艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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139話 戦艦になりたい理由(3)

「好きなの持っておいで」

 

しばらくすると、清霜は小さな箱のお菓子を両手に一つずつ持ち、それを振りながら持って来た

 

「これにする‼︎」

 

「じゃあお勉強の時間だ。これ持って、あの人にお金払っておいで」

 

清霜にお金を渡し、足柄に代金を払わせる

 

「ありがとうございました〜‼︎」

 

「”おばさん”ありがとう‼︎」

 

「なっ…」

 

足柄の顔が引きつる

 

「ただいま‼︎お父様、ありがとう‼︎」

 

「一つはお姉ちゃん達と食べるのか⁇」

 

「はい‼︎」

 

清霜は持っていたお菓子の箱の一つを俺に渡して来た

 

「お父様と食べる‼︎」

 

「そっか。ありがとう」

 

清霜からお菓子の箱を受け取り、手を繋いで執務室に戻る

 

帰るまで清霜は嬉しそうに箱を振りながら歩いていた

 

どこかで見た事ある風景だと思ったら、たいほうか…

 

たいほうも物を持ったら振るクセがあるからな…

 

子供らしくてホントに可愛い

 

「お母様‼︎きーちゃん戻りました‼︎」

 

「お帰りなさい。お菓子買って貰った⁇」

 

「うんっ‼︎きーちゃんコレ食べかったの‼︎オマケ付きなんだよ‼︎」

 

執務室に着き、清霜は早速箱を開け、中のお菓子を手に取った

 

箱の中身は一つ一つ包み紙に包まれたソフトキャンディで、清霜みたいに小さくても口の中で舐めて食べられる

 

「美味しいか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

清霜は幸せそうにソフトキャンディを口にする

 

朝霜と磯風きそはまだ清霜に恐怖しているのか、だいぶ離れた所でグミを食べている

 

「大人しくしてたらホント良い子なのに…」

 

「もう大丈夫だ。なっ、清霜」

 

「うんっ‼︎きーちゃん、お父様と約束した‼︎」

 

「あら。どうりで大人しいのね」

 

「清霜⁇お父さんはもう帰るけど、約束、ちゃんと守ってくれるよな⁇」

 

「うんっ‼︎大丈夫‼︎きーちゃん約束破らない‼︎」

 

「オトン、もう帰るのか⁇」

 

「次はアタイ達共遊んでくれよ⁉︎」

 

「レイ。今日はご飯食べて帰らない⁇」

 

それはきその提案だった

 

「基地のみんなも家族だよ⁇だけど、僕達だって家族じゃない。たまにはいいでしょ⁇」

 

きその言う通りだ

 

「んっ。そうだな。んじゃ、何か食いに行くか‼︎」

 

「やったぜ‼︎アタイ瑞雲がいいな‼︎」

 

「オトンは蟹剥きだ」

 

「清霜もカニでいいか⁇」

 

「カニってなぁに⁇」

 

「美味しい奴だ。お父さんと一緒に食べるか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「きそもそれでいいか⁇」

 

「うんっ‼︎久し振りだね‼︎」

 

「じゃあ行きましょうか‼︎」

 

俺達家族は、初めての一家団欒の晩御飯を囲む事になった

 

俺は清霜を肩車し、両手は朝霜と磯風の手を繋ぐ

 

きそは横須賀と手を繋いでいる

 

当初あれだけ嫌われていたのに、ここ数日で一気に距離を縮めた様だ

 

やはり、きそには本当の母親が必要だったのだろう

 

瑞雲に着くと、蟹鍋が勝手に出て来た

 

…まぁ、仕方ないな

 

メニューはコレしかないし

 

「お父様‼︎この赤いのはなぁに⁉︎」

 

「コレがカニさ。食べてみるか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

清霜はピープー鳴る椅子に座らされ、目の前のカニを見て椅子をピープーピープー鳴らせる

 

カニを剥き、まずは清霜に食べさせる

 

「美味しいか⁇」

 

「うんっ‼︎お父様と食べるのは何でも美味しい‼︎」

 

「オトンは本当に子供に好かれるな…いーちゃんもそこだけは見習わなければ」

 

「お父さん‼︎アタイのも剥いて‼︎」

 

朝霜と磯風のカニも剥き、カニ鍋はドンドン無くなっていく

 

「きそちゃんも食べなさい。無くなるわよ⁇」

 

「もうメッチャ食べてるよぉ…」

 

「あら…」

 

きその前にも、大量のカニの殻がある

 

「レイ。私のも剥いて⁇」

 

横須賀から、身の入ってそうなカニの脚を数本貰う

 

「ホラよ」

 

「ありがとっ‼︎」

 

「お父様は食べないの⁇」

 

「お父さんは清霜達が食べてるのを見てるのが好きなんだ」

 

「きーちゃんのあげる‼︎はい‼︎」

 

「あ〜ん…」

 

清霜の手にはカニの脚が持たれている

 

俺は清霜の手からカニを食べた

 

「美味しいなっ‼︎」

 

「うんっ‼︎きーちゃん、カニ好きになった‼︎」

 

清霜も朝霜も磯風も、終始幸せそうだった

 

きそと横須賀はそれとは別に幸せそうだ

 

俺も初めて全員を集めた家族団欒に、新しい幸せを感じていた…


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