艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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125話 凶鳥達の親鳥(2)

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

俺は急に狂った様にフィリップのエンジンを吹かせた

 

《何やってんだアイツは…》

 

アレンが驚く中、俺は無線をジブリール隊に繋げた

 

「や〜い‼︎ジブリール隊のバ〜カ‼︎俺一機も落とせないんですかぁ〜⁉︎」

 

《レイ。後は任せた。私はサイクロップスの援護に向かう》

 

「ウィルコ‼︎ジブリール隊‼︎こっちにお〜いで〜‼︎お尻ペンペ〜ン‼︎」

 

そんな挑発をしたら、向かない方がどうかしている

 

俺達を追っていた一機と、マークされていない一機が挑発に乗り、俺の方に来た

 

《逃げるからね‼︎》

 

「オーケー‼︎ぶっ飛ばせ‼︎」

 

フィリップを自動操縦に切り替え、空域を一気に駆け抜けた

 

《二機着いて来た‼︎》

 

「カウント0で反転‼︎反転後、隊長達の所へ戻る‼︎」

 

《オーケー‼︎》

 

「3…2…1…0‼︎」

 

フィリップは自動操縦のまま機体を反転させ、元いた空域に向かう

 

着いて来た二機は何が起こったか分からず、追従するかの様に反転して俺を追って来た

 

「チェックメイ、トッ…」

 

二機に撃墜判定が出た

 

《レイ、上手くやれたか⁇》

 

「完っ璧‼︎なっ⁇」

 

《人使いの荒い犬ね…これっきりよ⁇》

 

無線の声はヘラだ

 

フィリップの作戦はこうだった

 

俺が戸惑っている時に、フィリップは俺にレーダーを見せた

 

そこには、近くを飛んでいるヘラが映っていた

 

フィリップが言うには…

 

”向こうが奇襲掛けて来るなら、こっちだって奇襲してもいいハズ”

 

俺はヘラに無線を入れ、引き連れた二機に標準を合わせたまま此方に突っ込ませたのだ

 

「助かったよ。まだ行けるか⁇」

 

《後でシェイクでも奢りなさいよ⁇》

 

「お安い御用だ‼︎」

 

《ラバウルの連中、聞きなさい。敵機をロックオンし続けなさい。データリンクしたら、私が墜とす。良いわね⁇》

 

《イエス、マム》

 

《ウィルコ‼︎任せたぞお嬢‼︎》

 

ヘラが来て、一気に形勢が逆転した

 

あっと言う間に二機に撃墜判定が降りた

 

「瞬っ殺‼︎」

 

《第二部隊が来るよ‼︎》

 

《第二部隊⁇これの事かしら⁇》

 

ヘラからデータが送られて来た

 

サラトガ航空部隊第二部隊…

 

ペトローバ隊四機、全機撃墜判定

 

「ぺっ、ペトローバ隊を墜としたのか⁉︎一人で⁉︎」

 

《邪魔だったから墜としたわ。悪い⁇》

 

「い…いや…助かった…」

 

《ペトローバ隊だと⁉︎しかも邪魔だったから墜としただと⁉︎》

 

《あら。いけなかったかしら⁇》

 

《はぁ…もうヘラには逆らえないな…》

 

《あら。あんたも犬に成り下がるの⁇》

 

《ペトローバ隊は、俺にコルセアの操縦を教えてくれた部隊だ》

 

《…》

 

ヘラは急に黙り込んだ

 

ヘラの感情を表すモニターを見ると”申し訳ない”という感情表記が出ていた

 

ペトローバ隊は、簡単に言うと教官の教官に当たる

 

つまりは、隊長の教官である

 

隊長がコルセアをあれだけ乗りこなせていたのも、この部隊のお陰と言っても過言ではない

 

俺達の話は教科書や歴史でチラッと出て来るが、ペトローバ隊はほとんど記録に無い

 

それは、この部隊は前線に出て戦うのでは無く、教える事に尽力を尽くしていたからである

 

《ウィリアム、マーカス。君達かね》

 

無線から味のある男性の声が聞こえて来た

 

《はっ。リチャード中将》

 

《教え子が此処まで成長するとは…我々も鼻が高い》

 

《ありがとうございます。良い部下を持ちました》

 

《マーカス。強くなったな》

 

「ありがとうございます」

 

《知り合い⁇》

 

「そっ。俺にアメリカの国籍をくれた人だ」

 

《はぇ〜…》

 

《我々は今しばらく横須賀にいる。暇があれば顔を見せてくれたまえ》

 

《良い酒を…いや、中将。貴方をある場所に招待します》

 

《ほぅ》

 

《そこは…》

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る

 

「ここか…」

 

リチャード中将が来た

 

僚機の連中はおらず、一人で来た様だ

 

「お久し振りです、中将」

 

「お久し振りです」

 

「んっ。敬礼はせんくなったな。偉い偉い‼︎ガッハッハ‼︎」

 

中将は高笑いする

 

これでこそ中将だ

 

中将は俺がまだ空軍に入りたての時だって、上下関係無く、いつもこうして笑い飛ばす

 

真面目な時は、さっきみたいに空にいる時だけだ

 

「君達がここを造ったのか…うん‼︎素晴らしい‼︎実にビューチホーだ‼︎コーラを頂けるかな⁉︎」

 

「はいっ‼︎少々お待ちを‼︎」

 

扶桑は中将が来てくれた事に少し焦りながらも、キンキンに冷えたコーラを冷蔵庫から取り出し、栓を開けて渡した

 

「ありがとう‼︎」

 

中将はコーラを半分飲み、一息ついた

 

「マーカスも強くなったな‼︎」

 

「ありがとうございます。へへ…」

 

「ウィリアム‼︎たまにはタバコ吸うか‼︎」

 

「了解です」

 

隊長は一旦会議を中断し、中将と共に外に出た

 

「相変わらず豪快な人だな…」

 

「珍しい人だ。誰に対してもあぁだ」

 

アレンと共にコーヒーを飲み、俺達もクリスマスの話に没頭した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜‼︎いい演習だった‼︎」

 

中将はタバコを咥えながら背伸びをした

 

「良い部下を持つ…貴方の口癖でしたね」

 

「そうだウィリアム」

 

「何でしょう⁇」

 

「妻は元気かね⁇」

 

「えぇ。よく子供達の面倒を見てくれています」

 

「そうか…妻には悪い事をした…戦争とはいえ、身籠った彼女を一方的に突き放してしまった…」

 

「お会いになられてはどうです⁇」

 

「今更会わす顔など無い…この事は内密にな。空軍は嘘をつかないと教えたが、これは別だ」

 

「えぇ」

 

「…マジでお願いしてるんだ。な⁇」

 

「大丈夫ですよ」

 

「うんっ‼︎流石はウィリアムだ‼︎いずれ横須賀で会おう‼︎ではな‼︎ハッハッハ〜‼︎」

 

中将はタバコを灰皿に捨て、スカイラグーンを去った…




リチャード・オルコット…パパやレイの教官

階級は中将

50代半ばの男性

パパやレイに飛び方を教えた人であり、レシプロ機に好んで乗り、めちゃくちゃ強い

随分前に言っていた、パパにコルセアの乗り方を教えたのはこの人

サラの元艦載機パイロットであり、前線には出ず、教官としての日々を送っている

サラが艦娘を引退する為、横須賀の飛行教官として身を置く

高笑いとコーラが好き

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