艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、120話が終わりました

今回のお話は、ず〜っと出そう出そうと迷っていた艦娘を出します

出さなかった理由⁇

とある人が入手するまで待ってたのです


121話 奇跡のモンブラン(1)

「ぐわ〜‼︎さみぃ〜‼︎」

 

「あったかい物でも飲もう‼︎」

 

哨戒任務を終え、スカイラグーンに来たは良いが、降りた瞬間寒風に晒された

 

「さむさむさむ〜‼︎」

 

転がり込む様に喫茶ルームに入る

 

「おかえりなさい。寒かったでしょう⁇」

 

「寒いってモンじゃねぇぞ‼︎」

 

「こりゃあ、遠征部隊も一苦労だな‼︎」

 

二人して震えながらストーブに当たり、かじかむ手を温める

 

「おイ。温かイスープだ」

 

潮が両手にマグカップを二つ持って来た

 

「しんぱイするな。この前みたイに、ネコのスープじゃなイ。普通のコーンスープだ」

 

「サンキュー」

 

「ありがとう」

 

潮の作ったコーンスープは、粒が入っていて、味も濃くて美味しい

 

沸騰してなけりゃ、言う事無しだ

 

「任務ご苦労様です」

 

厨房にいたのはトラックさんだった

 

「冷蔵庫にモンブランを入れておきますね。体が温まったら、お召し上がり下さい」

 

「隊長食うか⁇俺は食う‼︎」

 

「三回ある一生の頼みを使っていいか⁇」

 

「一生の頼みは一回だけだ。分かったよ。取ってくる」

 

「すまん」

 

隊長はどうしてもストーブから離れたくないみたいだが、トラックさんのモンブランも食べたいらしい

 

「ほい」

 

「すまんな。トラックさん、頂きます」

 

「頂きます‼︎」

 

トラックさんはニコニコしながら、レ級の所にもモンブランを持って行っていた

 

スカイラグーンで束の間の休息が始まり、俺と隊長は足にストーブの温風を当てながらモンブランを口にした

 

「美味いな…疲れが取れる」

 

トラックさんのモンブランはお世辞抜きに本当に美味い

 

本人も作るのが得意なのか、艦娘達の人気も高い

 

艦娘人気が一番高い間宮のショートケーキに肩を並べる程、このモンブランは評価が高い

 

「隊長、俺も一生の頼みを使う」

 

「なんだ⁇」

 

「…たいほうには内緒にして欲しい」

 

「あぁ…ははは‼︎分かった分かった‼︎」

 

過去に一度、俺はたいほうがトラックさんに貰ったモンブランを食べてしまった事があるからだ

 

こんな事がバレたら、たいほうは照月に頼んで、どし〜んされても文句は言えない…

 

ようやく温まって来た体の力を抜きながらモンブランを食べる俺達から二席程離れた場所では、トラックさんとレ級がモンブランを食べていた

 

「美味しいかい⁇」

 

「オイシイ‼︎モンブランスキ‼︎」

 

「そうかそうか‼︎」

 

トラックさんはレ級の顔を見て、嬉しそうに微笑んでいる

 

基地では人食いの蒼龍に振り回されている為、もしかしたらトラックさんが癒される場所はここなのかも知れない…

 

「モンブランハ、クリノケーキ⁇」

 

「そう。レ級ちゃんは物知りだなぁ⁉︎」

 

「レキュウシッテルヨ‼︎クリノエイゴハ、まロんナンダヨね‼︎」

 

「正解‼︎」

 

「ん⁇」

 

楽しそうに話す二人を見て、何か違和感を感じた

 

「モンブラン、おいシいナァ〜」

 

「レ級ちゃん、ここどうしたの⁇」

 

トラックさんはレ級の顔に出来た傷に気が付いた

 

「ナンかデきてル⁇」

 

「ヒビ割れてるみたいになってる。何処かで打った⁇」

 

トラックさんが傷に触れた時、ヒビ割れの様な傷が更に伸びた

 

「スティングレイに診て貰おうか⁇」

 

「うン」

 

話が聞こえていたので、此方から出向いた

 

「どれっ。ちょっと見せてみな…」

 

見た限り、傷に対しての痛みは無い様だ

 

と言う事は、考えられる事は一つしか無い

 

「レ級ちゃんはさ、どんなお菓子が好きだ⁇」

 

「トラックサんのモンブラン‼︎あト、このマえタベた、まろングラッせ‼︎」

 

「トラックさんの事好きなんだな⁇」

 

「ウンッ‼︎トラックさんスき‼︎」

 

レ級の笑顔を見てホッとした

 

「傷は大丈夫だ。後はトラックさんといっぱいお話するんだ」

 

「分かっタ‼︎」

 

レ級の頭をポンポンと叩き、隊長の所に戻って来た

 

「時間の問題か⁇」

 

「あと一歩だ。よいしょ…愛ってのはっ、色んな形があって、面白いもんだ…」

 

ソファに腰掛け、タバコに火を点け、隊長と共に二人を眺める

 

「レ級も元の姿に戻るのか」

 

いつの間にか潮が隣に座っており、俺の横でモンブランをムシャムシャしながら二人を見ていた

 

「そうだ。お前のお母さんも戻っただろ⁇」

 

「スカイラグーンの人が減る。えらイこっちゃ」

 

どこで覚えたのか、潮は関西弁を喋っている

 

「トラックさん。レ級モ、トラックさンの所ニ行きタイ‼︎」

 

「いいよ。来るかい⁉︎最近、駆逐艦の子が増えたんだ。気にいると思うよ⁇」

 

「ホント⁉︎」

 

「君さえ良ければ‼︎」

 

「やったー‼︎」

 

と、レ級が両手を挙げた瞬間、ヒビ割れていた部分が崩れ落ちた

 

「来た‼︎」

 

「元に戻る‼︎」

 

「おぉ…」

 

まるでサナギから蝶に羽化するかの様に、ヒビ割れた後から赤髪の女の子が現れた

 

「やったぜ‼︎元に戻った‼︎」

 

「お…おおおおお…」

 

トラックさんは尻餅をついてまで驚き、声なき声を出しながらプルプルしている

 

「あんがとよ、トラックさん。あたしは”江風”‼︎これから宜しくな‼︎」

 

「よ…よろしく‼︎江風‼︎」

 

「おイ‼︎戻ったぞ‼︎すごイすごイ‼︎」

 

潮は嬉しそうに手を叩いているが、内心はここから人が減るので悲しいはずだ

 

「モンブラン、美味しかったぜ‼︎」

 

二人を繋ぎ止め、レ級を艦娘へと戻した、このモンブラン…

 

これから先、二人は忘れる事はないだろう…


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