艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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クリスマス特別編後編

後編も二話用意します

今回のお話は、トラックさんクリスマスのお話です


クリスマス特別編 隣の笑顔

基地に戻り、子供達は準備を始める

 

トラックさんが美味しい料理とデザートを作ってくれているので、皆そこへ向かう

 

「レイさん。ケーキには色々な種類があると聞きました」

 

「あんま食った事ないか⁇」

 

「秋月姉、ケーキ知らないの?」

 

「間宮で食べたのは知ってるけど…」

 

「照月が教えてあげる‼︎だから秋月姉も食べよう‼︎ケーキ美味しいよぉ〜‼︎」

 

「うんっ。では、行って参ります‼︎」

 

「ちゃんとお礼言うんだぞ〜‼︎プリンツ、お礼の品は持ったな⁇」

 

「任せて‼︎ちゃんと渡してくる‼︎」

 

子供達と引率の為のプリンツは高速艇に乗り、トラック基地へと向かって行った

 

「兄さんは準備ね⁇」

 

「そっ。レイ、子供達が帰って来たら、お風呂入れて寝かせてくれるか⁇」

 

隊長は居住区の子達の誘いを受けている為、今からプレゼント渡すついでに居住区に向かう

 

「オッケー。んじゃ、俺はお先に頂きますだな」

 

俺は一応、昼間横須賀とケーキを食べて軽くデートはしたので、夕方は手すきになっている

 

「兄さんの分はちょっと置いておくわね。帰って来たら貴子さんと食べてね⁇」

 

「グラーフはミハイルとご飯行くの。行って来ます」

 

グラーフはミハイルとの食事の為、スペンサーに乗り、スカイラグーンに向かった

 

「私も食べる」

 

珍しく雲龍が起きて来た

 

雲龍は普段夜に基地周りの哨戒飛行の為の航空機を飛ばしてくれている為、この時間帯に起きるのは珍しい

 

「んじゃ、頂きま〜す‼︎」

 

数分して気がつく

 

今日はたいほうが横にいない

 

照月の暴食を気にかける必要も無い

 

子供達が一斉に去ると、案外寂しいものだな…

 

 

 

 

 

トラック基地では、反対派の基地の子供達がこぞって集まり、クリスマスを満喫していた

 

「秋月姉、これがモンブランだよ‼︎」

 

「モン…ブラン⁇」

 

「栗のケーキなんだぜ⁉︎ま、話すより食ってみな‼︎」

 

「頂きます…」

 

秋月はフォークでモンブランを切り、口に入れた

 

「美味しい‼︎」

 

「だろ⁉︎提督のモンブランはスッゲェ美味しいんだぜ‼︎」

 

「照月はこれ食べる‼︎」

 

照月が持って来たのは、四角いバケツにミチミチに入ったティラミス

 

既に隅っこの方が消えている

 

「あんまり食べ過ぎちゃダメよ⁉︎分かった⁉︎」

 

「秋月姉も食べたら良いんだよ〜‼︎」

 

「たいほうはちきん‼︎」

 

「山風はフルーツのケーキ」

 

「IOWAもチキン‼︎」

 

みるみる内にケーキや食べ物が無くなって行く

 

「衣笠‼︎材料まだあるかい⁉︎」

 

「大丈夫‼︎もう何個かは作れるよ‼︎」

 

「飛龍‼︎チキンの在庫は⁉︎」

 

「もうちょっとしかありません‼︎」

 

厨房では、衣笠と飛龍とトラックさんがドタバタと動き回る

 

衣笠とトラックさんはケーキ

 

飛龍はチキン

 

蒼龍は子供達を食べる恐れがあるので、別室で同じ物を食べている

 

トラックさんは本当は蒼龍にも同じ場所で楽しんで欲しかったのだが、蒼龍は一人でゆっくり食べたいと言ったので、今回そうさせて貰ったのだ

 

「提督‼︎材料が切れました‼︎」

 

「チキンも終わりです‼︎」

 

「よし。我々も…」

 

「ごちそうさま‼︎」

 

「照月も食べた‼︎」

 

机の上にあれ程あったケーキやチキンが綺麗さっぱり無くなっている

 

「…無くなっちゃいましたね」

 

「あらら…」

 

残念そうな顔をする二人の横で、トラックさんは嬉しそうな顔をしている

 

「いや。パティシエ冥利に尽きるよ。これだけ綺麗に食べて、しかも美味しいと言われれば、私は充分だ‼︎よしっ‼︎今日はもうおしまいだけど、また作ってあげようね‼︎」

 

「やったね‼︎」

 

「照月も楽しみ〜‼︎」

 

「ケーキ、堪能しました」

 

子供達からお礼を言われ、更に笑顔になる

 

「トラックさん‼︎これ、レイとパパからのクリスマスプレゼントです‼︎」

 

「これはお父さんから」

 

「ラバウル一同からよ‼︎」

 

子供達がトラックさんにプレゼントを渡す

 

中にはそれぞれの基地からのプレゼントが入っている

 

パパとレイからは特殊に調合されたプロテイン

 

呉さんからは腰に巻いて振動するマシン

 

ラバウル一同からはバーベル

 

そして横須賀からは金

 

どうやら仲間内から、トラックさんは筋肉野郎と思われている様だ

 

トラックさんは嬉しかった

 

今までパティシエとして、この季節は人を喜ばせる立場にあったのが、今日は逆になっている

 

「ありがとう。大切にするよ」

 

「さぁっ、もう暗いから帰りましょう‼︎トラックさん、ありがとうございました‼︎」

 

子供達一同「ごちそうさまでした」と一礼し、トラックさん達は礼を返した

 

 

 

 

子供達が去り、トラックさんは片付けに入る

 

が、余りにも綺麗に食べられている為、少し皿洗いをする位しかなかった

 

「ちょっと執務室で一服してくる。良いかな⁇」

 

「私達も少し休憩します…ふぅ」

 

トラックさんは厨房を出て、執務室の椅子に座り、煙草に火を点けた

 

トラックさんには、一つだけ悩みがあった

 

それは、今手に持っている箱の中身だ

 

中を見ては閉め、箱の開閉音だけが執務室に響く

 

「はいっ」

 

一人悩んでいると、机の上にケーキが置かれた

 

「三人分取ってあったの。一緒に食べよ⁇」

 

「ありがとう。頂こうか」

 

持って来たのは、その悩みの種だった

 

実はトラックさん、彼女が好きなのだ

 

だが、自分がもし彼女と繋がる事になれば、私は再婚

 

そんな私を、彼女を許してくれるだろうか…

 

「子供達、楽しそうでしたね⁇」

 

「良かったよ。子供達のあの顔を見ると、私も生きていて良かったと思える」

 

「提督オジンみたい‼︎」

 

彼女は笑う

 

トラックさんも、そんな彼女を見てクスリと笑う

 

彼女のいる所に、いつも笑顔がある

 

「提督、私からのプレゼント‼︎」

 

彼女は脇に抱えていた紙袋をトラックさんに渡した

 

「開けていいかな⁇」

 

「うんっ‼︎似合うと思うよ‼︎」

 

紙袋を開けると、マフラーと帽子が出て来た

 

「これから寒くなるからね。まっ、提督は筋肉あるからいっか‼︎」

 

「…」

 

トラックさんはポケットに入っていた箱に手を掛けた

 

「私からもプレゼントがあるんだ」

 

「へぇ〜‼︎何々⁉︎」

 

トラックさんは無言でその箱を彼女に渡した

 

「あ…」

 

あれだけはしゃいでいた彼女の動きが止まる

 

「私は再婚になる。それでもいいなら、受け取って欲しい」

 

「提督…」

 

「嫌なら別のを…」

 

「ううん…お受けします‼︎」

 

トラックさんも、彼女も顔が明るくなる

 

「これ、私が一番最初⁇」

 

「そう」

 

「二個目は誰に⁉︎」

 

「う、う〜ん…」

 

いきなり答えにくい質問をされ、トラックさんはまた悩む

 

「嘘嘘‼︎冗談冗談‼︎私、誰に渡したって恨まないよ‼︎」

 

トラックさんが指輪を渡したのは衣笠だ

 

彼女は今まで飛龍と共に秘書艦を勤めてくれていた

 

最後の最後まで飛龍と彼女で悩んだが、トラックさんにとって、隣にいて欲しいのは衣笠だった

 

「提督…」

 

「んっ」

 

軽く口付けを交わし、二人は抱き合う…

 

その様子を、執務室のドアの隙間から誰かが見ていた…


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