艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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113話 悪の巣(2)

パラオに着くと、あの日以来触られていないのか、外見は全く変わっていなかった

 

「地下、だったな⁇」

 

「そうらしいな。もうアヘンは勘弁して欲しいな…」

 

「大丈夫だろ」

 

「我々が先導します。御命令があれば、我々に何なりと」

 

「頼もしいねぇ〜」

 

真田と椎名ジュニアの先導で、基地内部に突入

 

パッと見は色々直っている

 

再建するのは本当の話みたいだ

 

地下施設に入ると、鉄格子が並んでいる区画に着いた

 

《犬。聞こえる⁇》

 

「どうした⁇」

 

《二区画先に生体反応があるわ。見てご覧なさい》

 

「オーケー」

 

叢雲の指示通りに向かうと、頑丈な扉の小窓の向こうに人影が見えた

 

「あんたが総司令か⁇」

 

「いかにも。君は…マーカス大尉かね⁇」

 

「そうだ。アンタを助けに来た。扉を破壊するから、下がっててくれ」

 

「分かった」

 

「きそ。あるか⁇」

 

「あるよ‼︎ダイナマイツ‼︎って言ったら爆発するからね‼︎」

 

きそは背負っていたリュックの中を開け、三本程ダイナマイトに火を点けた

 

「下がって下がって‼︎ダイナマ」

 

「うぼあ‼︎」

 

既に全員逃げていたが、俺だけ遅れ、きそが”ダイナマイツ‼︎”と言う前に起爆した為、軽く巻き込まれた

 

「あぢぢぢぢぢ‼︎はぇえよ‼︎」

 

お尻に火が付き、総出で叩いて鎮火する

 

「ありがとう。借りが出来たな」

 

中から初老の男性が出て来た

 

「アンタが総司令か…」

 

「フフフ…やはり口の悪さは一級品だな、マーカス大尉」

 

「ちょっと見せてみな…」

 

軽く総司令の体調をチェック

 

少しばかり衰弱はあるが、他は大丈夫そうだ

 

「そうか。君は医者だったな」

 

「軽くなら見れる。とにかくここを出よう。話は後だ」

 

真田と椎名ジュニアを連れ、地下施設を出ようとした

 

「…待て。奥で何やら怪しい動きがある」

 

隊長が後ろを振り返った

 

どうやら以前麻薬を製造していた部屋から何やら音がする

 

「きそ、総司令は任せたぞ」

 

「うん。気を付けてね」

 

きそからダイナマイトを受け取り、三人を任せた

 

二人に総司令を抱えさせ、俺達はピストルを構え、扉を開けた

 

「おいおいおい…」

 

「これは…」

 

麻薬は造られてはいなかったが、見覚えのあるカプセルが置かれ、中には明らかに深海棲艦が入っていた

 

「人間が作った…のか⁇」

 

「元々深海棲艦は艦娘の成れの果てとは言われてる。武蔵やしおい達がそうだ。何ら不思議じゃない」

 

「レイ。判断は任せる。私一人じゃ決められない」

 

「パパ‼︎」

 

「来た」

 

二人で考えていると、艤装を構えたれーべとまっくすが応援に来た

 

「深海棲艦なのかな…」

 

「ボール」

 

「まぁいい。出して襲い掛かる様なら、最悪倒せばいい。行くぞ⁉︎」

 

装置を弄り、カプセルが開くと、まっくすが言った様に、ボールに触手を付けた様な深海棲艦が出て来た

 

そして全員が一応武器を向ける

 

「襲うなら撃つぞ‼︎」

 

が、その深海棲艦は襲うどころか部屋の隅に行き、ガタガタ震えている

 

「な…何だ⁇」

 

全員武器を降ろし、深海棲艦に向かってにじり寄る

 

「敵意は無いみたいだな…」

 

「一緒に来るか⁇」

 

俺が手を伸ばすと、その深海棲艦は震えながらも触手を伸ばし、俺の手に置いた

 

「変な奴だなお前…」

 

俺がそう言うと、深海棲艦はまっくすの胸にくっ付いた

 

「くすぐったい」

 

深海棲艦は居心地が良いのか、まっくすから離れようとしない

 

「まっ、敵意は無いみたいだし、連れて帰ってやろう」

 

「ボールみたい。名前はボーちゃん。分かった⁇」

 

ボーちゃんは触手で丸を作り、まっくすの頭に乗った

 

ボーちゃんは意外に軽く、まっくすの頭に乗っていても問題無い

 

俺はカプセルの横にあった机の上の資料を取り、俺達は基地を出た

 

外では二式大艇とイージス艦が停泊していた

 

どうやら、れーべとまっくすが横須賀に報告してくれたらしい

 

「レイー‼︎大佐ー‼︎」

 

二式大艇の中から横須賀が叫んでいる

 

「まっくすちゃん⁉︎頭に深海棲艦乗ってるわよ⁉︎」

 

「この子はボーちゃん。連れて帰る」

 

「俺達は戦闘機で帰る。れーべとまっくすをスカイラグーンまで送ってくれるか⁇」

 

「お安い御用よ。任せなさい‼︎それと、ありがとうね⁇」

 

「お安い御用さっ」

 

後ろ姿で手を振りながら、機体のある場所に向かった

 

Su-33の近くに行くと、二人がきそと話していた

 

「レイ‼︎おかえり‼︎」

 

きそが抱き付いて来たので、柔らかくサラサラの髪を撫でる

 

「ありがとうございました‼︎」

 

「このご恩は必ず…」

 

「お前、タバコ持ってるか⁉︎」

 

「あ…は、はい‼︎」

 

「寄越せ」

 

椎名からタバコを貰い、火を点けて貰った

 

「タバコ切らしててな…まっ、これでチャラにしてやる」

 

二人は開いた口が塞がらない様子だ

 

「…総司令の言った通りのお方だ」

 

「何だ⁇俺の悪口でも言ってたか⁇」

 

「いえ。貴方とウィリアム大佐が、この戦いを終わらせる鍵だ…と」

 

「けっ‼︎総司令に言っとけ‼︎歳なら黙って椅子に座って踏ん反り返ってりゃいいってな。横須賀を見習え‼︎アイツは普段椅子に座ってシュークリーム食ってばっかだ‼︎」

 

「ははは‼︎」

 

「そうやって笑ってろ。お前達二人は笑顔が似合う。じゃあな」

 

タバコをコンクリートの地面に捨て、足で火を消してSu-33に乗り込んだ

 

「あっ、レイさん‼︎」

 

「何だ⁇コイツはスカイラグーンに置いといてやるぞ⁇」

 

「その機体に乗っている間は、貴方は私達”グレンデル隊”の隊長です。私の事は”ダンテ2”と」

 

「んじゃ、真田はダンテ1か⁇」

 

「えぇ。空にいる時は、総司令は”グレンデル”とお呼び下さい」

 

「んじゃ、早く総司令の所に行ってやれ。命令だぞ‼︎」

 

「はっ‼︎」

 

二人は総司令の元に行く為、空へ帰って行った

 

「さぁレイ、帰ろう‼︎」

 

「オーケー‼︎スカイラグーンでひとっ風呂だ‼︎」

 

《喉乾いた‼︎》

 

俺達もスカイラグーンを目指し、空へ向かった

 

 

 

 

スカイラグーンに着くと、既にれーべとまっくすが着いていた

 

「コラ」

 

ボーちゃんはまっくすの胸元にくっ付き、スリスリしている

 

「いたいた。よっと…扶桑さん、ちょい奥借りるぞ⁇」

 

「お疲れ様です。どうぞ〜」

 

まっくすからボーちゃんを引き剥がし、奥へと連れて行った

 

スカイラグーンの一室を借り、机の上にボーちゃんを置いた

 

「お前機雷だったのな」

 

ボーちゃんは触手で丸を作った

 

「機雷のままだったら、まっくすの傍には置いておけないな」

 

ボーちゃんはシュンとした

 

余程まっくすが気に入ったみたいだ

 

「俺が信管取り除いてやるから、暴れるんじゃないぞ⁉︎」

 

ボーちゃんは触手で丸を作り、すぐに後ろを向いた

 

機雷の信管を抜くなんざ、俺にとっては艦載機を操るより簡単だ

 

信管と火薬を取り除き、頑丈な箱の中に入れ、ボーちゃんの蓋をガッチリ閉めた

 

「終わったぞ」

 

振り返ったボーちゃんは、触手を合わせてスリスリしている

 

「お礼してるのか⁇」

 

ボーちゃんは触手で丸を作る

 

「感情が分かりにくいな…よしっ‼︎」

 

 

 

 

「レイ遅い」

 

まっくすとれーべときそはジュースを飲みながら、俺の帰りを待っていた

 

「まっくす。ホラッ‼︎」

 

俺の手元にはボーちゃんがいた

 

「ボーちゃん」

 

”(≧∇≦)”

 

まっくすの胸元に飛び込んだボーちゃんは、喜びを表す顔文字が表示されていた

 

「顔文字出てる」

 

「感情が分かりやすいだろ⁇いいかボーちゃん…」

 

”(・_・)”

 

「まっくすに変な事したら解体だからな⁇」

 

”(T ^ T)”

 

「泣くんじゃない‼︎」

 

”(♯`∧´)”

 

「レイ。大丈夫。変な事したら、私が照月に食べさせる」

 

「それもそうだな‼︎」

 

”(・_・;?”

 

その後ボーちゃんは基地に着くまでまっくすの小さな隆起を楽しんだが、基地に着き、照月の姿をしばらく見た後、まっくすに変な事をするのをやめたという…

 

 

 

 

 

海軍総司令の救出に成功しました‼︎

 

深海忌雷”ボーちゃん”が、まっくすにくっ付きました‼︎




椎名 徹…海軍総司令官。グレンデル隊隊

横須賀より上の立場の人間

考えるより体が先に動いてしまうタイプで、何でも出来るタイプの人

戦闘機も乗る事ができ、他のエース部隊に見劣りはするが、統率が取れた部隊である

レイ達の行動を軽く監視はしていたが、今回の件で白紙になった




真田…総司令の側近その1

総司令に近付く者はすぐに斬り捨てるタイプの人

剣の腕は立つが、チョット融通が利かない悪い所がある

グレンデル隊2番機”ダンテ1”であり、数々の戦いを切り抜け、今はこの場所に落ち着いている





椎名ジュニア…総司令の側近その2

本名は椎名 あかり

総司令の息子の為、レイ達にさえ”ジュニア”と呼ばれている

女の子みたいな名前の為、ジュニアで良いらしい

実はワンコの同期であり、ワンコとも仲が良い

提督の資格は一応持っている為、いつか何処かの基地に配属されるかも知れない





ボーちゃん…深海忌雷

パラオ基地の地下で見つけた深海棲艦

ボールに似てるからボーちゃんらしい

敵意どころか人間にビビりまくり、呆れ果てたレイ達が連れて帰って来た

名前を付けてくれたまっくすに懐き、胸を触ったりと変態行為を繰り返す

作者は深海忌雷になりたい

顔文字で感情を出す事が可能で、触手を使い、たいほうとお絵かきするのが趣味

まっくすに変な事をすると、彼女に蹴り飛ばされて、暁の水平線に飛んで行く事がしばしばあるが、本人がドの付くMな様で、興奮しながら10分程で基地に帰って来る

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