艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、142話が終わりました

今回のお話は、私が最近ようやく入手した艦娘のお話です

とはいえ、大分前からちょくちょく出てきています




143話 恋は動き出す(1)

「いっちにち、一殺‼︎三日で三殺‼︎榛名はハンマァ振るダズル〜‼︎」

 

ワンコの横で、榛名がリズムに合わせてハンマーの素振りをする

 

「ダズルも飽きないニムな」

 

「あ⁇おいクソニム‼︎榛名に口答えすっと、この前みたいに脳天叩き割るダズル‼︎」

 

「何も言っとらんニム‼︎」

 

単冠湾の1日は本当に賑やかだ

 

その筆頭は勿論榛名

 

そして、最近はこのニムも賑やかだ

 

少し前に榛名がイージス艦でトローリングしていた際、偶然引っ掛かった潜水型の深海棲艦が攻撃して来た為、榛名は海中から引き摺り出し、ハンマーでこれでもかと殴打

 

190発目を迎えようとした時、潜水型深海棲艦は白旗を上げ、榛名は首根っこを掴んで嫌々入渠ドックに放り込んだ

 

あまりにも殴られ過ぎた為か、潜水型深海棲艦は入渠途中、艦娘になった

 

それがニムだ

 

…後に聞いた話によるとこの子は深海棲艦側の裏切り者だったらしく、停戦状態になっていた人間側に攻撃しようとしていた張本人らしい

 

 

 

 

「最近榛名は出番が無くて暇ダズル。クソニム。ちょっと30発位叩かせるダズル」

 

「ふざけんなニム‼︎理不尽ニム‼︎」

 

「ははは。お褒め頂き光栄ダズル‼︎」

 

榛名はハンマーを振りながらニムに近付く…

 

「うわぁ‼︎提督‼︎助けるニム‼︎」

 

ニムはワンコの後ろに隠れるが、榛名には関係無い

 

「提督もたまには一発行っとくダズルか⁉︎」

 

「ちょっ‼︎榛名‼︎」

 

「ぬぅんダズル‼︎」

 

一瞬でワンコが座っていた椅子が大破する

 

ワンコはニムを抱え、部屋の端へと逃げた

 

「おい待つんダズル‼︎ちょっと痛いだけダズル‼︎」

 

「そのちょっとが即死ニム‼︎」

 

「おいクソニム‼︎なに提督にオッパイ当ててるんダズル‼︎」

 

「サービスニムゥ♪♪」

 

ニムは榛名をおちょくるかの様にワンコに胸を押し付ける

 

「ぐぬぬぬぬ…クソニム…クソニムは榛名を怒らせたダズル…」

 

ハンマーを握る手に力がこもる

 

「ハンマーの血のぬめりにしてやるダズル‼︎」

 

榛名がハンマーを振り上げた瞬間、執務室の扉がノックされた

 

「チクショウ誰ダズル‼︎」

 

「はっ…はいはい‼︎」

 

榛名のハンマーが止まり、ワンコは命拾いしたと思い、扉を開けた

 

「こんにちは‼︎」

 

「たいほうちゃん‼︎いらっしゃい‼︎」

 

訪問者はたいほうだ

 

たいほうは大きめのリュックを携えている

 

「あのね、すてぃんぐれいいそがしいから、たいほうおつかいにきたの」

 

「そっかそっか。たいほうちゃんは偉いなぁ‼︎」

 

ワンコは執務室の中にたいほうを入れ、ジュースを出した

 

「いただきます‼︎」

 

「いい子いい子ダズル」

 

鬼神と言われた榛名も、子供の前では大人しい

 

榛名はたいほうやきそを見かけると、彼等がそうしている様に膝の上に置く

 

「あっ‼︎これ、すてぃんぐれいがわんこさんにわたしてって‼︎はい‼︎」

 

ジュースを机の上に置き、たいほうはリュックに入っていた書類をワンコに渡す

 

「ありがと」

 

「あとこれ」

 

今度は一枚の封筒

 

「よこすかさんからだって。きゅうかのひ‼︎」

 

「休暇かぁ…」

 

「すてぃんぐれいにほうこくしてもいい⁇ちゃんとわたしたよって」

 

「うんっ、いいよ」

 

たいほうはきそに貰ったタブレットを取り出し、あの会話ツールを起動した

 

 

 

 

てぃーほう> わたした‼︎

 

リヒター> 助かった‼︎ビスケット二箱買ってあるから、たいほう食べていいぞ‼︎

 

てぃーほう> やったね‼︎

 

リヒター> 俺の引き出しの一番下に入ってるからな

 

てぃーほう> いただきます

 

 

 

 

簡単に報告と会話を済ませた後、タブレットを仕舞おうとしたたいほうの手を、何故かワンコはたいほうの手を掴んで止めた

 

「ん⁇わんこさんもたぶれっとほしい⁇」

 

「これ…何処で…」

 

ワンコが目にしたのはタブレットでは無く、タブレットに付いていた、ハート型の赤い石のキーホルダー

 

「まりちゃんからもらったの‼︎」

 

「まり⁉︎」

 

「うんっ‼︎きょじゅうくにいるまりちゃん‼︎」

 

たいほうは素直に答えた

 

だが、それだけでは確証には至らない

 

「まりちゃんはどんな子だった⁇」

 

ワンコはたいほうの肩を持ち、ほんの少しだけ小さく揺する

 

「んとね…ち〜っす‼︎とかいってた‼︎」

 

「はぁ…」

 

ワンコはたいほうの肩を持ったまま深いため息を吐いてうつむいた

 

「わんこさん、まりちゃんしってる⁇」

 

「うん…知ってるよ。優しい子だよね⁇」

 

「うんっ‼︎たいほう、まりちゃんすき‼︎」

 

ワンコはたいほうの笑顔を見て、確証に変わった

 

まりは昔から人に好かれる

 

たいほうに好かれても何ら可笑しくない…

 

ワンコはたいほうのリュックにご褒美のお菓子を詰め、たいほうを基地へと返した

 

たいほうが帰ってすぐ、ワンコは休暇届けの書類に手をかけた

 

今週末に逢いに行こう‼︎

 

本当は今すぐにでも逢いに行きたい

 

だけど、基地を開ける訳にも行かない

 

なら、大湊の方に頼める週末にしよう‼︎

 

ワンコはすぐに書類に書かれていた番号に電話を入れ、横須賀に休暇を出した

 

横須賀は二つ返事で許可を出した

 

「はぁ〜っ…よしっ‼︎」

 

誰にでも分かる嬉しさをワンコは出していた

 

だが、一人だけは違っていた…

 

「…このままではいかんダズルな」

 


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