艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、112話が終わりました

今回のお話は、前回のラストで出て来た三人の人物が明らかになります


113話 悪の巣(1)

基地に帰ると、滑走路付近に三機の戦闘機が停まっていた

 

普通の戦闘機なら良かったが、あの戦闘機には見覚えがあった

 

「Su-33だ…」

 

「見た事のないエンブレムを付けてら…」

 

黒いボディにステルス塗料だろうか⁇若干の光沢が見えた

 

食堂に入ると、三人はコーヒーを飲んでいた

 

「お待ちしておりました」

 

相変わらず両脇にいた二人は話さず、中心にいた年配の男性が話を進めた

 

「あの機体はあんたらのか⁇」

 

「えぇ。非公式ですが、貴方方と同じです」

 

「それで⁇何故私達をお探しに⁇」

 

「これを」

 

彼が出したのは、3枚の書類と写真

 

・フィリップ

 

・スペンサー

 

・イェーガー

 

深海の艦載機から人間の味方になった機体ばかりだ

 

「お〜お〜、こんなモン何処で撮った⁉︎」

 

「それと…この二機も」

 

・F-15/MTD Snow Queen

 

・YF-23改 ヘラ

 

俺達の載ってる戦闘機ばかりだ

 

「この機体を何処で入手しました⁇」

 

隊長は書類を机に起き、タバコに火を点けた

 

「申し訳ありませんが、名も知らぬ人物に教える義務は御座いません。どうぞ、お引き取りを」

 

「これは失礼。私はこう言う者です」

 

名刺を受け取り、名前を見る

 

”日本海軍総司令

 

椎名 徹”

 

「ほぅ…横須賀より上、ですか」

 

「我々は提督と言う職業を利用して悪手する人物を探っていましてね。それで今回、ここに監査を入れる事にしたのです」

 

「もっと探る場所はあるんじゃないのか⁇」

 

俺の一言で、場の空気が変わった

 

「君はマーカス大尉だったね。着任して数年、一度も昇級も降級もしていない…何故だ」

 

「断ってるからだよ。高級将校は俺には似合わないんでね」

 

「大佐。貴方もだ。貴方は経歴と戦果を見る限り、二回は元帥になっても可笑しくない」

 

「同じです。デスクワークは嫌いでね」

 

「なるほど…まぁ、それもいいでしょう。本題に戻します。これらの機体を何処で入手しました⁇」

 

「答える義務は無い」

 

「ははははは‼︎」

 

椎名は隊長の淡白な対応に高笑いした

 

「やはり、貴方方には力で分からせるしか無いようですね。良いでしょう、表へ」

 

「断る」

 

「ほぅ…仮にも上官に対して逆らうのか⁇」

 

「貴方方の力量じゃ、我々に勝てない」

 

隊長は呑気にコーヒーを飲み、椎名をいなす

 

「貴様‼︎」

 

椎名が隊長の胸倉を掴んだ瞬間、隊長はニヤリと笑った

 

「本物の椎名は何処だ」

 

「なっ…」

 

隊長がそう言った瞬間、脇にいた二人がビクッと動いた

 

「動くな」

 

咄嗟に二人にピストルを向け、足止めをする

 

「あんたの服から麻薬の臭いがする。悪手してんのはアンタの方じゃないのか⁇」

 

「マーカスさん‼︎」

 

脇にいた二人の内の一人が軍刀を俺に投げた

 

咄嗟にそれを取り、椎名の首元に置いた

 

「動くなよ。ビックリする程すぐ引くからな」

 

「くっ…」

 

椎名は隊長を離し、手を上げた

 

隊長はすぐに椎名を紐でグルグル巻きにし、工廠の真ん中に置いた

 

俺は二人の話を聞く為、食堂に戻って来た

 

「申し訳ありませんでした‼︎」

 

二人は俺を見るなり土下座をし、床に頭を擦り付けた

 

「まぁまぁ、頭上げな。事情があるみたいだな」

 

「実は…」

 

 

 

二人の名は

 

右利きの男が真田

 

良い目をしている

 

左利きの男が椎名

 

日本海軍総司令の息子みたいだ

 

数日前、パラオに視察に行った時、稼働していないはずの施設が動いている事に気付き、中に入った途端に総司令が引っ捕らえられたらしい

 

それで二人は言う事を聞かざるを得なくなり、総司令を救える可能性がある俺達の所へ来た…と言う訳だ

 

「パラオか…どうもあそこは因縁があるな…」

 

「無礼を承知でお願いします。どうか、司令を…」

 

二人は再び頭を下げる

 

「あ〜も〜‼︎わ〜ったわ〜った‼︎」

 

「ただいま〜‼︎」

 

照月が帰って来た

 

「丁度いい。照月、隊長の所にいる男にのし掛かってくれないか⁉︎」

 

「のし掛かればいいの⁇分かった‼︎」

 

二つ返事で照月は隊長の所に向かった

 

俺と二人も準備の為、工廠へ向かう

 

「いいか照月。思い切りのし掛かるんだ」

 

「分かった‼︎えいっ‼︎」

 

工廠が揺れる

 

同時に骨が折れる音と悲鳴が聞こえた

 

偽物椎名は、少女一人にのし掛かられても大したダメージは無いと踏んでいたのだろう

 

だが、相手は1t照月

 

歯向かえるハズも無かった

 

「さぁっ‼︎次は足行こうね〜‼︎」

 

照月がのし掛かると、足は反対方向に曲がった

 

「こんな感じかなぁ⁇後は何処がいい⁇」

 

偽物椎名は既に虫の息だ

 

「答えろ。本当の総司令は何処だ」

 

「パ…ラオ、の地下、施設だ…」

 

「そっか…痛いか⁇」

 

「いたい…」

 

「助かりたいか⁇」

 

「助、かり…たい…」

 

「ダメだな。二度目は無い」

 

「どし〜ん‼︎」

 

「うぼっ…」

 

俺達だから耐えられるものの、普通の人間が1tも支えられるはずもない

 

「よし、照月。もう気絶してる」

 

「照月、まだどし〜ん出来るよ⁇」

 

「次どし〜んしたら死んじゃうからやめなさい‼︎」

 

「分かった‼︎」

 

そうは言うも、偽物椎名は虫の息

 

致し方なく、カプセルの中に放り込んだ

 

「ちったぁそこで反省してろ‼︎」

 

カプセルの中では、意識は無くても生きては行ける

 

それに、多少暴れてもカプセルは壊れない

 

「きそ、横須賀に連絡してくれ。俺達はパラオに向かう」

 

「オッケー。偽物はどうする⁇」

 

「大湊に頼んで、もっかい蒼龍送りだな」

 

「あ〜ぁ…照月のどし〜んで死んどきゃ良かったのに…」

 

「あの…私達は…」

 

「来るなら来い。きそ、自動操縦任せたぞ」

 

「レイはどうするのさ‼︎」

 

「久し振りに艦載機に乗る」

 

隊長ときそに冷や汗が出る

 

レイは艦載機に乗るのがド下手だ

 

現にタイコンデロガ・改から発艦した時、フィリップの補助が無ければ海に転落していた程だ

 

「れ、レイ。何ならクイーンに…」

 

「たまには乗ってみる」

 

それぞれの機体に乗り、パラオを目指す

 

「え〜と、これがこうで、あれがあぁで…まっ、飛べりゃあ良いか‼︎」

 

楽観的な考えでエンジンを吹かす

 

「速い速い速い‼︎ストップストップ‼︎」

 

《レイ、やっぱり代わろうか⁇》

 

「い、いやぁ、大丈夫さ‼︎」

 

無線の先の隊長に笑い半分で答えた時、肘で何かのスイッチを押してしまった

 

《ミサイル、発射》

 

「アカン‼︎」

 

左翼の下で何か動いている‼︎

 

《仕方ないわね…》

 

叢雲の声が聞こえた瞬間、ミサイルは落ち着いた

 

《犬。電子機器は任せなさい。犬は操縦に集中して。いいわね⁇》

 

「頼んだ。艦載機はからっきしだ‼︎」

 

《人間誰しも欠点はあるわ。気を付けて行ってらっしゃいな⁇》

 

「オーケー。愛してるぜ‼︎」

 

《はいはい》

 

五機が上がって行く

 

その伝達は、スカイラグーンにも伝わっていた

 

近海警備に当たっていたれーべとまっくすは、任務を遂行した後、スカイラグーンで一息ついていた

 

「おかーしゃん‼︎飛行機飛んで行った‼︎」

 

「あらあら、大佐と…」

 

そこにいた全員が異変に気付いていた

 

いつも二機編成の彼等が、今日は五機で飛んでいる

 

しかも最後尾の機体はフラフラ

 

「パパとレイ、何かあったのかな⁇」

 

「扶桑さん。高速艇、借ります」

 

「えぇ。気を付けてね⁉︎」

 

まっくすは何かに気付いたのか、停泊してある高速艇の一つに乗り込んだ

 

「無線を傍受した。パパ達はパラオに行く」

 

「よし。僕達も行こう‼︎」


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