艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

400 / 1086
126話 星を旅する鯨(2)

《きっと、マーカス様の思い描く形に近いモノになります。もし、マーカス様の思い描く形でなくても、私を愛して頂けますか⁇》

 

アイリスの人間味溢れる心配事を聞き、俺は安心してアイリスの入っているパソコンをポンポンと叩いた

 

「心配するな。アイリス」

 

《了解です。私は、マーカス様の”心配するな”と言う言葉に安心を覚えます》

 

「その感情、忘れるなよ」

 

後はきそに任せよう

 

と言うか、この分野はもうきそに任せた方が良いかも知れない

 

俺は建造装置の土台は組み立てたが、扱うのはきその方が格段に上手い

 

俺は精々、誰かの延命策か臓器の生成位しか出来なかったが、きそは新しい生命を産み出した

 

だから、翔鶴と叢雲はきそに逆らえない

 

 

 

食堂に戻ると、たいほうと照月が絵本を読んでいた

 

「すてぃんぐれいよんで⁇」

 

「よしよし、おいで」

 

ソファに座り、二人を脇に置き、絵本を読み始めた…

 

 

 

 

《きそ様》

 

「ん⁇もう少しで出来るよ⁇」

 

工廠では、きそが慣れた手つきでアイリスのボディを建造していた

 

《私には夢があります》

 

「夢⁇」

 

《マーカス様は私を造った時、色んな本を読み聞かせて下さいました》

 

「本か…レイは本好きだよね」

 

《私は一度だけ、マーカス様に読んで頂いた本に出てくる生き物を見た事があります。それをもう一度見るのが夢です》

 

「どんなお話⁇」

 

《クジラのお話です。とても…大きなクジラです》

 

「どんなお話か覚えてる⁇」

 

《えぇ。覚えています》

 

「体を持ったら、そのお話聞かせてくれる⁇」

 

《勿論です》

 

「よしっ‼︎出来たよ‼︎」

 

きそはアイリスの入っているパソコンの前にケーブルを持って来た

 

「繋げていい⁇」

 

《お願いします》

 

きそはケーブルをパソコンに繋げた

 

「痛くないから心配しないで⁇」

 

《マーカス様と同じですね》

 

「アイリスもその内言われる様になるよ」

 

きそは装置を起動した

 

数秒後、カプセルの中から一人の少女が出て来た

 

「きそ様…私は一体…」

 

「おはよう。僕の事はきそちゃんで良いよ⁇」

 

「あ…えと…きそちゃん」

 

少女は躊躇いながらきその名を言った

 

「ふふっ…あっ、本も一緒だね‼︎」

 

少女はきそに本の表紙を見せた

 

「これには、今までマーカス様に読み聞かせて頂いた本の内容が書かれています。私の…大切な宝物です」

 

「じゃあ、みんなに挨拶に行こうか‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

 

 

 

 

「くじら‼︎」

 

絵本にはクジラの絵が描かれていた

 

「たいほうも照月も見た事あるか⁇」

 

「ない‼︎おっきい⁇」

 

「照月もない‼︎」

 

「と〜っても大っきいんだぞ⁉︎」

 

「ママよりおっきい⁉︎」

 

「あぁ。貴子さんより大きい」

 

たいほうの中で”デカい”や”大きい”イコール貴子さんの様だ

 

「まっ…マーカス様‼︎」

 

絵本を読む手が止まる

 

「ふっ…おはよう、アイリス‼︎」

 

「おはよう…ございます。マーカス様‼︎」

 

少女は俺の脇に座っている二人の間に飛び込み、俺に抱き着いた

 

「ずっと逢いたかった…」

 

「私もです、マーカス様…」

 

まるで何年も離れ離れになっていた恋人の様に、俺はボディを持ったアイリスを抱き締めた

 

「すてぃんぐれいのおともだち⁇」

 

「そっ。ほら、時々フィリップの中にいただろう⁇」

 

「すっごいオッパイだよ⁉︎」

 

「マーカス様の趣味嗜好を意識した結果、このボディになりました」

 

「ははは。そっかそっか‼︎」

 

ボディを持ったアイリスは、身長はきそ位なのにアンバランスな程胸が大きい

 

それに、ほんの少しツリ目で、赤いメガネを掛けている

 

髪は金髪で、おさげ髪っぽくしてある

 

「そうだレイ。名前がまだ無いんだ」

 

「出なかったのか⁇」

 

「うん…翔鶴と叢雲の時は出たんだけど、アイリスは候補が多過ぎて決まらなかったんだ…」

 

「そうだなぁ…」

 

俺はふと、彼女が持っていた本に目が行った

 

「その本好きか⁇」

 

「マーカス様に初めて読んで頂いた本です」

 

持っていた本の名は

 

”Star Journey Whale”

 

”星を旅する鯨”と言う本だ

 

ステラと言う名も、アイリスと言う名も、この本に登場するキャラクターから来ている

 

「無限の可能性がある世界を旅する物語だったな⁇」

 

「はい。私の名前も出てきます」

 

「無限の可能性…無限ねぇ…」

 

ほんの少し考える

 

そしてすぐに出て来た

 

「ハチ…ハチにしよう‼︎」

 

「ハチ…ですか⁇」

 

「そっ。ハチの名は無限の可能性を秘めてる名前だ。数字で書いてご覧⁇」

 

「はい‼︎」

 

たいほうが紙とクレヨンをハチに渡した

 

「はち…こうですか⁇」

 

ハチは紙に数字で8を書いた

 

「横にしてご覧」

 

「横に…インフィニティになりました。はっ‼︎」

 

ハチの手元の紙には、∞と書かれている

 

「はっちゃん⁇」

 

「はいっ。はっちゃんです‼︎」

 

すぐにたいほうがアダ名を付け、ハチは”はっちゃん”と呼ばれる事になった

 

「おっ。新しい子か⁇」

 

「はいっ。ハチと申します。はっちゃんとお呼び下さいね⁇ウィリアム様」

 

「ほほぅ⁇アイリスか⁇」

 

「…バレました」

 

はっちゃんは恥ずかしそうに本で顔を隠している

 

「隊長には敵わないさっ」

 

「これから宜しくな、はっちゃん」

 

「此方こそ宜しくお願いします」

 

はっちゃんは隊長に笑顔を送った…

 

 

 

 

 

 

潜水空母”伊8”が艦隊に加わります‼︎




伊8…スーパーはっちゃん

レイの造り出したAI”アイリス”がボディを持った姿

巨乳で低身長、ほんの少しだけツリ目なのは、自分の創造者であるレイの好みを意識している為

レイに初めて読んで貰った

”Star Journey Whale”

通称”星を旅する鯨”と言う本を常に脇に抱えているが、海に行く時はちゃんと置いていく

近くにある電子機器を触らずに動かせる能力と、電子機器を探し出す感知機能を持っている

電子機器を動かしている時はボーッとし、感知機能を発動している時はメガネが光っているので大体分かる





”Star Journey Whale”…はっちゃんの宝物

はっちゃんが常に脇に抱えている本

実は本では無く、本と同じ様に、まるで本物の本の様にめくれるタブレット

はっちゃんがアイリスの時の情報がコレに詰まっている

乱暴な扱いをしても壊れず、万が一はっちゃんがこの本を失くしたとしても、はっちゃんの感知機能ですぐに発見出来る

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。