艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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121話 奇跡のモンブラン(2)

数日後、トラック基地工廠…

 

「江風ちゃん‼︎遠心分離機に入ってくれますかぁ⁉︎」

 

「嫌だね‼︎またマロングラッセにされるのは勘弁だ‼︎」

 

「力づくでも入れますねぇ‼︎」

 

「うぉりゃ‼︎」

 

蒼龍は江風を抱えようとしたが、江風は反撃の構えを取り、逆に蒼龍を投げ飛ばして遠心分離機に放り込んだ

 

「出して下さいよぉ〜‼︎出さないと後で江風ちゃんを食べないといけなくなるんですよ〜⁇」

 

「知ったこっちゃないね‼︎いいか蒼龍の姉貴‼︎これから先、駆逐艦の子を食べないと誓うならこのボタンは押さない。どうする〜⁇」

 

江風はいやらしく蒼龍にボタンをチラつかせる

 

「じゃあ仕方ないですねぇ。どうぞ‼︎」

 

蒼龍は遠心分離機の中で正座をした

 

駆逐艦を食べられない様になるなら、多少グルグル回る気だ

 

「マジかよ…」

 

「早く押して下さいよぉ〜。」

 

「えぇい‼︎多少は反省しやがれ‼︎」

 

江風は遠心分離機のスイッチを押した

 

「ぐわわわわわわわわわ‼︎」

 

遠心分離機内で高速回転する蒼龍を見ながら、江風は出口にボウルを置き、遠心分離機から出て来たネリネリをそこに出した

 

いつも蒼龍がやっている様に、指にネリネリを付け、ちょっと舐めてみた

 

「んっ‼︎これは美味いな‼︎」

 

蒼龍を遠心分離機に入れると、甘い抹茶クリームが出て来た

 

「だだだだだだしてくだだだださい‼︎」

 

江風の目の前で高速で蒼龍が左から右への移動を繰り返す

 

「まぁ、そろそろいいか…」

 

スイッチを押し、蒼龍を排出口から出した

 

「おぶちっ‼︎」

 

アスファルトの上に放り出され、蒼龍は目を回す

 

「お腹すきましたねぇ…あ‼︎そうだ‼︎最近入ったあの筋肉質な人を頂きましょう‼︎」

 

 

 

 

工廠の中では、江風がボウルいっぱいに出た抹茶クリームを食べていた

 

「こりゃいけるぜ‼︎提督にも分けてやろう‼︎」

 

「早く来るんです‼︎じゃないと、今ここで足を切り落としますよぉ〜⁇」

 

「そ、蒼龍の姉貴…⁉︎」

 

蒼龍は両手足を縛った、筋肉質な男性を引っ張って来た

 

「江風ちゃんも食べますかぁ⁇筋肉質で美味しそうですよぉ⁇」

 

「い…いや…あたしは良いよ…」

 

「そうですかぁ⁇美味しいのになぁ…」

 

食べない江風の方が間違っている様な言い方をされながらも、江風は提督に報告する為、ジリジリと出口に向かい、外に出て来た

 

外に出てすぐ、執務室の方に走ろうとすると、誰かにぶつかった

 

「あだっ‼︎」

 

「どうしたんだ⁇そんなに焦って」

 

当たったのはトラックさんだ

 

隣には今日の秘書艦の飛龍がいる

 

「そっ、蒼龍の姉貴がまた人食ってる‼︎」

 

「またか‼︎」

 

「止めましょう‼︎」

 

急ぎ三人で工廠に向かうと、今まさに鉈を振りかざそうとしている蒼龍が見えた

 

「待てぇ〜い‼︎」

 

「江風ちゃん…気が変わりましたか⁇」

 

蒼龍は振りかざした鉈を降ろし、江風に向けた

 

「さっき食べるって言いましたよねぇ…江風ちゃんから頂いちゃおうかなぁ〜…」

 

「あたしを食べようなんざ十年早いぜ⁇」

 

「駆逐艦の分際で大した口聞きますねぇ‼︎」

 

「なんだと…幾ら姉貴でも堪忍袋の限界だ‼︎来な‼︎」

 

「小賢しい虫ケラが‼︎私の邪魔をするなぁ‼︎」

 

蒼龍は本気で江風を食べようと、鉈を振り回し始めた

 

江風は紙一重で蒼龍の鉈を回避しながら、隙が出る瞬間を待っていた

 

江風が戦っている間、トラックさんと飛龍は食べられそうになっていた男性を救出していた

 

「もう悪い事しまちぇん‼︎神にちかいましゅ‼︎」

 

「反省したなら宜しいでしょう」

 

男性は震えながらトラックさんにしがみ付き、トラックさんは彼を諭していた

 

「危ねぇモン振り回すな‼︎」

 

「なんの‼︎」

 

江風は蒼龍の持っていた鉈を蹴り飛ばし、それでも向かって来る蒼龍をそのまま後ろへ投げ飛ばした

 

「わあっ‼︎」

 

「ショルダースルー江風仕立てだっ‼︎」

 

「中々やりますねぇ…」

 

江風は立ち上がる蒼龍に近付き、そのまま担ぎ上げた

 

「どうする⁇負けを認めるか、このままアルゼンチンバックブリーカーをモロに喰らうか…選べ‼︎」

 

「アルゼンチンバックブリーカーで‼︎」

 

「ぬぅん‼︎」

 

「おぶっ‼︎」

 

江風は二倍ほど身長のある蒼龍にプロレス技を決め、ようやく決着が着いた

 

「言ったろ⁇あたしを食おうなんざ、十年早いって」

 

「よくやった江風‼︎」

 

この基地で唯一、力技で蒼龍を止められる人物が産まれた瞬間である

 

食べられそうになっていた男性は独房に戻し、江風と飛龍は担架で蒼龍を執務室のベッドまで運んで来た

 

「提督、怪我してないか⁇」

 

「大丈夫だ。江風は⁇」

 

「あたしは大丈夫さ。レ級の時の頑丈さが継がれてるみたいだな‼︎」

 

と、江風はガッツポーズを見せた

 

「う〜ん…ここは⁉︎」

 

蒼龍が目を覚ました

 

「おっ、蒼龍の姉貴‼︎起きたか⁇」

 

「江風ちゃん、強いですねぇ〜…」

 

「あんま人食うなよ⁇腹壊すぜ⁇提督のケーキの方がよっぽど美味しいっての‼︎」

 

江風の言葉を聞き、トラックさんは御満悦

 

「よしっ、みんなケーキ食べるか⁉︎」

 

「食べます‼︎ショートケーキが良いです‼︎」

 

「ミルクレープがいいですねぇ‼︎」

 

「ケーキ⁉︎」

 

四人の駆逐艦が雪崩れ込むように執務室に入って来た

 

「イチゴのケーキがいいわ‼︎」

 

「私も‼︎」

 

「浦波もそれがいい‼︎」

 

「磯波も食べたいです‼︎」

 

四人がてんやわんやする中、江風はトラックさんを見ていた

 

「江風は⁇」

 

江風は歯を見せて笑い、トラックさんに言った

 

「モンブラン‼︎」

 

トラックさんは江風の頭を撫で、皆で厨房へと向かって行った…

 

 

 

 

駆逐艦”江風”が、トラック基地に着任しました‼︎




江風…モンブラン艦娘

レ級から出て来た赤髪の女の子

トラックさんの作るモンブランが好きで、いっぱい動いたらご褒美として貰える

艦載機は積載出来なくなったが、レ級の頃の火力と雷装を受け継いでおり、逆らったら死ぬ

トラックさんに次ぐ蒼龍ストッパーであり、唯一力技で蒼龍を止める事が出来る為、トラックさんはようやく安眠を手にする事が出来た

飛龍が夜中見ているプロレス番組の影響でプロレス技をするのが得意

駆逐艦の子達からはボスと呼ばれているが、流石の江風でも、照月のどし〜ん‼︎には耐えられない




照月のどし〜ん‼︎とは…

照月がいっぱい食べた後にするボディプレスの事

流石のレイでも、これを喰らえばアバラが折れる

この技に耐えられる人物はいない

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