艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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133話 辿り着いた先(4)

「お疲れさん」

 

「腹減った〜」

 

「今日は私が作ったんだ」

 

「マジか‼︎」

 

「駆逐艦三銃士がハマチをくれたんだ。丼にするか⁇それとも刺身にするか⁇」

 

「丼で‼︎」

 

隊長は厨房に立ち、今しばらくハマチを捌く

 

「今日の事の後処理は私達に任せてちょうだい」

 

「任せたぞ」

 

「さっ、出来たぞ」

 

隊長の作る魚料理はいつもどれも美味そうだ

 

目の前に置かれたハマチの海鮮丼も、他の魚も乗ってて美味そうだ

 

「いただきます‼︎」

 

「はっちゃんもな」

 

「美味しそうです。いただきます」

 

はっちゃんもお腹が空いていたのか、海鮮丼にがっつく

 

「あっ、そうそう‼︎レイ。明日、タウイタウイモールでヒーローショーがあるんだけど…知ってる⁇」

 

「橘花マンだったか⁇」

 

「そうそう」

 

「明日、子供達連れて行くんだ。丁度いいな‼︎見せてやろう‼︎」

 

いや、よく考えろ…

 

横須賀が子供向けのヒーローショーの話をする訳がない‼︎

 

こいつは…金絡みだ‼︎

 

そう一瞬思って1秒もしない内に、横須賀は机の上に書類を置いた

 

「…お前、まさか」

 

「橘花マン、やってくれない⁇いや、やって⁇やりなさい‼︎」

 

「一晩で覚えろってか⁉︎」

 

「大丈夫よ‼︎今の所、橘花マンブレードと橘花マンショットしか必殺技無いから‼︎」

 

「そういう問題じゃねぇ‼︎」

 

「そう…やってくれないの…磯風が楽しみにしてるのに…残念」

 

「うっ…」

 

こいつ…自分の子供を盾にする気か‼︎

 

「マーカス様。後ではっちゃんと少しだけ練習しましょう」

 

「分かった…」

 

「さっすがレイ‼︎じゃっ、私は帰るわ‼︎明日、タウイタウイモールでね‼︎じゃあね〜」

 

横須賀はスキップしながら基地を後にした

 

「アレが妻とかもう…」

 

「頼んだぞ橘花マン‼︎たいほうも見てるぞ‼︎」

 

「はっちゃんも見てます。ジーッって」

 

アホみたいにプレッシャーがかかる

 

下手すりゃその辺の楽な作戦より緊張している

 

「さぁ、マーカス様。はっちゃんと練習しましょう」

 

「んっ。ごちそうさま」

 

「ごちそうさまです」

 

「頑張れよ」

 

俺とはっちゃんは部屋に戻り、少しだけ橘花マンのポージングや必殺技の練習をする

 

まずは登場シーン

 

右の拳をガッツポーズの様にし、左手は腰に当てる

 

「俺は音速の申し子‼︎橘花マン‼︎子供を連れていくとは…ゆ''る''さ''ん''‼︎この橘花マンが相手だ‼︎」

 

次は戦闘シーン

 

最初は打撃だ

 

「フハハハハ‼︎この橘花マンの前に立ち塞がる野蛮な輩は死‼︎あるのみ‼︎」

 

ここからが重要

 

必殺技だ

 

「喰らぇい‼︎この橘花マンブレードを‼︎」

 

「天に滅せい‼︎橘花マンショットォ‼︎」

 

「上出来です‼︎」

 

「これ本当にヒーローか⁉︎言ってる事ほぼ悪者だぞ⁉︎」

 

この橘花マン、主人公のセリフが悪役じみている

 

だが、動画を見ている限り、必殺技はカッコいい

 

「悪者っぽいヒーローも世の中には居ます。ホラ、叢雲様だって、口と行動が丸っきり逆です」

 

「言われてみれば…」

 

「これ位出来れば上出来です。はっちゃん、楽しみにしてますね⁇」

 

「任せろ‼︎」

 

電気を消し、ベッドに入る

 

約束通り、今日ははっちゃんと一緒に寝る

 

「…マーカス様」

 

「ん⁇」

 

「今日、はっちゃんおっぱいを揉まれました」

 

「嫌だったろ⁇済まなかったな…」

 

「とても嫌な気分になりました。マーカス様も、はっちゃんの事、エッチぃ目で見てますか⁇」

 

はっちゃんは上目遣いで俺を見詰めている

 

「大丈夫だ。俺には横須賀がいる」

 

「そうですか…はっちゃんのこのボディは、マーカス様の好みに合わせて造って頂いたのですが…」

 

「じゃあ見てる‼︎はっちゃんはエロいなぁ‼︎」

 

「マーカス様は変態ですね」

 

はっちゃんは俺の手を掴み、発育の良い胸に置いた

 

「聞こえますか…はっちゃん、マーカス様といるといつもこうです」

 

「生きてる音だな」

 

「はっちゃんがアイリスだった時も、こんな感じになっていました」

 

「これは”ドキドキ”だ」

 

「ドキ、ドキ⁇」

 

はっちゃんは物知りに見えて、まだ自分の感情を完璧に理解しきれていない

 

今日の一件だってそうだ

 

はっちゃんは自分の怒りを理解出来ず、一歩間違えれば人を殺めていた

 

これは癖になると危ない

 

「そう。人は好きな人といる時、ドキドキするんだ」

 

「なら、はっちゃんはちゃんとマーカス様が好きなのですね⁇」

 

「そうじゃ無きゃ困る」

 

「ふふっ、はっちゃん、嬉しいです。ちゃんとマーカス様を好きになれて」

 

「さっ、もうネンネしよう。明日は橘花マンだぞ⁇」

 

「はいっ、マーカス様っ」

 

はっちゃんを腹の上に乗せ、ようやく1日が終わった…


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