艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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14話 孔雀の誘い(2)

「違わい‼︎たいほうは⁇」

 

「ここにいるぞ」

 

武蔵の足元に、隠れて見え無かったたいほうがいた

 

「ワーオ‼︎ちっちゃいデース‼︎」

 

「こんごうちゃんだ‼︎」

 

金剛はたいほうを抱き上げ、そのまま抱きかかえた

 

「タイホーちゃんは、私のファンデスか⁉︎」

 

「いえーす‼︎」

 

「ベリーベリーキュートネー‼︎テートクゥ、タイホーちゃんを私に下サイ‼︎」

 

「ダメだ‼︎たいほうは私の子だ‼︎」

 

言い放ったのは武蔵だった

 

「まぁまぁ、今日位はいいじゃないか」

 

「ちゃんと返すのだぞ‼︎」

 

「オッケーデース‼︎タイホーちゃん‼︎行きますヨ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

金剛とたいほうは、人混みの中に消えていった

 

「あれ⁇はまかぜとチェルシーは⁇」

 

「二人で出かけたぞ」

 

「そっか…はまかぜなら任せても大丈夫だろ。行こう」

 

「私とか⁇」

 

「当たり前だ。ほら」

 

私が手を差し伸べると、武蔵は恐る恐る手を絡めて来た

 

「何食べたい⁇」

 

「こ、こ、この…フラフラフランクフルトを食べたい…」

 

挙動不振になっている武蔵の指差す先には、金髪の女性がフランクフルトを焼いている出店があった

 

香ばしくて美味しそうな良い匂いが食欲をそそる

 

「本場ドイツのウィンナーよ‼︎美味しさと品質は保証するわ‼︎」

 

「おおおお美味しそうだな」

 

随分緊張しているな…

 

「いつもと変わらないだろ⁇」

 

「あ、いや…その、ほら…あの…」

 

アタフタする武蔵を見るのは初めてで、どこか初々しい

 

いつもの凛々しさは、一体何処へやら…

 

「はい」

 

「ありがとう…」

 

武蔵は美味しそうにフランクフルトを口にした

 

「ん、美味いな」

 

「もっと食えよ。今日は仕事を忘れろ」

 

「…うんっ‼︎」

 

今日の武蔵はいつもと違い、少し幼く見える

 

「この…”はんばぁがぁ”は、美味しいのか⁇」

 

「美味しいわよ。これはドイツじゃなくて”あめりか”の食べ物よ」

 

「それ二つ」

 

二人の手元に、はんばぁがぁが置かれた

 

「トマト、レタス。そしてこの肉。パンと相性が良いな」

 

武蔵は食べカスは口周りにいっぱい付けて、はんばぁがぁを美味しそうに胃に落としていく

 

「さ、行こう」

 

「ちょっと待て。これはなんだ」

 

「一回お願いします」

 

「五回投げるっぽい」

 

手渡された輪を、とりあえず一つ投げてみた

 

輪は小さなぬいぐるみに入った

 

「ぜかましぬいぐるみをあげるっぽい」

 

「これは、景品に入れば貰えるのか⁇」

 

「そう。”わなげ”って言うんだ」

 

残りの輪を全て武蔵に渡し、横で眺める事にした

 

「せいっ‼︎」

 

第一射‼︎

 

多分、狙っているのは銃弾のペンダント

 

だが、無情にも輪は弾かれ、別の景品に入った

 

「ぜかましぬいぐるみをあげるっぽい」

 

「せいっ‼︎」

 

第二射‼︎

 

今度は上手く行きそうだ

 

だが、まっすぐペンダントに向かっていた輪は、無情にも突然の風で軌道が変わり、別の景品に入った

 

「ぜかましぬいぐるみをあげるっぽい」

 

「ぐぬぬ…次だ‼︎」

 

第三射‼︎

 

これは貰っただろう

 

綺麗にペンダントに輪が収まった…かに見えた

 

回転力が強かった輪は、一度入ったにも関わらず、横にあった景品に軌道が変わり、そのまま入った

 

「ぜかましぬいぐるみをあげるっぽい」

 

「…提督よ、頼む。徹甲弾のペンダントが欲しい」

 

武蔵は四体のぜかましぬいぐるみ抱え、輪を私に託した

 

「それっ」

 

弱々しく飛んだ輪は、ペンダントに向かって飛んで行き、しっかりと輪の中に収まった

 

「徹甲弾のペンダントをあげるっぽい。一番の目玉商品っぽい」

 

「ほら」

 

「…ありがとう‼︎大事にする‼︎」

 

嬉しそうに徹甲弾のペンダントを付けた

 

武蔵は本当に楽しそうだ

 

きっと、今までたいほうが甘えていた分が、急に爆発したのだろう

 

景品を抱えて、とても御満悦な顔をしている

 

「今日はありがとう、提督」

 

「楽しいか⁇」

 

「…いつか、こんな日が続く未来が来るといいな」

 

「そうだな…」

 

「私はこのぜかましぬいぐるみを置いて、少し休んで来る。本当にありがとう」


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