艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、132話が終わりました

話数と題名は変わりますが、前回の続きです

はっちゃんとしおいは、双子の潜水艦の情報を得る為、とある場所を訪れます


133話 辿り着いた先(1)

「しおい。ちゃんと着いて来てますか⁇」

 

「はっちゃん速い〜‼︎待って〜‼︎」

 

基地の人が暴れん坊に苦戦している間、はっちゃん達は大湊を目指していた

 

はっちゃん達はレイに頼まれ、あの二人の情報を秘密裏に得ようとしていた

 

「むっ。アレは…」

 

航路の途中、不審な船を見かけた

 

はっちゃんは大湊に無線を入れる

 

「こちら”エイト・ガール”大湊、応答して下さい」

 

《此方大湊棚町。エイト・ガール、どうかしましたか⁇》

 

「現時刻、この海域に船舶の航行許可は私達以外にありますか⁇」

 

《ちょっと待って下さい…いや、無いです。船舶が見当たりますか⁇》

 

「黒い船がいま…」

 

はっちゃんは目の前の船が獲っていたものを見て、無線を付けたまま不審な船舶へと向かって行った

 

《エイト・ガール⁇エイト・ガール、応答せよ‼︎》

 

「あの船…鯨を獲ってます‼︎」

 

《拿捕出来ますか⁇》

 

「しおい。無線を渡します。大湊から沿岸警備隊を寄越す様に言って下さい。ユーハブ」

 

「あ、あいはぶ‼︎」

 

はっちゃんはたまにレイ達が使っている用語を口にする

 

はっちゃんもしおいも、そんな彼等の傍に居るので理解出来る

 

無線をしおいに渡した後、はっちゃんは一度海上に顔を出した

 

「鯨を獲ってはいけません‼︎」

 

不審船の乗組員は皆銃を持っており、はっちゃんを見ると訳の分からない外国語を話し始めた

 

「はっちゃんには丸聞こえです。鯨を獲るのはいけない事です。放しなさい」

 

はっちゃんは説得するが、乗組員ははっちゃんに銃口を向け、引き金を引いた

 

「そうですか…なるほど。それが答えですか…残念です」

 

はっちゃんは海に潜り、飛んで来た銃弾を全て避け、魚雷を一本取り出し、スクリューに噛ませた

 

不審船は動かなくなり、はっちゃんはその隙に船体の下腹部に潜り、適当な場所を掴んだ

 

「これでも喰らえ‼︎」

 

はっちゃんは船体を思い切り揺さぶり始めた

 

乗組員がボトボトと海上に落ちて行く

 

そして、捕らわれていた鯨も海上に落ちた

 

「はっちゃん‼︎沿岸警備隊が来たよ‼︎」

 

「よしっ。そろそろ許してあげます」

 

はっちゃんは船体から手を離し、海上に上がった

 

「ぷはー‼︎沿岸警備隊さん、後はお願いしますね」

 

「了解しました‼︎御協力、感謝致します‼︎」

 

「さっ、鯨さん。海へおかえり」

 

はっちゃんとしおいはしばらく鯨と一緒に泳いだ後、再び大湊へと向かい始めた

 

 

 

 

「さぁ、着きましたね」

 

「疲れた〜」

 

「はっちゃん、しおいちゃん、お疲れ様‼︎お手柄だったね‼︎」

 

棚町さんが迎えに来てくれた

 

「この事は海上保安庁に報告しておくよ」

 

「違法な船は何処の国であっても、はっちゃんが沈めます」

 

はっちゃんの目は本気だ

 

「ふふっ。さっ、お腹空いたろ⁇シュトーレンもあるよ」

 

「はっちゃんシュトーレン好きです‼︎」

 

「しおいも行く‼︎」

 

棚町さんに案内され、二人は食堂に来た

 

「うんっ‼︎とっても美味しいです‼︎」

 

「あっま〜い‼︎」

 

シュトーレンを堪能しながら、はっちゃんは本題に入った

 

「はっちゃん、棚町さんに聞きたい事があります」

 

「あの双子の事だね…」

 

「えぇ。大湊のガンビア・ベイⅡの艦長さんが二人を知っていました」

 

「私も少ししか知らないんだけど…それで力になるなら喜んで教えるよ」

 

「お願いします」

 

「フルーツ入ってる‼︎美味し〜い‼︎」

 

はっちゃんが真面目に話を聞く横で、しおいはシュトーレンの魅力に取り憑かれていた

 

「あの二人を乗せて、反攻作戦に向かったイージス艦は知ってるね⁇」

 

「きくづきと書いてありました」

 

「そのきくづきの艦長…実は提督をしているんだ」

 

「提督さんですか⁇」

 

「確か、呉の提督の上官だったハズ…名前は一軸さんだ」

 

「基地の場所は⁇」

 

「座標のデータを送った方が早いだろう。送るよ。一軸さんは戦争に反対してる人だ。これからもこの座標は必要になるからね」

 

「お願いします」

 

「あなた。先程の不審船の乗組員が来ましたよ」

 

食堂に入って来た一人の女性に対し、はっちゃんは睨みを効かせる

 

「はっちゃん⁇」

 

「貴方はマーカス様の元お嫁さんですね⁇」

 

「えっ⁇えぇ、そうですけど…」

 

「そうですか…なるほど…」

 

はっちゃんはそう言って鹿島から棚町さんに視線を戻した

 

「よしっ‼︎座標を送ったよ。どうする⁇もしこれから行くなら送って行くけど…」

 

「いえ、これ以上手を煩わせる訳に…」

 

いざいざ話が終わろうとした時、先程の不審船の乗組員が鹿島を後ろから羽交い締めにし、人質に取った

 

「貴様、何のつもりだ」

 

棚町さんが言った言葉に、その男性ははっちゃん以外には分からない外国語を言い放った

 

「お前らも人質だ。この女の命が惜しけりゃ手を挙げろ、ですって」

 

「…」

 

棚町さんはゆっくりと手を挙げた

 

しおいもシュトーレンを食べていた手を挙げるが、口はモゴモゴしている

 

そしてはっちゃんは一度手を背中にやってから手を挙げた

 

 

 

 

「はっちゃんおそいー」

 

「そおいもおそいー」

 

基地では、俺の膝の上でひとみといよが二人の帰りを待っていた

 

《エイト・ガールから救難信号を受信しました。位置を確認します》

 

「はぁっ⁉︎マジかよ‼︎」

 

「レイ、行くよ‼︎」

 

きそが先に工廠に向かう

 

「あ…あぁ。隊長、二人を頼む‼︎」

 

「よし。何かあったらすぐに応援に行く‼︎」

 

ひとみといよを隊長に預け、工廠で準備をする

 

「レイ早く‼︎」

 

「すぐ行く‼︎」

 

ピストルとライフルを持ち、フィリップに乗る

 

「ワイバーン、発進‼︎」

 

とりあえず空に上がる

 

座標データを待っている暇はなかった

 

《座標データ確認。大湊だ‼︎》

 

「大湊へ急げ。近付いて来たら基地一体をスキャンしろ」

 

《了解‼︎》

 

フルスロットルで大湊へ飛ぶ

 

《レイ。こんな時に言うのも何だけど、鹿島と会う事になるよ⁇》

 

「ホンット、こんな時に言うのも何だけどだな。命には変えられんさ」

 

《レイらしいね》

 

「スキャンは出来たか⁇」

 

《アンノウン反応が多数あるね。大湊の兵が向かってるけど、棚町さん達が人質になってるから、みんな手出し出来ない状態になってる》

 

「裏口は⁇」

 

《う〜ん…あっ、物資の搬入口なら何とかなりそう》

 

「オーケー、そこから行こう」

 

フィリップを着陸させ、きそと共に身を屈めながら移動する

 

「レイ。なるべく銃火器は使わずに、はっちゃん達のいる場所に行こう。発砲は最終手段だ」

 

「オーケ…」

 

オーケーと言おうとした時、二階に銃を携えた男が見えた

 

「うわ‼︎」

 

何を思ったのか、きそはその男に対して発砲した

 

「おまっ‼︎」

 

かなり大きな音が鳴り、俺はきその口を抑えて物影に隠れた

 

「…何やってんだ‼︎」

 

「…ごめん」

 

きそが手にしているマウザーは麻酔弾が入っているので、殺さずに済んだが、音が鳴った事に違いはない

 

「いいか⁇レーダーの反応は二階にある。なるべく打撃で潰す。分かったか⁇」

 

「分かった」

 

コソコソと動きながら、搬入口から大湊の基地へと入る


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