艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

431 / 1086
135話 双子の記憶(3)

「何故あの双子が…」

 

「セイレーン・システム⁇」

 

「「あっ‼︎」」

 

二人の声に気付き、ひとみといよは俺の肩から飛び降りた

 

「きよましゃ‼︎」

 

「いっき‼︎」

 

どうやら二人は、呉さんとイカさんの事を覚えている様子で、飛び付こうと助走をつける

 

が、当の二人はジリジリと後退している

 

「そ、それ以上寄るんじゃない”セイレーン”‼︎頼むから言う事を聞いてくれ‼︎」

 

「”シレーヌ”‼︎来るんじゃない‼︎」

 

「き〜よ〜ま〜しゃ〜‼︎」

 

「い〜っ〜き〜‼︎」

 

ひとみといよが二人に飛び掛かる

 

呉さんとイカさんの時間がスローモーションになる

 

「う〜わ〜‼︎」

 

「や〜め〜ろ〜‼︎」

 

「えいっ‼︎」

 

「え〜い‼︎」

 

二人は無事、呉さんとイカさんにくっ付いた

 

「や、やめろ‼︎オシッコチビるから‼︎」

 

「シレーヌ‼︎離れな…ん⁇」

 

何かに気付いたイカさんは、お腹にくっ付いたひとみを抱き上げてみた

 

「…シレーヌ。君は本当にシレーヌなのか⁇」

 

「ひとみ」

 

「今はひとみと言うのか⁇」

 

「ひとみ」

 

ひとみは先程から、自分を”シレーヌ”と言うイカさんに、少し怒っている

 

「ひ〜」

 

「きよましゃ、やっぱりへたれ‼︎」

 

「やめてくれぇ〜」

 

頭を抱えてうずくまる呉さんを見て、いよは煽る様に背中に乗ってベッタリする

 

「二人を知ってるのか⁇」

 

「えぇ。詳しい事は中で話した方が良さそうです…」

 

「セイレーン‼︎頼むから離れてくれ‼︎」

 

「いや〜っ‼︎きよましゃへたれだもん‼︎」

 

「うぅっ…」

 

いよは呉さんのビビる姿が面白いのか、ずっと彼の傍に居る

 

「いよ、ごはん食べるか⁇」

 

「たべる‼︎」

 

俺が哺乳瓶をチラつかせると、いよはすぐに食らいつき、呉さんの背中から離れた

 

「んっ、ひとみもたべる〜」

 

「あ…あぁ…」

 

イカさんの手元で、ひとみが哺乳瓶を欲しそうに手を伸ばしている

 

「ほらっ」

 

ひとみはイカさんに抱かれた状態のまま哺乳瓶を持ち、中身を飲み始めた

 

「セイレーン・システムを手懐けたのか⁇」

 

声のする方を見ると、美しい銀髪を後頭部で大きなリボンで括った少女がいた

 

手には大きめの熊のぬいぐるみを抱いている

 

「来い。おと…提督が呼んでいる」

 

銀髪の少女に着いて行き、俺達は誰も居ない執務室に来た

 

「そこに掛けてくれ」

 

言われるがまま、四人はソファに腰掛けた

 

「客人は執務室に案内しておいた。今日は熊で話さない方が良い客人だ」

 

銀髪の少女が熊のぬいぐるみに話し掛けると、熊のぬいぐるみに付けられたリボンから声がした

 

《分かった。すぐに行くよ》

 

「腹痛が収まってからでいい。おと…提督の知り合いもいる」

 

《分かった。すぐに…あ°っ‼︎》

 

「はぁ…」

 

銀髪の少女はため息を吐き、ここの提督が座るであろう、高級な椅子に腰掛けた

 

「君がウィリアム大佐、彼はマーカス大尉だな。私は菊月だ」

 

「よろしくな」

 

「よく知ってるな⁇」

 

「横須賀の学校で教わった。それに、君達二人の勇姿はこの目で見た事がある」

 

「出撃の時にでも見たか⁇」

 

「いや…おと…提督は、私を出撃させた事は無い。私が見た事があるのは、反抗作戦の時だ」

 

俺と隊長が固まる

 

菊月は俺達を見た事があると言ったが、俺達は見た事は無い

 

「まっ、あの時と今では姿形が全く違うからな」

 

「…どう言う意味だ⁇」

 

隊長は気付いていないみたいだが、何となく分かった

 

「聞きたい事が二つある」

 

「なんだ⁇」

 

俺は太ももにヒジをつき、菊月の方を見た

 

「当時の乗組員が言っている、セイレーンとシレーヌのシステムについて教えてくれ」

 

「それは”お父さん”が来てからの方がわかるだろう」

 

(今さりげなくお父さんって言った‼︎)

 

(キツめの子だと思っていたが、見間違いだった様だな…)

 

(提督をお父さんと呼ぶのか…)

 

(照月ちゃんに呼ばれたい…)

 

それぞれが少し違う事を思う中、俺はもう一つの質問をした


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。