艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、137話が終わりました

レイは記憶喪失になり、横須賀の所で暮らし始めます

レイと暮らし始めて、横須賀の抱いた感情とは…⁇


138話 貴方にもう一度惚れた日(1)

「ん〜…」

 

レイは明石の検査を受けていた

 

だが、何処にも異常は見当たらない

 

「とりあえず分かったのは、提督のド下手な射撃の所為で記憶喪失になったんじゃないって事です」

 

「それは良かったわ…」

 

ボーッとベッドの上で横になっているレイを見て、少しホッとする

 

「他に要因があるとすれば…余程ショックな事があったとか…」

 

「…あったわ。フィリップが身勝手な理由で爆破されたの」

 

「うぇ⁉︎フィリップがですか⁉︎」

 

「えぇ…多分それじゃないかしら…」

 

「もういいか⁇」

 

レイがベッドの上から此方を見つめている

 

「え…えぇ…構いませんよ」

 

レイはベッドから起き上がり、靴を履いて医務室から出ようとした

 

「あ、レイ。待って。私とお散歩しましょう⁇」

 

「アンタとか⁇」

 

「そうよ。好きな物食べていいわよ⁇」

 

「…なら、行こうかな⁇」

 

「うんっ、行きましょ」

 

私はレイの腕に自身の腕を絡ませ、繁華街に向かう事にした

 

外に出てしばらくすると、レイが話し掛けてきた

 

「アンタ、ホントに横須賀って名前か⁇」

 

「違うわ。ジェミニ・コレット。覚えておいて⁇」

 

私が名前を言うと、レイはクスリと笑った

 

「可愛い名だな」

 

「ふふっ、そうでしょ⁇」

 

「ジェミニさん…と、でも呼べばいいか⁇」

 

「ジェミニでいいわ⁇」

 

レイが笑う

 

まるで別人の様になってしまったレイを見て、私はもう一度、彼に恋をした…

 

 

 

 

繁華街に着くと、食べ物関連の店が沢山あった

 

「レイは何食べたい⁇」

 

「コレは何だ⁇」

 

レイの目線の先には、ずいずいずっころばしがある

 

「お寿司屋さんよ⁇レイは食べた事ない⁇」

 

「美味いのか⁇」

 

「美味しいわよ。入りましょ‼︎」

 

レイと腕を組んだまま、ずいずいずっころばしに入る

 

「いらっしゃいませ〜…って、提督⁉︎マーカスさん⁉︎」

 

「知り合いか⁇」

 

「ここいら一帯は私が管理してるのよ⁇」

 

「へぇ〜。ジェミニも大変なんだな…」

 

レイの口から労いの言葉が出るとは…

 

「レイさん、今日は照月ちゃんは⁇」

 

「てる…つき⁇」

 

「あああああ‼︎ずずず瑞鶴チョット‼︎」

 

私は瑞鶴を一旦奥へと向かわせた

 

数十秒後、私達は戻って来た

 

「れ、レイさん‼︎私は瑞鶴と言います‼︎」

 

「レイだ。宜しく」

 

「お任せコースでお願い。あ、きゅうりは抜きね⁇」

 

「畏まりました‼︎」

 

瑞鶴がカウンターの向こうでお寿司を握り始める

 

私はレイの顔から目を離さず、お寿司が来ても、食べ始めても、ずっと眺めていた…

 

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「美味しかったでしょ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

レイは素直になり、少し子供っぽくなっているのに気が付いた

 

私はレイを連れて、食後の運動の為、海岸沿いを歩く事にした

 

「あの…明石って女だったか⁇」

 

「そうよ。なぁに⁇好きになった⁇」

 

「いや、指環をしてた。結婚してるのか⁇」

 

「そうよ〜」

 

「俺もよく似た物を持ってるんだ」

 

レイは私に首元を見せた

 

私が無理矢理レイに押し付けた指環が、ネックレスに繋がれている

 

「好きな人が居たの⁇」

 

「分からない…でも、きっと素敵な人だと思う」

 

「どうしてそう思うの⁇」

 

「何となく分かるんだ。俺は記憶を無くしても、コレだけは持ってた。だから、よっぽど魅力的な人だ」

 

「逢えるといいわね…その人に」

 

「うんっ‼︎」

 

レイは嬉しそうに指環を握り締める

 

私は幸せそうな彼の笑顔を見て、そっと左手を隠した…

 

 

 

 

 

「さぁっ、そろそろお家に帰りましょ⁇娘が待ってるわ‼︎」

 

「結婚してるのか⁉︎」

 

「そうよ〜。娘が二人いるの。双子ちゃんよ⁇」

 

「俺、ジェミニの家に行っていいのか⁇」

 

「いいわよ。って言っても、ココだけどね⁇」

 

ドアを開けると、オモチャが散乱した部屋が出て来た

 

「こりゃあ〜‼︎お片付けしなさい‼︎」

 

「あっ‼︎オトンだ‼︎」

 

「おかえりお父さん‼︎」

 

磯風と朝霜にとってレイは勿論お父さん

 

レイを見るなり、二人はすぐにレイにくっ付く

 

正直な所、子供達のお陰で記憶が戻る事を期待している

 

「ジェ、ジェミニ‼︎」

 

「コラコラ。先にお片付けでしょ〜⁇」

 

磯風も朝霜もブーブー言いながらも片付けを始めた

 

「仲、良さそうだな」

 

「お転婆も良い所よ。もぅ…」

 

「違う」

 

レイを見ると、顎で何かを差している

 

その先には、レイと撮った写真が飾られている

 

「俺とソックリだ」

 

「そうね…」

 

…思い出さないのね

 

「片付けたぞ‼︎」

 

「ごはんは食べた⁇」

 

「うんっ‼︎おばあちゃんが作ってくれたぜ‼︎」

 

「お風呂は⁇」

 

「お風呂も入ったぞ‼︎」

 

「ならもうネンネしなさい。お母さんはもうちょっとお仕事するから」

 

「お父さんもするのか⁇」

 

二人はジーッとレイを見つめる

 

「そうよ。大事なお話があるの。今日はおばあちゃんの所でネンネしなさい⁇」

 

「分かった。オトン、また今度いーちゃんとネンネしような」

 

「おやすみ〜」

 

子供達二人が出て行くと、私はため息を吐いた

 

「俺の事を父親と勘違いしてる…」

 

「子供は嫌い⁇」

 

「嫌いじゃない‼︎…苦手なだけだ」

 

「なら、勘違いついでにあの子達で慣れてみる⁇きっと楽しいわよ⁇」

 

「出来る…かな⁇」

 

「貴方ならきっと出来るわ‼︎」

 

「なら、頑張ってみる」

 

「そうこなくっちゃ‼︎ふぁ…」

 

ため息の次はアクビが出る

 

「今日は寝ましょうか」

 

「俺は何処で寝ればいい⁇」

 

「来て」

 

私は隣の自室に案内し、そこにレイを寝かせた

 

「ジェミニは仕事があるのか⁇」

 

「ううん。今日はもうおしまい」

 

「…どっか行くのか⁇」

 

レイが寂しそうな目で見てくる

 

元々一緒に寝るつもりだったが、その目を見て決心は固まった

 

「一緒に寝ましょう⁇私を抱っこしてもいいわよ⁇」

 

「そうするよ」

 

電気を消し、レイの隣で横になる

 

「…ホントにいいのか⁇」

 

「しないなら私がするわよ⁇」

 

「ん…」

 

レイは私を抱き寄せ、胸板に頭を置いた

 

抱き寄せ方は変わらないのね…

 

「ジェミニ…その…胸が…」

 

「当ててるのよ」

 

「そ、そっか…」

 

胸が当たる位で照れるレイを見るのは初めてだ

 

「ジェミニ」

 

「ん…」

 

「旦那はどんな人なんだ⁇」

 

「そうね…バカでマヌケでどうしようもないアホよ」

 

「はは。散々な言われ様だな」

 

「でも、いつも私を助けてくれる、とっても優しい人よ…」

 

「良い奴じゃないか。じゃあ、一緒に寝ちゃダメだな…」

 

レイは私と寝る事がイケない事と思ったのか、布団から出ようとした

 

「いいの‼︎」

 

「でも…」

 

「貴方が嫌でも、私は傍にいるわ…」

 

「分かった」

 

レイは素直に布団に戻って来た

 

私はレイを抱き締め、顔を胸板に埋める

 

「…しばらくこうさせて⁇」

 

「あぁ…いいよ…」

 

そう言ってレイは私の頭を撫でて来た

 

撫で方も変わらないのね…


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