艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名は変わりますが、前回の続きです


134話 子供達の選ぶモノ

メットを脱ぎ、椅子に座る

 

「レイさん。お疲れ様でした」

 

「やっぱお前か」

 

俺にお茶を差し出したのは、景雲レディもとい翔鶴だった

 

「最近出掛けるのが多いと思ってたら、こんな事してたのか」

 

「パパさんは私が居なくても立派に操縦を出来るお方です。私、ちょっと手持ち無沙汰になっちゃって…それで、パパさんに許可を得て、こうして社会でお仕事をしています」

 

「アルバイトじゃあんま稼げんだろ⁇」

 

「あぁ、いえ。お給金はそこそこ頂いています。今度も撮影と握手会がありますので」

 

「撮影って…」

 

「ふふふっ、私っ、本物の景雲レディですよっ‼︎」

 

「マジかよ‼︎」

 

今思えば、景雲レディだけやたら備品が立派だと思った

 

最近出掛けるのは多いとは思ってはいたが、まさか女優になっていたとは…

 

「翔子ちゃ〜ん‼︎」

 

「顔見せて〜‼︎」

 

外から大きいお友達が、翔鶴らしき名前を呼んでいる

 

「何か呼ばれてるぞ⁇」

 

「ふふっ。行ってきますね」

 

翔鶴がテントから出てすぐ、俺はスーツを脱ぎ始めた

 

怪人役の二人もスーツを脱ぎ始め、中の人が明らかになる

 

「アレン‼︎健吾‼︎」

 

出て来たのはラバウルの二人だった

 

オタクネコからはアレン

 

ニートイカからは健吾が出て来た

 

「レイの嫁に頼まれてな。子供の夢は壊せない」

 

「爆破するとは聞いてましたが…結構熱かったです」

 

「ホンットすまん…」

 

「気にすんな。結構楽しかったぞ⁇」

 

「機会があればまたやりましょうよ‼︎」

 

「PAPA‼︎健吾‼︎」

 

「うわっ‼︎アイちゃん‼︎」

 

いきなりテントに入って来たアイちゃんに、二人は背後から首元に手を回された

 

「IOWA、橘花マン大好き‼︎」

 

アイちゃんは体は大きくなったが、知能は相変わらずだ

 

甘えん坊な所とか、イタズラ好きな所は未だに治っていない

 

「えいしゃん‼︎」

 

「えいしゃんいた‼︎」

 

ひとみといよも来た

 

グラーフに繕って貰ったのか、お揃いの灰色のワンピースを着ている

 

二人はたいほう並に器用に俺に登り、指定席である両肩に乗る

 

「えいしゃんきっかまん⁉︎」

 

「きっかまんえいしゃん⁉︎」

 

この二人は勘が鋭い

 

顔や頭をペチペチされるが、小さいのでダメージが無いどころか心地良い位だ

 

「橘花マンはもうお家に帰ったぞ⁇」

 

「ざんねん‼︎」

 

「ざんねん‼︎」

 

二人も橘花マンが好きな様だ

 

「隊長は何処にいる⁇」

 

「おそとにいる‼︎」

 

「すぐそこ‼︎」

 

二人はテントの外を指差している

 

「Oh‼︎ソックリなDouble Babyね‼︎」

 

アイちゃんが二人に気付く

 

「だぁれ⁇」

 

「がいじんさん⁇」

 

「この人はIOWA。アイちゃんって呼ばれてる」

 

「よろしくね‼︎」

 

「いよ‼︎」

 

「ひとみ‼︎」

 

二人共一言で自己紹介を終わらせる

 

「あっちの金髪の人はアレンさん。こっちの人は健吾さんだ」

 

「あいしゃん」

 

「あれんしゃん」

 

「けんごしゃん」

 

「えいしゃん」

 

「覚えるのが一杯だなっ。さっ、お買い物行こうか‼︎みんな、今日はありがとうな‼︎」

 

「あぁ‼︎また飲もうな‼︎」

 

「またスカイラグーンで‼︎」

 

「Bye-Bye‼︎」

 

三人に別れを告げ、テントから出た

 

「お疲れさん」

 

「すてぃんぐれいどこにいたの⁇」

 

頭にたいほうを乗せた隊長と子供達が待ってくれていた

 

「すまんすまん。お仕事だったんだ。良い子ちゃんにしてたか⁇」

 

「うん…」

 

何故かたいほうの元気が無い

 

「レイと見たかったんだと」

 

「そっかそっか‼︎次は一緒に見ような⁇」

 

「うん…」

 

何となくたいほうの元気が無い理由が分かった

 

ひとみといよが来てからたいほうは遠慮しているのか、特等席である俺の頭に中々乗らないでいた

 

ホントは今日も乗りたかったのだろう

 

「えいしゃん、いよ、ぱぱのところいく‼︎」

 

「ひとみもいく‼︎」

 

二人はまた器用に肩から降り、隊長の足元にくっ付いた

 

「たいほう、レイの所に行くか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「そらっ‼︎」

 

隊長からたいほうを受け取り、いつも通りの特等席に座る

 

「たいほうのとくとうせき」

 

「そうだぞ。そこはたいほうだけの席だ‼︎」

 

たいほうはニコニコしている

 

「あっ‼︎橘花マンのスーツだぁ〜‼︎美味しそぉ〜‼︎」

 

いつの間にか照月が足元におり、俺のズボンを掴みながら橘花マンのスーツを見ている

 

「照月‼︎ステーキ食べるか⁉︎」

 

「うんっ‼︎ステーキ食べる‼︎」

 

照月の空腹は、放っておくと壁を削って食べてしまうレベルだ

 

橘花マンのスーツも、あっと言う間に胃の中だろう

 

しっかりと照月の手を握り、下の階に降りた…

 

 

 

 

「ふふっ…マーカス君、随分成長したのねぇ⁇」

 

「アレン君も立派な父親になっています」

 

誰にも気が付かれない、会場の端っこで、二人の女性が望遠鏡越しに微笑んでいた…

 

 

 

 

 

「じゃあ貴子さん、照月を頼みます」

 

「分かったわ。照月ちゃん、私とステーキ食べようね⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

照月を貴子さんに任せ、おもちゃ売り場に来た

 

「さぁっ‼︎好きなモン選べよ‼︎」

 

おもちゃ売り場に着くなり、蜘蛛の子散らす様に、それぞれ思い思いの場所に向かう

 

俺は片手にカゴを持ち、たいほうと一緒におもちゃ売り場をまわり始めた

 

「たいほうは何にする⁇」

 

「あれ‼︎」

 

たいほうが指差す先には、ケースに所狭しと詰められた恐竜のオモチャがあった

 

「これでいいのか⁇もうちょい高いモンでもいいぞ⁇」

 

「いっぱいはいってるのがいい」

 

基地にも恐竜のオモチャはあるのだが、たいほうからすれば少し大きいのかもしれない

 

今手に持っているケースに詰められた恐竜達は、一つ一つが小さく、その分数が多い

 

「よしっ‼︎じゃあたいほうはこれな⁉︎」

 

「うんっ‼︎すてぃんぐれいありがとう‼︎」

 

ケース詰め恐竜ミニフィギュアセット…500円

 

「えいしゃん、いよこれにする‼︎」

 

「ひとみはこれ‼︎」

 

ひとみといよは、塗り絵と色鉛筆のセットをカゴに入れる

 

塗り絵、色鉛筆セット×2…300円×2

 

「僕はこれにしようかな⁇」

 

「私はこれ」

 

れーべとまっくすは、何かの知育玩具を入れた

 

はじめてのシュネッケン…3000円

 

ひとりでつくるミニレープクーヘン…3000円

 

「レイ。私オモチャじゃなくてもいい⁇」

 

そう言ったのは霞だ

 

「あぁ。本とかにするか⁇」

 

「これにするわ」

 

霞は包丁やコテをはじめ、調理に必要な道具のセットを入れた

 

子供用調理器具セット…2500円

 

「しおいこれにする‼︎」

 

「入れろ入れろ‼︎」

 

水棲生物飼育キット(小)…1500円

 

「お父さん。磯風にも買ってくれるのか⁇」

 

饒舌になった磯風が、後ろ手に何かを隠しながら此方に来た

 

「おぅ。好きなん持って来い‼︎」

 

「これにするぞ‼︎」

 

「よし、いいだろう‼︎これは横須賀に運んで貰おうな⁇」

 

「うぬ‼︎」

 

限定一品‼︎大パノラマ‼︎どうぶつファミリー巨大セット…150000円

 

「レイさん。私はこれを」

 

「私もこれを‼︎」

 

はまかぜと秋月もカゴに何かを入れた

 

コーンフレークメーカー…2000円

 

たのしい吹き矢…500円

 

大体の子供がオモチャを持って来る中、四人が持って来ない

 

「きそはどうした⁇たいほう、見えるか⁇」

 

俺より目線が高い位置にいるたいほうに三人を探して貰う

 

「ん〜と…あっ‼︎あっち‼︎あさしももいる‼︎」

 

「よし、ちょい様子を見に行こう」

 

おもちゃ売り場を出て、電子機器売り場に来た

 

「ん〜…このケーブルはいるでしょ〜…あっ、コネクターもいるね」

 

「CPUの解析スピードをあげるアタッチメント造るのは〜…おっ‼︎これだこれだ‼︎」

 

俺にしか分からない専門用語を話しながら、二人は小さなカゴにパーツを入れる

 

「決まったか⁇」

 

「あっ、うん‼︎決まった‼︎これにする‼︎」

 

「アタイはこれだな‼︎」

 

きそは数本のケーブル

 

朝霜はアタッチメントをメインに、後は細かいパーツを小さなカゴに入れている

 

「それ持ってレジ行くぞ」

 

「え…全部買ってくれんのか⁉︎」

 

「言っただろ。今日は何でも買ってやるって」

 

「でも…このアタッチメント高いぜ⁇」

 

「空軍は嘘をつかん。行くぞ」

 

「あ…」

 

「行こう‼︎レイの言ってる事はホントだよ‼︎」

 

「あ…あぁ‼︎」

 

朝霜は母である横須賀から教わっていた

 

空軍は嘘をつかないから、朝霜も磯風もレイの子だから嘘ついちゃダメだ、と

 

…お母さんは頻繁に嘘ついたり、すぐ物忘れするのになぁ

 

CPU直列式AI移動ケーブル…5000円

 

CPU読取加速アタッチメント…10000円

 

次ははっちゃんだ

 

「マーカス様。はっちゃんはこれが欲しいです」

 

はっちゃんの手には、叩き売りされたであろう数冊纏められ、紐で縛られた本達が抱えられていた

 

10冊まとめ叩き売り本…1000円

 

「叢雲。お前はどうする⁇」

 

「私は…そうね。これにするわ」

 

叢雲は近くにあったウサギのマスコットを手に取り、カゴに入れた

 

「それでいいのか⁉︎」

 

「いいわ。犬も大変そうだしね」

 

ウサギ文鎮…200円

 

だが、俺は忘れていた…

 

大ボスの存在を…

 

レジに行き、オモチャやパーツが沢山入ったカゴを置く

 

「お兄ちゃん‼︎照月これにする‼︎」

 

照月はカゴの横に何かの箱を置いた

 

「これでいいのか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

照月が置いたのは超合金ロボだ

 

照月はお小遣いで自分で買ったり、こうして人に買って貰った超合金ロボは、並べて大切に保存している

 

大切にしてくれるからこそ、買い甲斐がある

 

超合金ケッタマン…5000円

 

さぁ、いざ会計だと思っていた時、誰かがソ〜っとカゴに何かを入れようとするのが見えた

 

レジの女性が”それ”のバーコードを読み取る

 

20万円⁉︎

 

金額を見て、後ろを振り返る

 

「何よ」

 

「お前なぁ…」

 

カゴに何かを入れたのは横須賀だ

 

「買ってくれなきゃ、ここで寝転んで駄々こねるわよ⁇」

 

「…まぁいい。今日だけだぞ」

 

「やったわ‼︎」

 

ホームシアター引き換え券…200000円

 

これを買う事によって、横須賀の怠惰に加速がかかる気がする…

 

買った物をカートに乗せ、おもちゃ売り場を後にする

 

「さっ、帰ろうか」

 

帰りは橘花ではなく、二式大艇に乗る

 

「あっ‼︎レイさんかも‼︎」

 

「チェンジ‼︎」

 

「了解かも‼︎」

 

操縦席にいた秋津洲を副操縦席に移動させ、全員が乗り込むまでエンジンを温める

 

「ごめんなさい‼︎遅れました‼︎」

 

最後に乗ったのは翔鶴だ

 

翔鶴は迷わず隊長の横に座る

 

「サイン会でもしてたのか⁇」

 

「はい、パパさん。ご名答ですっ‼︎」

 

左には、満腹で眠っているが、腕はガッチリホールドした貴子さん

 

貴子さんの膝の上には、口を開けて寝ている照月がいる

 

右には腕を抱いた翔鶴

 

隊長…隊長もモテてるじゃねぇか

 

「発進するから掴まってろよ‼︎」

 

「宙返りはするなよ‼︎」

 

「分かってらい‼︎」

 

乗っていた人間のほとんどから笑い声が上がり、二式大艇は基地へと飛び立った…




橘花マン…子供向け特撮ヒーロー

土曜の朝から放送している特撮の主人公

シンプルな攻撃、シンプルなストーリーなため、子供達にも分かりやすい

主人公は善人だが、言ってる事が悪人じみているのが玉に傷

北 光太郎というのは、橘花マンの中の人で、実はもう出て来ているが、本人は隠している




景雲レディ…橘花マンの相棒

白髪の女性が変身する、橘花マンのサポート役

橘花マンの武器を造っているのは彼女

抜群なプロポーションなため、やられ役と思えば、橘花マン以上に怪人を滅多打ちにする

今回のショーには、本人役である”景浦翔子”が特別ゲストとして、本物のスーツを着て現れた

大きいお友達のオカズになる事が多い




景浦翔子…翔鶴の芸名

もっと外の世界を見たかった翔子が選んだ職業

本当はアルバイトでもしたかったのだが、橘花マンの中の人が紹介してくれたため、今の仕事をしている

因みに彼女に手を出すと、誰であろうと督戦隊にオシッコチビる位追い掛け回される

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