艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、140話が終わりました

今回のお話は、レイが”嫌々”横須賀に出来た教会へと足を運びます

またほんの少し、物語の謎も明らかになるのかな⁉︎


141話 神様なんていない(1)

バーズ・シャングリラの一件からすっかり忘れていたが、教会が造られた

 

俺はきそに連れられ、嫌々見学に行く事になった

 

「ほら〜っ‼︎早く来てってばぁ〜‼︎」

 

「い〜や〜だ‼︎絶対何か企んでるってぇのぉ〜‼︎」

 

俺は広場からきそに地面をズリズリ擦られながら教会に向かっていた

 

「アホがいるのです‼︎」

 

「レイさん何してるの⁇」

 

広場でたまたま話をしていた雷電姉妹が来た

 

「レイが教会に行きたくないって言うんだ」

 

「嫌だ‼︎絶対絶対ぜ〜ったい、シスターは何か企んでるってのっ‼︎」

 

「なら死ぬといいのです‼︎神を信じない者は死んで償うのです‼︎」

 

「サラッと怖い事言うな‼︎」

 

「サラと言えば、レイさん。この前サラって人と歩いてたわね…不倫⁇」

 

「しかも義母となのです‼︎」

 

「レイ〜。早く行かないとありもしない事言い振り回されるよぉ〜⁇」

 

きその脅しも入る

 

「うっ…ぐ…分かったよ‼︎行きゃ良いんだろ行きゃあ‼︎お前ら‼︎絶対言うなよ‼︎」

 

「そんなもん知らんのです‼︎電の勝手なのです‼︎」

 

「電には私から言っておくから、レイさんもきそちゃんも行ってらっしゃい‼︎」

 

「くたばるといいのです〜‼︎」

 

電は逢う度に口が悪くなっている気がする…

 

ホント嫌々教会の前に着くと、まずきそを前に出した

 

「頼むから先行ってくれ‼︎」

 

「わ、分かったよぉ…仕方ないなぁ…」

 

きそは教会の入り口のドアノブに手を掛けた…

 

「うわぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

ドアノブに触れた瞬間、きそは声を上げて痙攣し始めた

 

「やっぱりだ‼︎きそ‼︎」

 

「な〜んてね‼︎」

 

きそは痺れたフリをしただけだった

 

「悪い奴だな…ふぅ…」

 

「きっと何にもないよ。僕もいるし大丈夫だよ」

 

きそは普通に扉を開けた

 

 

 

中に入るとステンドグラスが各窓にあり、椅子や教壇等そこそこ立派な内装が目に入った

 

そして子供達が聖歌を歌っている

 

俺ときそは聖歌を歌っている子供達から一番離れた長椅子の端に座り、それを聴く事にした

 

「…レイ。こう言うの興味無いんじゃないの⁇」

 

きそが小声で聞いて来た

 

「神も天使も信じないけどな、コレだけは別さ」

 

「ふぅ〜ん…」

 

きそはつまらなさそうに反応した後、何気無しに手を繋いで来た

 

あまりにもいつも過ぎる為、しばらく気が付かなかった位だ

 

俺はその手を聖歌が終わるまで握り続けていた

 

聖歌が終わり、シスター・ヌードルが子供達を別の部屋に移し、シスター・グリーンが此方に来た

 

「あらマーカス君。神を信じる気になったのかしら⁇」

 

「んな訳ねぇだろ。歌聞きに来たんだよ歌を」

 

「ぐが〜〜〜…」

 

聖歌が心地良かったのか、きそは手を繋いだままイビキをかいていた

 

「…ったく」

 

きそを長椅子に寝かせ、上に革ジャンを被せた

 

「あら。マーカス君そんな事する様になったのね⁇」

 

「俺の娘だよ」

 

きその頭を撫でた後、シスター・グリーンの顔を見る

 

「んでっ⁇俺をここに呼んだ理由は何だ⁇」

 

「そうね…」

 

シスター・グリーンは何を思ったのか、俺を長椅子に座らせ直せ、膝の上に座って来た

 

シスター・グリーンは結構小柄で、立てばきそとドッコイドッコイの身長になる

 

きそより出る所は出ていて、少し色っぽく、そして年増だ

 

言っていなかったと思うが、俺は年上の女がチョット苦手だ

 

俺は皆から言われている様に、甘える事が苦手で、どう接して良いか分からないからだ

 

だからこそ年下でヒステリーでどうしようもない女を嫁に選ぶんだろうなぁ…

 

「長年シスターやってると体が火照っちゃう時があるのよね…」

 

シスター・グリーンは俺の手を取り、自身の太ももの上に置く

 

「…歳いくつだ⁇」

 

「レディに年齢は聞いちゃダ〜メ。分かった⁇」

 

「ウッセェババア‼︎」

 

「あら。そんな事言って良いのね⁇今の私達、他の人が見たらどう見えるでしょうね〜…ふふふふふ」

 

「よしっ‼︎レイ、カメラ切ったよ‼︎」

 

「デカした‼︎」

 

「あ、あら〜⁇」

 

実はきそ、寝ていた訳ではなく、長椅子に設置されていた隠しカメラの回線を切っていたのだ

 

実はきそが手を繋いで来た時、きそは俺の手の平に指でモールス信号を送っていたのだ

 

”椅子の隙間にカメラがあるから切る”

 

俺は寝たフリしたきそに革ジャンを被せて外側から見えない様にし、きそはその中でカメラの回線を切っていたのだ

 

「一本取られちゃったぁ〜‼︎」

 

シスター・グリーンは笑いながら俺の両手を握り、後頭部を俺の鳩尾に当てた

 

「シスターの下で何年やってたと思ってるんだよ」

 

「たまにはシスター以外の名前で呼んでくれてもいいでしょ、マーカス君っ⁇」

 

「ちっ…」

 

頭を掻こうとしたが、シスター・グリーンは信じられないパワーで俺の手を握っていた

 

「呼んでくれたら離してもいいかなぁ〜⁇」

 

「ホントだな⁉︎約束だぞ⁉︎」

 

「えぇ」

 

「…ゆ、ユウグモお姉ちゃん」

 

「なぁに⁇マーカス君っ⁇」

 

「うへぁ〜…」

 

きそは回線を切ったカメラで二人をコッソリ映す

 

レイが”お姉ちゃん”なんて言うのは大変珍しい

 

それを顔を真っ赤にしてだ

 

カメラに映った二人は、身長差が凄い本当の姉と弟に見えた

 

「こんなに立派になって…お姉ちゃんは幸せよ⁇」

 

ユウグモはレイの手を頬に置き、頬擦りをする

 

「早く降りてくれ。ババアは重い」

 

「冷たさは変わらないのね⁇」

 

「いい年して色付いてんじゃねぇよ」

 

「その悪〜いお口塞ぐにはどうしたらいいかしら⁇」

 

「キスでもしたらどう⁇」

 

「きそ‼︎」

 

「ふふふ〜…」

 

きそはカメラを持って俺達を撮影している

 

「お母さんには言わないよ。約束する」

 

「にはじゃない‼︎誰にもだ‼︎」

 

「誰にも言わないよ⁇ささっ、ブチューっと‼︎」

 

きそがニヤつきながら手で行為を促す

 

「…ったく」

 

俺は上を向いて目を閉じているシスター・グリーンの髪をかき上げ、額にキスをした

 

「あん…」

 

「色っぽい声出すな‼︎」

 

「てっきり唇にするかと…」

 

「する訳ねぇだろ‼︎娘の前だぞ‼︎」

 

「おしい〜‼︎」

 

当の娘は惜しがっている

 

だがしない

 

絶対にしない

 

嫌な予感がする‼︎

 

「口ん中見せてみろ‼︎えぇ⁉︎」

 

「あっ‼︎ひょっろ‼︎ケホッ…」

 

俺はシスター・グリーンの口の中に指を突っ込んだ

 

「コレは何かなぁ〜⁉︎」

 

口の中から指を抜くと、薬品のカプセルが出て来た

 

「えっとぉ〜…媚薬⁇」

 

「きそ。だから言ったろ。絶対何かあるって‼︎」

 

「ユウグモお姉ちゃんは悪女⁇」

 

「悪女も悪女だ‼︎ったく、二度とすんなよ⁉︎俺は年増に興味無いんだ‼︎」

 

「お姉ちゃんを年増だなんて…たかだかよんj…」

 

俺は急いでシスター・グリーンの口を塞いだ

 

「…歳の話した俺が悪かったよ」

 

「ふふっ。まぁいいわ。今日は諦めたげる」

 

シスター・グリーンはようやく膝の上から降り、此方に振り返る

 

「でも、時々膝の上に座らせて⁇」

 

「座るだけな⁇絶対だぞ⁉︎」

 

「分かったわ。また来て頂戴⁇」

 

「気が向いたらな。じゃあな」

 

俺はようやく長椅子から立ち上がり、きそを連れて教会を出た

 

 

 

 

外に出ると、きそはパクって来たカメラを大事そうに抱いていた

 

「良い絵が撮れましたね、グヘヘ…」

 

「お前段々横須賀に似て来たな…」

 

「親子だからね‼︎」

 

きその嬉しそうな顔を見ると、本当に横須賀の顔が浮かんだ

 

俺はきその前に屈み、先程シスター・グリーンにした様に髪をかき上げ、額にキスをする

 

「わっ…」

 

きその顔が一気に赤くなる

 

「そしてコレは没収だ」

 

「あがっ‼︎」

 

きその一瞬の隙を突き、カメラを奪う

 

「ぢぐしょ〜‼︎高値で売れると思ったのに"〜っ‼︎」

 

「ヌハハハハハ‼︎まだまだ甘いわ‼︎」

 

きそが地団駄を踏む前で、メモリーカードを抜き、内ポケットに仕舞う

 

「カメラは好きにしていいぞ」

 

「ホント⁉︎」

 

きその地団駄が止む

 

「要らんモノ撮るなよ⁉︎分かったか‼︎」

 

「んっ‼︎分かった‼︎」

 

「よし‼︎」

 

そして再び手を繋ぐ

 

この時、きそには不思議な感情が生まれていた

 

それは少し前からだった

 

いや、その感情自体は随分前からあった

 

きそはレイが、レイに気がある女性と話していたりすると、何故か邪魔をしたくなるのだ

 

そしてその女性にイタズラもしたくなる

 

きそは気付いていないが、横須賀と仲が良くない頃に色々チョッカイをかけていたのはその感情の為である

 

今では横須賀にそんな事しないが、今日シスター・グリーンに対してその感情が息を吹き返した

 

…ヤキモチだ

 

だが、きそがこの感情に気付くのは、もっともっと先のお話になるのであった…


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