艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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138話 貴方にもう一度惚れた日(4)

次の日の朝…

 

また、しばらくレイと逢えなくなる

 

そう思うと、完成した”アレ”の所に連れて行くのはイヤになった

 

「横須賀さん」

 

きそちゃんが格納庫の前で待っていた

 

「きそちゃん…」

 

「僕に用事があるって聞いたけど⁇」

 

きそちゃんは何となく冷たかった

 

いや、落ち込んでいるのだろうか⁇

 

多分、それを変えられるのは一人しかいない

 

「そうね…貴方にプレゼントがあるの」

 

「プレゼント⁇」

 

「そうよ」

 

格納庫のシャッターが開き、私達は中に入った

 

「うはぁ〜」

 

格納庫の中には、見た事のない形状をした新型戦闘機が、新しいパイロットをそこで待っていた

 

「スッゴイ綺麗だね」

 

「XFA-001。コードネーム、グリフォンよ」

 

黒いボディで、主翼は前進翼、その滑らかな形状からも分かる様に、大型のステルス機である

 

「グリフォンはフィリップをベースに造られた新型の戦闘機なのよ⁇」

 

「ほへぇ〜」

 

「特殊兵装があるわ。チョット待ってて」

 

私は手近にいた工兵に特殊兵装の一覧を貰い、きそちゃんの所に戻って来た

 

「コックピットの両脇にMSWを取り付けてあるの。これはヘラと同じ扱いだから、すぐ慣れるわ」

 

「凄いや‼︎MSWがあるなんて‼︎」

 

ようやくきそちゃんの目に輝きが戻った

 

私はそんなきそちゃんを見て、すこしだけ微笑む

 

「それと、機銃は二種類。散弾機銃と、標準可能な速射機銃の二種類よ⁇」

 

「うはぁ〜‼︎凄い凄い‼︎僕にくれるの⁉︎」

 

はしゃぐきそちゃんを見て、私は言ってみたい事を言ってみた

 

「そうよ。お母さんからのプレゼント‼︎」

 

「えへへ…お母さんかぁ…」

 

良かった。満更でも無さそうだ

 

「あっ、そうそう。きそちゃんだけでも勿論飛ばせるけど、パイロットが必要でしょ⁇」

 

「あっ…うん…」

 

その事を言うと、きそちゃんの顔はまた暗くなってしまった

 

「ったく…お前はメソメソする子じゃねぇだろ⁇」

 

「へっ⁉︎」

 

きそちゃんが振り返ると、壁にもたれたレイがいた

 

「れっ…レイ…⁇」

 

「心配かけたなっ」

 

「…レイっ‼︎」

 

きそちゃんはレイに駆け寄り、ジャンプして抱き着く

 

「レイ…レイレイレイっ‼︎」

 

「待たせてすまん…」

 

きそちゃんはレイにスリスリしながら、満面の笑みを浮かべる

 

「心配しないで。次は僕が護ってあげるから‼︎」

 

「任せたぞ⁉︎俺にはこの子の扱いは皆目分からん」

 

「大丈夫。心配しないで‼︎」

 

きそちゃんはホント、レイに似て来たわね…

 

きそちゃんは相変わらず理解不能な原理でグリフォンのAIへと早変わりし、レイはグリフォンへと乗り込んだ

 

「何か運転出来そうな気がするな…」

 

《フィリップをベースにしてるから、内部も似てるんだよ》

 

「お前のAIの声を聴くのも久しぶりだな…」

 

《僕の声も、グリフォンの操縦もすぐ慣れるよっ‼︎さっ、帰ろう‼︎》

 

「…あぁ‼︎」

 

グリフォンは意気揚々とエンジンを吹かし、滑走路へと向かう

 

《お母さんが見てるよ》

 

「母さんが来てるのか⁉︎」

 

《違うよぉ‼︎ホラッ、左っ‼︎》

 

左を見ると、此方を見つめて小さく手を振っている横須賀が見えた

 

そんな横須賀を見て、急に愛おしくなった

 

「フィリ…」

 

《グリフォン‼︎》

 

「ぐ、グリフォン。チョットエンジン止めてくれ」

 

《何するの⁇》

 

グリフォンのエンジンを止めてキャノピーを開けると、自動でタラップが降りた

 

…便利だな

 

それは置いといて、俺はグリフォンから飛び降り、横須賀の元に走った

 

「なぁに⁇忘れ物⁇」

 

「あぁ。忘れ物だっ‼︎」

 

俺は横須賀を思い切り抱いた

 

「必ず帰って来る」

 

「んっ…行ってらっしゃい‼︎」

 

軽くキスをした後、俺はまたグリフォンに乗る

 

「すまん。待たせた‼︎」

 

《いいねぇ〜‼︎愛だねぇ〜‼︎》

 

いざ滑走路へと入った時、もう一度横須賀を見た

 

今度は大きく手を振っている

 

《アレなら心配ないね》

 

「ふっ…俺の愛した女だ。心配はない」

 

《ふふっ。じゃあ、帰ろうか‼︎》

 

「ワイバーン、発進‼︎」

 

グリフォンは綺麗に滑走路から空へと上がって行く

 

 

 

 

「行った行ったぁ‼︎」

 

「ヤッタヤッタァ‼︎」

 

表で工兵と深海の子が騒いでいる横で横須賀は、空へと飲まれて行くグリフォンが見えなくなるまで見つめていた

 

実はあのグリフォン、深海の子達の情報提供もあり、紆余曲折あってようやく完成させられた戦闘機なのだ

 

「ふぅっ‼︎行ったわね‼︎」

 

「寂しくないですか⁇」

 

いつの間にか居た明石は、心配半面、喜び半面で横須賀に話し掛けた

 

「何にも心配してないわ‼︎私の旦那よ⁉︎」

 

「あ、あはは‼︎そうですよね‼︎天下御免のマーカスさんですものね‼︎」

 

「ふふっ‼︎」

 

横須賀は微笑みながら執務室へと戻って行った…

 

 

 

 

 

 

「グリフォン」

 

《なぁに⁇》

 

「お前、いつから横須賀をお母さんと言い始めた⁇」

 

《えと…さっき⁇》

 

「そっか…」

 

グリフォンには感情パラメーターも装備されている

 

”照れ”

 

”喜び”

 

この二つが突出している

 

《レイ。みんな待ってるよ。特に姫が》

 

「引っ叩かれそうだな…」

 

基地に帰って来た

 

一週間チョット空けていただけなのに、随分昔に来た様な感じがする…

 

フィリップが格納されていた場所にグリフォンを停める

 

「帰って来たんだな…」

 

《改めておかえり、レイっ‼︎》

 

「ふっ…さっ、降りよう」

 

《うんっ‼︎》

 

自動で展開されるタラップを降りると、叢雲が迎えに来てくれた

 

「久しいわね」

 

「心配かけたな」

 

「犬の分際で主人に心配かけさせるとは…良い度胸ねぇ⁇」

 

「すまんすまん」

 

口ではそう言う叢雲だが、目に涙が浮かんでいる

 

「まっ、いいわ。それより双子の相手の方が大変だったわよ⁇」

 

「ありがとうな」

 

「感謝するなら、早く逢いに行ってあげなさい」

 

叢雲に言われた通りに、俺は皆が待っているであろう食堂へと足を向けた

 

「ホントは嬉しいんでしょ⁇」

 

「嬉しいに決まってるでしょ⁇主人は私よ⁇心配もするわ」

 

叢雲はホントはレイに逢いに行きたかったのだ

 

だが叢雲はレイに代わり、ここ最近ずっと哨戒任務を遂行していてくれたのだ

 

「行こう。僕お腹空いちゃったぁ‼︎」

 

「そうね」

 

きそは叢雲と共に、一足先に食堂に向かったレイに追い付いた

 

 

 

 

俺はいつも通りに食堂に入った

 

「ただいま〜」

 

「おかえりなさい‼︎お腹空いたでしょう⁇」

 

貴子さんが笑顔で迎えてくれる

 

「すてぃんぐれいおかえり‼︎」

 

たいほうが足に抱き着く

 

たいほうを抱き上げようとした瞬間、俺は誰かに抱き締められた

 

「おかえり、レイ…」

 

「ただいま…隊長…」

 

隊長だった

 

「あっ‼︎えいしゃん‼︎」

 

「えいしゃんら‼︎」

 

ひとみといよも来た

 

隊長は俺を離し、俺は双子とたいほうにくっ付かれる

 

双子は肩

 

そしてたいほうは勿論肩車

 

「オトンの好きな物用意したぞ」

 

グラーフが机の上に料理を置いて行く

 

…グラーフの中で俺はオトンで決まった様だ

 

「さぁ、食べよう‼︎」

 

「いただきます‼︎」

 

いつもの日常が帰って来た

 

横にはたいほう

 

反対を向けば照月

 

横須賀達との家族団欒も騒がしくて楽しかった

 

だが、俺はこの家族団欒も好きだ

 

この家族団欒は飽きる事はない…

 

俺は幸せ物だな…

 

再び帰って来た基地での家族団欒の中、俺は嫌と言う程の幸せを実感させられていた…

 

 

 

 

 

レイが記憶を取り戻しました‼︎




XFA-001 グリフォン…レイときその新しい機体

この作品では珍しい、完全架空機

フィリップの機能はそのままで、新しく産まれ変わった機体

深海の技術と人間の技術がふんだんに使われたハイブリッドな機体

そして何より、スカイラグーンや学校に続く深海との共同作業の結果でもある

ヘラと叢雲の専用装備であったMSWを二基装備し、機銃も用途に合わせ二対装備されている

重武装版のフィリップと考えれば早い

一番変わった所は、ボディをPシールドと同じ素材で造り上げている事

外見は随分変わってしまったが、堅牢な造りと高火力を持っている

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