艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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131話 新兵器”保護”(3)

「でだ。こんな迷惑をかけて言える立場じゃないが、運んで欲しい物があるんだ…」

 

「はっ‼︎マーカス大尉の仰る事ならば‼︎」

 

「来てくれ」

 

艦長と共に、先程の場所に戻る

 

「コレだ」

 

「これは…艦娘、ですか⁇」

 

「恐らくはそうだろうな…生命反応があるから、ウチで保護したい」

 

「了解しました。迅速に対応します」

 

「頼んだ」

 

ガンビアの乗組員は二つのカプセルを運び、貨物室にそれを置いた

 

「マーカス大尉、貴方はどうされますか⁇」

 

「俺はブラックボックスの解析をしたいから、もう少し此処に残るよ」

 

「かしこまりました。カプセルは基地に運搬しておきます」

 

艦長がガンビアに戻ろうとした時、はっちゃんが俺の服の裾を握り、無言で頷いた

 

「あぁ、ちょい待ってくれ‼︎照月のお目付け役にこいつを」

 

それを聞いた艦長は、ピンと張っていた肩の力を抜いた

 

「助かります。実は、もう食料庫が…」

 

「…横須賀から補給艦を出させる」

 

「ではマーカス様、はっちゃんは行きますね」

 

「はっちゃん。次はちゃんとデートしような⁇」

 

「…はいっ‼︎マーカス様‼︎」

 

はっちゃんは笑顔で俺を見た

 

ガンビアははっちゃんを乗せた後、基地に向かった

 

「さてと…」

 

問題はあと一つだ

 

「レイ、フィリップで見てみる⁇」

 

「そうだな。ちょっとでも良いから、解析して帰りたい」

 

俺達は重いブラックボックスを持ち、フィリップの所に戻って来た

 

「よいしょ…」

 

きそに機材を繋いで貰い、軽くではあるが、解析を進め始めた

 

「ん〜…全然分かんないね…」

 

「いや、一個だけ分かる。コレだ」

 

文字や数字の配列の中に航路を示す数値と日にちが打たれていた

 

「あのイージス艦は反攻作戦に参加していた船だ」

 

「これだけじゃ分かんないよぉ…」

 

「やっぱ持って帰るか」

 

「そうだね。帰ったら機材もあるしね‼︎」

 

ブラックボックスをフィリップに乗せ、基地に帰る事にした

 

 

 

 

帰るや否や、俺ときそは早速ブラックボックスの解析を進め始めた

 

解析している最中ガンビアが基地に着き、二本のカプセルと照月、そしてはっちゃんが帰って来た

 

夕ご飯を食べたり、休憩を挟んだりしながら、ブラックボックスの解析は進んで行く

 

「よし来た‼︎」

 

タバコを咥えながら解析結果を見る

 

「やっぱりな…」

 

思った通り、あのイージス艦は反攻作戦に参加している

 

反攻作戦中に敵艦載機から急降下爆撃を受け、それが致命弾になり、艦を捨てて避難したのも間違い無い様だ

 

残る問題は、あのカプセルの中の二人…

 

その答えは、ブラックボックスにもキチンと残っていた

 

それは、音声データに残っていた

 

《此方イージス艦”きくづき”‼︎敵艦載機の爆撃命中により航行不能‼︎》

 

《総員退艦‼︎”新兵器”は放棄‼︎》

 

「新兵器だと…」

 

振り返り、カプセルを見る

 

下手すればたいほうより小さい少女が、カプセルの中で眠っている

 

俺は悩んだ

 

また、たいほうと同じ過ちを繰り返してしまうのでは無いのか…と

 

それに、ブラックボックスにも残されていた様に、二人は得体の知れない新兵器だ

 

万が一の事もある

 

…どうすればいい

 

「小さい子ね」

 

「叢雲⁉︎いつからいた‼︎」

 

いつの間にか背後に叢雲がいた

 

「なぁに⁇珍しく悩んでる訳⁇」

 

「どうすればいいか分からないんだ…もしかすると、手に負えない子かも知れない」

 

「私やたいほうちゃんは助けて、あの赤ん坊を助けないのは犬の理に反するのじゃないの⁇」

 

叢雲は俺の背中押しをしてくれるが、決心は変わらず鈍る

 

「…分かったわ。ならこうしましょうか」

 

叢雲がMSWを起動させる

 

標的はカプセルの中だ

 

カプセルごと破壊する気だ‼︎

 

「ファイアコントロール外す事位、犬をからかうより楽よ⁇」

 

「やめろ‼︎命に変わりはない‼︎」

 

俺は咄嗟に叢雲とカプセルの間に割って入った

 

「犬が悩む位なら…私が破壊してあげるわ‼︎」

 

「分かった‼︎分かったよ…」

 

「きそ‼︎」

 

「オーケー‼︎」

 

きそはカプセルに繋げていた装置を弄り始めたと同時に、叢雲はMSWの電源を落とした

 

どうやらきそと叢雲は手を組んで、俺を説得させたかった様だ

 

「心配無いわ。もしその二人が本当に危険な兵器だったなら…私が責任を持って始末してあげる」

 

「そこまで言うなら大丈夫だろ」

 

そうこうしている内に、カプセルから二人の赤ん坊が出て来た

 

「あ〜…」

 

「う〜…」

 

ハイハイをしながら、赤ん坊は辺りをウロウロしている

 

「よいしょ…」

 

「う〜」

 

片方を抱き上げると、しっかりと俺の目を見つめて来た

 

こうして見ると本当に赤ん坊の様だ

 

あ〜とかう〜しか話さない

 

「うはは‼︎コロコロしてるね‼︎」

 

もう片方の子はきそが抱き上げて、頬を人差し指でツンツンしている

 

「私にも抱かせなさい」

 

「はいっ」

 

きそから赤ん坊を受け取り、叢雲はぎこちない笑顔を見せる

 

「中々可愛いじゃないの」

 

「よし。お前の名前は”ひとみ”だ」

 

「ひとみ〜⁇何かババ臭くない⁇」

 

「ファーファー言ってるババアみたいな名前ねぇ」

 

「この名前でいいんだ。こいつ、ずっと俺の目を見てる」

 

腕に抱かれたひとみと名付けられた赤ん坊は、抱かれてから以降、ずっと俺の目を見ていた

 

吸い込まれそうな綺麗な目をしている

 

「じゃあこの子は”いよ”にしよう‼︎」

 

「いよ⁇」

 

「うんっ‼︎伊予柑みたいにコロコロしてるから‼︎」

 

「…まぁ良いだろ」

 

その内、この子達も名前の良さにも気付いてくれるだろう

 

ひとみといよを抱きながら、食堂に戻って来た

 

「レイも盛んだな」

 

「たっ、隊長‼︎」

 

俺の手元を見るなり、隊長が冗談を言う

 

「抱かせてくれるか⁇」

 

「あぁ。よいしょ…」

 

隊長にひとみを抱かせると、ひとみは変わらず抱いた人の目をジッと見つめる

 

「可愛いな」

 

「私にも抱かせて」

 

ひとみは隊長から貴子さんの手に移る

 

「きそ、私にも抱っこさせて下さい」

 

「はい‼︎」

 

母さんはいよを抱っこする

 

貴子さんと言い、母さんと言い、赤ん坊を抱き慣れている

 

子育てには不安は無さそうだ…

 

俺は一抹の不安を抱きながら、この二人を受け入れる事を決意した…

 

 

 

 

 

伊13”ひとみ”、伊14”いよ”を保護しました‼︎




伊13”ひとみ”…謎の艦娘

座礁したイージス艦”きくづき”の中で眠っていた新兵器

どんな効力があるかは謎だが、強力な効果があるとブラックボックスに残されていた

赤ちゃんなので言葉は話せないが、”う〜”と言っているのはこっちの方

抱いた人の目を見つめるのでこの名前が付いた

別にこの名前だからって、ファーファー言う訳ではない




伊14”いよ”…謎の艦娘

ひとみと同じく、イージス艦”きくづき”の中で眠っていた新兵器

ひとみが”う〜”と言葉を出せるなら、”あ〜”と言ってるのはこっちの方

コロコロしているので、きそが伊予柑みたいだと言い、この名前が付いた



二人共、次回にも登場する

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