艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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135話 双子の記憶(5)

「なぁ…隊長…」

 

「皆まで言うな…」

 

二人共、頭の中に考えているのは一緒だ

 

「「帰りの足が無い‼︎」」

 

「言うと思ったわ‼︎」

 

声のした方を振り返ると、何故か腕を組んだ横須賀がいた

 

「お前、何でここに⁉︎」

 

「お嬢に頼まれたのよ。あの二人は海に疎いから、帰りの足まで考えて無いって。やっぱりじゃない‼︎」

 

「すまん…」

 

「言う通りだ…海には疎い」

 

「…何かいっぱい突っ込みたいけど…まぁいいわ。帰りましょう」

 

きくづきが停泊していた真裏側の港に着水していた二式大艇に乗り込み、俺達は帰路に着いた

 

俺は相変わらず操縦席に座る

 

だが、今日は副操縦席には横須賀がいる

 

しばらくコイツに運転を任せよう

 

「ちょっと任したぞ」

 

「なぁにそれ」

 

「これか⁇アンポンタンのお前には分からん代物さ」

 

「何よその言い方‼︎振り落とすわよ⁇」

 

俺はシートベルトを外し、横須賀の後ろに立った

 

「はいはい、前見て。お口閉じて。右手は操縦桿、左手は添える」

 

「アンタ教官⁇」

 

「ちゃんと運転しなきゃこいつはすぐに煙吹くんだよ‼︎」

 

忘れちゃいけない秋津洲謹製

 

「舌噛むぞ。お口は閉じて、ちゃんと前だけ見てろ」

 

「わ、分かってるわよ‼︎アンタに言われなく…」

 

横須賀が小煩い時はキスして口を閉ざすに限る

 

「任せたからな」

 

「あ…うん…」

 

顔が真っ赤になった横須賀を見て、再び操縦席に座る

 

横須賀は基地に着くまで終始黙ったまま、上手に二式大艇を操縦していた…

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな…」

 

基地に着き、工廠にこもって手記を読んでいた

 

ひとみといよが三人の名前を覚えていたのは、当時カプセルの中に入っていた二人にかなりの頻度で話しかけていたからだ

 

そして、二人の特性も理解出来た

 

セイレーン・システム…

 

これは艦娘を戦場に出して使うのでは無く、きくづきの様なイージス艦に乗せ、同期して使うのが主な方法だ

 

ひとみは音響反射による索敵

 

何キロも先の敵の弱点が手に取る様に分かると書いてある

 

ひとみの特性により、きくづきの様なプレーンなイージス艦でもダメージを与えられたのだ

 

そしていよ

 

いよはひとみと同期し、一番打撃を与えられる武器を選択し、攻撃する

 

この手記によれば、いよは速射砲を好んで使っていた様だ

 

それとあと一つ

 

あのいよの行動だ

 

急に指をさすあの行動

 

あれはひとみと同期した位置データの方角を合わせていたのだ

 

指差しをする条件は二つ

 

・敵のいる方角を指差す

 

これは一度報告をしに来るらしい

 

・味方の接近

 

報告しない場合もあるが、報告の無い場合は緊急では無いので放置してよし

 

そう書いてある

 

ちゃんとコミュニケーションを取れば、危険では無いとようやく確証が得られた

 

取り越し苦労で良かった…

 

俺は手記を厳重な箱に入れ、タバコに火を点けた…

 

 

 

 

 

「マーカス君はどんどん成長していますね」

 

「えぇ、シスター…」


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