次の日、俺、隊長、貴子さん、たいほうは授業参観の為、横須賀に向かった
「やまかぜ‼︎おはよう‼︎」
「おはよう。よろしくね」
山風だ
この前も会ったが、ネットの印象とちょっと違う
山風はたいほうと共に先に学校へと入って行った
「レイ。おはよ」
「おはよう」
横須賀は俺を見るなり腕を絡めて来た
サラが俺の事をお見通しな様に、俺は大体こいつの考えている事が分かる
俺がサラと仲良くしているから、取られない様にしているのだろう
「コンニチハ♡」
「サンカンビトイキテ」
中枢棲姫と縦ロールが来た
最近、学校に駆逐艦の子や重巡の深海棲艦の子達も通っているので、この二人が来ても驚かなかった
「貴方達の事も言われると良いわね⁇」
「イワレルトイイナ♡」
「キタイシテマス」
「さっ、入りましょうか‼︎」
教室に入ると、あきつ丸が教壇に立っていた
「これはなんと読むでありますか⁇たいほうちゃん。チャレンジしてみるでありますか⁇」
「とーちゅーかそー‼︎」
「おぉ…偉いでありますなぁ‼︎正解であります‼︎」
たいほうは漢字は読めるが書けない
最近、ようやくカタカナが書ける様にはなって来た
「さぁ。そろそろ始めるであります。みんな、宿題は持って来たでありますか⁇」
「もってきた‼︎」
「山風も書いたよ」
「ジャン‼︎」
たいほう達は思い思いに書いた作文を出し、机の上に置いた
「では読んで行くであります。まずはイワン君‼︎」
イワンと呼ばれたイ級が立ち上がり、作文を読む
「ハイ‼︎ボクノオカアサンハ、コウワンナツキデス‼︎オッパイガオオキクテ、イツモクロイジュースヲクレマス‼︎」
イワンが終わり、しばらくイ級達の連鎖が続く
ただ、それぞれ母親は違う様だ
港湾夏姫と言う子がいれば、戦艦夏姫と言う子もいる
話を聞いている限り、中枢に行った時にいた、
港湾夏姫
戦艦夏姫
重巡夏姫
この三人はかなり面倒見が良い様だ
しかし、問題の縦ロールと中枢棲姫の名は上がって来ない
「では、次はリノン君」
重巡の子だ
「ワタシノオカアサンハ、チュウスウセイキサンデス」
「オホッ♡」
中枢棲姫は嬉しそうに顔を蕩けさせている
「イツモオイシイゴハンヲツクッテクレルノデ、ダイスキデス」
「ワタシモスキヨ〜♡」
「ヒメ、シズカニ」
縦ロールが中枢棲姫の口を押さえるが、中枢棲姫の嬉しさは止まらない
「よしっ。ではリネア君、行ってみるであります」
「ハイ。ワタシノオカアサンハ、ウンガセイキサンデス」
「ウヒッ♪♪」
散々中枢棲姫にうるさいと言っていた縦ロールも顔をニヤけさせる
「ウンガセイキサンハ、ヘイワニツイテイツモセッキョクテキデス。ワタシモイツカ、ウンガセイキサンノヨウニナリタイデス‼︎」
「イキテテヨカッタ♪♪」
「では〜…次はたいほうちゃん」
「はい‼︎」
たいほうの番が来た
「たいほうのおかあさんは、たかこといいます。おりょうりもじょうずで、いつもたいほうたちとあそんでくれたりします」
「あら。私の事を…」
「たいほうは、いつかおかあさんみたいに、おっきくて、やさしくて、ひとをだっこできるひとになりたいです」
周りが拍手するので、これで終わりかと思っていた
「たいほうにはおとうさんもいます。おとうさんはうぃりあむといいます。さんだーばーどたいのたいちょうです」
周りから”オォー”と声が上がる
「おとうさんはなんでもできます。みんなにそんけいされてて、おともだちもたくさんいます」
たいほうの読む作文を聞いていると、隊長の肩が揺れているのに気が付いた
顔を見ると半泣きになっていた
やはり子供の成長は嬉しい様だ
「それと…」
たいほうの作文はまだ続いていた
「たいほうには、もうひとりおとうさんがいます。それは…」
今まで前を向いて読んでいたたいほうが、俺の方に振り返った
「まーかす・すてぃんぐれいです‼︎」
それを聞いた途端、俺は持っていた作文の束を握り締め、溢れる涙を堪える体制に入った
「すてぃんぐれいは、いつもたいほうたちとあそんでくれたり、たいほうたちをまもるためのぶきをつくってくれます。たまにごはんもつくってくれます。たいほうにとっては、すてぃんぐれいもおとうさんです‼︎」
「た…たいほう…」
作文を持っていた逆の手で口元を押さえるが、すすり泣く声は抑えられなかった
拍手喝采で、たいほうの作文は終わった
「では、山風ちゃん‼︎」
「はいっ。山風のお母さんは、隼鷹と言います。お酒を凄い飲みます。よく、お父さんを襲ってます…」
隼鷹と呉さんの性生活がちょっと明らかになった
山風の作文が終わり、子供達全員の作文読みが終わった
「では、最後に特別枠でマーカス・スティングレイさんに作文を読んで頂くであります‼︎マーカス大尉、此方へ‼︎」
教壇に案内され、持っていた作文を広げ、読み始めた
「俺には、父も母もいません」
教室が軽く騒つく
「だけど、父と呼べる人も、母と呼べる人も俺にはいます。父と呼べる人は、俺の隊長。ウィリアム・ヴィットリオ大佐です。隊長は俺に沢山の事を教えてくれました。空…世界…医学…隊長が教えてくれた事は、俺の世界になりました」
「レイ…おまっ…」
たいほうの作文で大ダメージを受けていた隊長は、此処に来てとうとう崩れた
「母と呼べる人は、まずは貴子さん。貴子さんは、俺が知らない母親の愛を、一番最初に俺にくれた人です」
「嬉しい…」
貴子さんの涙腺も緩んでいる
「母と呼べる人は、もう一人います。それは…この鎮守府の提督である、ジェミニ・コレット元帥です」
「あらっ」
此処に来てようやく横須賀の名が呼ばれたので、当の本人は素直に嬉しそうだ
「ジェミニは、俺が知らなかった愛を教えてくれました。俺は今まで、異性を愛する方法を知りませんでした。彼女はそんな無知な俺を、いつも笑って、その愛で包んでくれました」
「…アイッテイイネ」
「…イイネ」
駆逐艦の子のヒソヒソ話が聞こえて来た
「この場を借りて、俺は彼女に言いたい事があります。それは、俺が彼女に言いそびれた言葉です…ジェミニ、こっちに来てくれ」
「はいはい」
横須賀は教壇の前に立ち、俺の目を見た
「一度しか言わない…よく聞いとけ」
横須賀は頷き「分かったわ」と言った
俺は深く息を吐き、原稿用紙を壇上に置き、口を開いた
「…俺と結婚してくれ」
「はいっ‼︎喜んで‼︎」
横須賀は、俺が差し出した手をすぐに取った
「ヤッター‼︎」
「ケッコンケッコン‼︎」
「コクハクコクハク‼︎」
深海の子達も祝ってくれている
「ヨカッタ♡ワタシモハヤクケッコンシタ〜イ〜♡」
中枢棲姫はクネクネしながら再告白した俺達を見ていた
「ヒメ。ソノウチイイヒトガキマスヨ」
「ジャアマッテヨ‼︎ハクバノオウジサま〜♡」
中枢棲姫がちょっと壊れ始めた
こうして、授業参観は幕を降ろした…
その日の夕飯、貴子さんは豪勢な料理を作ってくれた
俺とたいほうの好きなモノばかりだ
皆が美味しく食べ、照月がまた暴食をし、また家族の一日が終わる…
「♪〜」
「ねぇ、姫」
「ん⁇なぁに⁇」
「姫の鼻歌と、レイが吹く口笛のメロディ、一緒だね⁇」
「あら…ふふっ」
姫はレイと似てるとか、同じと言うと何故か喜ぶ
きそは、その事実を知っていた
「…親子って、似るんだね」