが瞬時にティッシュを詰め込んだので難を逃れた


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