艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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13話 黒いコウノトリ(3)

腰を上げて、武蔵に観測機を渡した

 

「なんだコレは」

 

「”最強”の観測機だ」

 

「ばばばばば‼︎」

 

「なるほど…」

 

後は武蔵に託しても大丈夫だろう

 

さて、ドックを見に行くか

 

「傷はどうだ⁇」

 

ドックののれんをめくると、まだ湯船に浸かっている彼女の前で屈んでみた

 

「オシャベリ、デキルヨ⁇」

 

お湯で遊んでいるのか、手でお湯をすくってまた湯船に落としたり、近くにいた妖精に水鉄砲を当てていた

 

「んっ。大分回復したな」

 

「オニイサン、アリガトウ」

 

「ゆっくり休めばいい」

 

「ワタシノコト、キカナイ⁇」

 

「話たくなったら話せばいい。今は休め。いいな⁇」

 

「ン…」

 

彼女の頭を撫でた後、工廠に入った

 

「どうだ⁇」

 

《ほんま、見るたんびにえぇ機体やと思うわ》

 

「だろうな」

 

工廠の中で、美しいまでに佇む黒い鳥…

 

何度見ても目を奪われる…

 

《これやろ。この機体が何考えてるか、画面に出るんや》

 

妖精に手渡されたタブレットを持ち、話しかけてみた

 

「名前は何て言うんだ⁇」

 

《スペンサー》

 

「良い名だ…」

 

《アナタハ⁇》

 

「みんなパパと呼んでる」

 

《パパハ、ミカタ⁇》

 

「味方だ」

 

《”ヒメ”ハ、ダイジョウブ⁇》

 

「大丈夫だ。今はお風呂に入ってる」

 

《ヒメハ、カンムスニヤラレタ。ツヨカッタ》

 

「それで、助けを求めてたのか⁇」

 

《ソウ。ワタシタチハニンゲンノテキ。イミキラワレルソンザイ》

 

「そんな事無いぞ⁇俺はお前を美しいと思う」

 

《ア…アリガトウ…》

 

少し照れているのか、スペンサーは言葉に詰まっていた

 

《ワタシタチハ、ミンナカラステラレタ。イバショガナイ》

 

「ならここにいろ。その代わり、みんなを護ってやってくれ」

 

《イイノ⁉︎》

 

「ここは敵も味方も無い。みんな仲間だ」

 

《…ワカッタ。パパニツク。イッパイセイビシテネ⁇》

 

「任せろ‼︎」

 

スペンサーはコックピットであろう部分を何度か光らせた

 

《あの光は…嬉しい、やな》

 

「勉強しなきゃな」

 

《深海棲艦の修理が終わったで‼︎》

 

妖精に連れられてリビングに行くと、エプロンを付けたはまかぜがキッチンにいた

 

その前では、艤装を全て取り除いた彼女がホットミルクを飲んでいる

 

「あったかかったか⁇」

 

「ウン。オフロヒサシブリ」

 

「スペンサーはこの基地にいてくれるみたいだ」

 

「ワ、ワタシモイタイ‼︎イタイノイヤ‼︎」

 

泣きそうな顔になった彼女は、私に抱き着き、顔を埋めた

 

「辛かったな…もう大丈夫だ」

 

頭を撫でると、より一層強く抱き着いて来た

 

「名前は⁇」

 

「ナイ…」

 

「そうだな…う〜ん…」

 

悩んでいると、はまかぜが口を開いた

 

「チェルシー…なんて、どうですか⁇」

 

「チェルシー…チェルシーカ‼︎」

 

「ん、良い名前だな。よし、今日から君はチェルシーだ。よろしくな」

 

「ウン‼︎」

 

 

 

 

陸上偵察機”スペンサー”

謎の深海棲艦”チェルシー”

が、艦隊の指揮下に入ります‼︎

 




スペンサー…とってもスマートな高高度偵察機型深海棲艦

楽園に救助を求めにやって来た、黒い偵察機

攻撃力は持たないが、高速かつ高高度からの偵察が出来る

チェルシーとパパが好き

モデルはSR-71ブラックバード



チェルシー…引っ込み思案で怖がりな深海棲艦

何処かの艦隊にやられて、ボロボロになった所をパパに保護された、白い髪と角が特徴の深海棲艦

負けてしまったからなのか、パパ以外の人間や艦娘をとても怖がるが、どうもはまかぜは大丈夫な模様

安心した相手には抱き着く癖がある

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