艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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145話 私をデートに連れてって‼︎(3)

会場に着くと、既に人が集まっていた

 

適当な場所に座り、ショーが始まるのを待つ

 

数分後、またアナウンスが流れる

 

《お待たせしました‼︎イルカショーの始まりです‼︎》

 

アナウンスが終わると同時に、イルカ達が会場の水槽に入って来た

 

「イルカさんです」

 

はっちゃんはイルカに釘付けになっている

 

調教師のホイッスルの合図で、イルカ達はジャンプしたり、水飛沫を上げたり等、多彩な芸を披露する

 

「おぉ〜っ‼︎」

 

「ははっ‼︎凄いな‼︎」

 

言ってる俺もイルカに釘付けになる

 

《それでは、ここでお客さんの中からイルカさんにエサをあげたい人を募集します‼︎イルカさんにエサをあげたい人‼︎手を挙げて下さ〜い‼︎》

 

「は、はいっ‼︎」

 

はっちゃんはいの一番に手を挙げた

 

まっ、これだけ人が居たら当たらな…

 

《では、そこの”カップル”のお二人‼︎どうぞこちらへ‼︎》

 

どうやらはっちゃんは当たったみたいだ

 

「やりました‼︎行きましょう‼︎」

 

「マジかよ‼︎」

 

はっちゃんに手を引かれ、水槽の縁を歩く

 

「では、お兄さんとお姉さんには、エサをあげる前に、一つ芸を披露して貰います‼︎」

 

「任せな」

 

俺は口に指を咥え、笛の様に吹き、手を下から上に上げた

 

するとイルカ達は列を揃え、ジャンプして一回転した

 

観客席からは歓声が上がっている

 

「これでオーケーか⁇」

 

「凄い…って‼︎違います‼︎」

 

「マーカス様‼︎はっちゃん達は芸の出し方を教えて貰うのです‼︎」

 

「な、何っ⁉︎すまん‼︎」

 

「逆にどうやってしたんですか‼︎」

 

「いや…その…」

 

「はっちゃんはどうすれば良いですか⁇」

 

「あ…そ、そうね‼︎」

 

はっちゃんは調教師の人に芸の出し方を教えて貰い、イルカをその場でクルクル回転させた

 

「では、エサをあげて下さい‼︎」

 

アジを渡され、二人はイルカに投げる

 

イルカ達はアジを綺麗にキャッチして食べた

 

「ありがとうございました〜」

 

俺達の出番は終わり、手を洗った後、観客席に戻って来た

 

「マーカス様。さっきのアレ、どうやってしたのですか⁇」

 

「大分前に水族館に行った時の見よう見まねだ…まさか上手くいくとは…」

 

「はっちゃんもやれば良かったです」

 

イルカショーが終わり、客がゾロゾロ移動し始めたので、俺達も会場を後にした

 

 

 

 

水族館もあと少し

 

だが、はっちゃんはお目当てをまだ見れていなかった

 

「あっ‼︎」

 

最後の最後で、開けた場所に出た

 

「はっちゃんが見たかったのはこれです‼︎」

 

そこには、巨大な亀の骨格標本が宙から下げられていた

 

「アーケロンです‼︎」

 

「デッカいもんだなぁ…へぇ〜」

 

数メートルはあろう骨格標本を、二人して見上げる

 

「はっちゃん、アーケロンを見たかったのです」

 

「クジラじゃなくてか⁇」

 

「マーカス様が読んでくれた本に、アーケロンの背中に乗って大海原を行くお話がありました」

 

「なるほど…」

 

どうやらはっちゃんは、俺の読んだ本の中に出て来た生物に興味が行くらしい

 

クジラ、イルカ、そしてアーケロン…

 

全部、はっちゃんがアイリスだった時に読み聞かせた本の中に出て来た生き物だ

 

「これだけ大きければ、はっちゃんも背中に乗って色んな所に行けますねぇ…」

 

はっちゃんは目を見開いてアーケロンを見ていた…

 

水族館の出口付近には、お土産コーナーがあり、そこで子供達のお土産を選ぶ事にした

 

「コイツはいい」

 

棚に陳列されたイルカのぬいぐるみ

 

腹部分を押すとピープー鳴って面白い

 

色違いを三つ買い、次のお土産を選ぶ

 

紐を引っ張ると震える小さなカピバラのぬいぐるみや、吸盤の付いたサメのぬいぐるみ等、ちょっといっぱい買ってみる

 

これだけ色々買えば、子供達はどれか一つは気に入ってくれるハズだ

 

「はっちゃんはこれにします」

 

はっちゃんの手には、亀のぬいぐるみがある

 

それらをカゴに入れ、レジで精算を済ませ、外に出て来た

 

海岸に備えられた柵にもたれ、タバコに火を点けると、手にジュースを持ったはっちゃんが横に来た

 

「楽しかったです‼︎」

 

「俺もさ。久々に息抜き出来たよ」

 

「”すいぞっ”館は良いものです」

 

俺はずっと気になっていた事を聞いてみた

 

「はっちゃん。お洋服を洗う機械、なんて言う⁇」

 

「”せんたっき”ですか⁇」

 

「ふっ…」

 

やっぱりな…

 

はっちゃんは水族館を”すいぞっかん”洗濯機を”せんたっき”と言う

 

たまに略す癖があるみたいだ

 

「そろそろ帰ろうか。暗くなって来た」

 

「…はいっ」

 

はっちゃんは何か言いたそうな感じをしていたが、俺達は帰りのバスに乗った

 

はっちゃんはセントレアに着くまで、もの惜しそうに外を眺めていた

 

ホント、平和になったらいろんな場所に連れて行ってやらないとな…

 

セントレアに着き、棚町の兄に礼を言い、グリフォンに乗り込む

 

《発進します》

 

「行こう」

 

セントレアからグリフォンが出る

 

管制塔も、地上にいた人も、グリフォンに手を振る

 

愛知…か

 

ここにも思い出が出来たな…


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