艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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クリスマス特別編 二人の逆サンタ(2)

「美味しいわね‼︎」

 

「あんまり食うと太るぞ⁇」

 

「いいのよ。どうせ胸に行くんだし〜」

 

俺と横須賀はケーキバイキング伊勢に来ていた

 

今日はクリスマスとあって、店内は繁盛している

 

「レイ。今日はありがとう」

 

「こっちこそ」

 

最近、横須賀は二人きりになると素直になる時がある

 

ずっとこうなら助かるんだけどな…

 

「あら、照月とたいほうちゃん」

 

「げっ‼︎」

 

窓の外で照月とたいほうが袋を引き摺りながら歩いている

 

問題はそこじゃない

 

隣にいる奴だ

 

「トラックさんに連絡しろ‼︎俺は隊長に連絡する‼︎」

 

「分かったわ‼︎」

 

横須賀が固まる中、俺は隊長に無線を繋いだ

 

「隊長‼︎俺だ‼︎コードイルミネートドラゴン‼︎イルミネートドラゴンだ‼︎」

 

《了解した。場所は⁇》

 

「横須賀だ‼︎たいほうもいる‼︎」

 

《了解した。急行する》

 

 

 

コードイルミネートドラゴン…

 

簡単な話、照月と蒼龍が出くわしてしまった際の緊急ミッションコードである

 

早急に手を打ちたいが、相手は照月と蒼龍である

 

なので、万全な対処をしないと死人が出てしまうので、こうして召集を発令するコードである

 

 

 

 

20分後…

 

《横須賀に着いた。二人の現在位置は⁇》

 

「貯蔵庫に向かってる…現在隠密行動中」

 

「申し訳ありません…江風も連れて来ました」

 

「助かるよ‼︎」

 

トラックさんも隊長も着き、現場の指揮者は整った

 

「すまねぇ…蒼龍の姉貴が…」

 

「心配すんな。何とかする」

 

物の陰に隠れながら、五人はジリジリと距離を詰めて行く…

 

とにかく、まずはたいほうの奪還だ

 

「レイ。これを使え」

 

隊長から投げられたのは、長方形の箱だ

 

”オリバー印のミルクビスケット”

 

筋肉ムキムキのコックの絵が描かれた、たいほうの好きなビスケットだ

 

”これを食べれば強くなれる‼︎”と書いてある

 

「たいほう…たいほう…」

 

「ん⁇」

 

小声でたいほうを呼ぶと、すぐに反応した

 

「し〜…」

 

口元に人差し指を置き、手招きすると、たいほうは此方に寄って来た

 

「…たいほうにびすけっとくれるの⁇」

 

「これやるから静かにな…」

 

「…わかった」

 

たいほうは確保出来た

 

問題は照月だ

 

「レイ、たいほうと一緒に横須賀の執務室に避難するんだ」

 

「オーケー」

 

「横須賀、二人に着いて行け」

 

たいほうを抱え、コソコソと貯蔵庫から出た

 

「大佐。二人が移動したぜ…」

 

「どこ行くんだ…」

 

照月と蒼龍は貯蔵庫を出て、広場に向かった

 

広場には駆逐艦の子がいるが、どうやらその子達を襲う気配は無い

 

隊長は木の陰に隠れ、太い枝と枝の間から二人の様子を見た

 

「何を話してる…」

 

照月は白い袋を持ち、蒼龍に何か話している

 

蒼龍は照月の話に対し、首を傾げている

 

隊長は一瞬木の陰に体を隠し、再び顔を出した

 

「何してるの⁇」

 

「う…」

 

先程隊長が顔を見せていた枝と枝の間から、照月が顔を見せた

 

「あ、そうだ‼︎」

 

「な…何だ…」

 

「メリークルシミマス‼︎」

 

隊長は後退しながら、照月から距離を置こうとする

 

照月もそれに合わせて袋を引き摺りながら近付く

 

「美味しそうですねぇ〜」

 

「くっ…」

 

背後に蒼龍が来た

 

前方には照月

 

逃げ場が無くなった‼︎

 

その時、照月の前に何か投げ込まれた

 

「隊長‼︎耳塞いで‼︎」

 

誰かの声が聞こえた瞬間、隊長は耳を塞いだ

 

投げ込まれた何かが爆発する寸前、誰かに手を引かれ、少し離れた場所で地面に伏せさせられた

 

「今だよ江風‼︎」

 

「よっしゃあ‼︎」

 

江風が一瞬の隙を突いて蒼龍に投げ技を決めた

 

「ふぅ…良かった良かった」

 

「助かったよ。きそ」

 

「えへへ…」

 

隊長を助けたのはきそだ

 

コードイルミネートドラゴンはフィリップの耳にも入っていた

 

フィリップから出て来たきそは、一度横須賀の執務室に向かった

 

「たいほうちゃん⁇」

 

「ん⁇」

 

たいほうはレイの膝の上でビスケットを食べていた

 

「イルミネートドラゴンが発令されたって聞いたんだけど⁉︎」

 

「あぁ。今隊長達が応援に当たってる」

 

「蒼龍と照月が相手かぁ…足止めが必要だね」

 

「たいほうこれもってるよ‼︎」

 

たいほうは来ていた服の中から”せーなるばくだん”を出した

 

「それで今日胸膨らんでたのかぁ…」

 

今日のたいほうは巨乳だった

 

理由は服の下の胸の所にコレを入れていたからである

 

「よし、じゃあ行ってくるよ‼︎」

 

「頼むぞ。照月も危険だから気を付けろよ‼︎」

 

きそは照月達のいる広場に向かい、隊長達を見ると姿勢を低くした

 

建物の影に隠れ、きそは爆弾のピンに手を掛けた

 

「3で投げるんだよね…」

 

照月が隊長にジリジリと歩み寄るのを見て、きそはピンを抜き、1秒と2秒の間で二人の間と蒼龍の足元に爆弾を投げ、隊長の元へ走り、隊長を救出したと言う寸法だ

 

「蒼龍の姉貴確保ぉ‼︎」

 

江風が気絶した蒼龍を肩に担ぎながら雄叫びを上げている

 

「照月ちゃんも確保‼︎」

 

トラックさんも気絶した照月を脇に抱えて連れて来てくれた

 

「ふぅ…何とかなったな…」

 

「良かった…僕重かった⁇」

 

「大丈夫だ」

 

腹の上で安堵のため息を吐くきそを見て、レイがきそを可愛がる気持ちが少し分かった

 

きそは強い

 

だが、それ以上に面倒見が良く、そして甘えん坊だ

 

きそを見ていると、出会いたての時のレイを思い出す…

 

「本当に申し訳ありませんでした…」

 

「こっちも照月が申し訳無い事を…」

 

「よいしょ」

 

きそが腹の上から離れ、隊長はトラックさんから照月を受け取る

 

「お詫びに今夜、美味しいケーキと料理、用意して待ってます‼︎」

 

「やったね‼︎」

 

「子供達に食べさせてやってくれ。私は…ほら」

 

「あぁ〜…なるほど、了解です‼︎では、私はこれで」

 

トラックさんと江風が自身の基地に戻り、隊長は照月ときそを連れて横須賀の執務室に戻って来た

 

 

 

 

隊長が照月を横須賀お気に入りのソファに寝かせると、数分で照月は目を覚ました

 

「あれ⁇」

 

「サンタさんはいたか⁇」

 

「サンタさんいなかった…でも、照月いっぱいプレゼント貰ったよ‼︎」

 

「たいほうももらった‼︎」

 

気絶していても照月は持っていた袋を手放さなかった

 

照月もたいほうも袋を手に取り、中から貰った物を取り出し始めた

 

「まずはコレ‼︎ドローンだって‼︎」

 

「たいほうはらじこん‼︎」

 

初っ端から高価な物が出て来て、その場にいた大人三人は冷や汗を流す

 

「後はチョ☆ーゴー☆キン‼︎照月、コレも欲しかったんだぁ〜‼︎」

 

照月は何故か超合金のオモチャが好きで、タウイタウイモールに行った時も超合金を買っていた

 

「たいほうはぷらもでるもらった‼︎きそといっしょにするの‼︎」

 

「頑張って作ろうね‼︎結構デカイよ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

たいほうはたいほうでプラモデルが好きだ

 

きそに作って貰っているのかと思っていたが、かなり前から自分で作っているのに最近気が付いた

 

「くれた人にお礼は言ったか⁇」

 

「言ったけど、すぐ逃げちゃったよ⁇」

 

「たいほうもいった‼︎」

 

「よし。なら良い。じゃっ、一旦帰ろうか。夜はトラックさんの所に行くんだろ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

たいほうが隊長の頭に付いた

 

「照月もお家帰る‼︎」

 

俺は両手に照月ときそを付けた

 

「隊長もレイも気を付けてね⁇」

 

「任せなされ」

 

「また来るよ」

 

俺達は基地へと戻った…


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