艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

360 / 1086
112話 鶴は再び舞う〜鬼神と3つの刃〜

その頃式場では…

 

「貴様が鬼神か。待っていたぞ」

 

「ドーピングしてるダズル‼︎」

 

逢ってはならない二人が出逢ってしまっていた

 

「あら、貴方達。演習でもする⁇」

 

「うぬ。我は鬼神と拳を交えるのを心待ちにしていた…」

 

「榛名は待ってないダズル‼︎」

 

あくまで榛名は戦いたくない様子だ

 

「流石の榛名でもあんなゴリゴリは無理ダズル‼︎」

 

「ワンコ」

 

「ひっ…」

 

ふちさんが来た途端、ワンコが榛名の背後に隠れた

 

「…提督⁇何ビビってるんダズル⁇」

 

「は、榛名。行こう…」

 

「お、おい‼︎イヤダズル‼︎」

 

ワンコは榛名の手を引こうとしたが、榛名はそれを拒んだ

 

「何だか知らんが、榛名の提督をビビらせるとは良い度胸ダズルな」

 

「あれ…⁇榛名は、ワンコの子⁇」

 

「そうダズル。いいダズルよ、ゴリゴリ。榛名とタイマン張るダズル‼︎」

 

榛名はハンマーを持ち、ワンコの頭を撫で、こっそり耳打ちした

 

「奴は潜水艦ダズル。恐らく榛名に勝ち目は無いダズル…」

 

「ならレイさんの所に行こうよ…」

 

「ここで逃げたら、榛名は提督の嫁失格ダズル。これが榛名の生き様ダズル。いいな」

 

「あ…」

 

榛名は勇ましく海上へと向かった

 

だが、海上に居たのは羽黒だった

 

「貴様が相手ダズルか⁉︎ゴリゴリは何処に行ったんダズル‼︎」

 

「さ〜ぁ⁇何処でしょう…ねっ‼︎」

 

開始合図待たずの、羽黒の先制砲撃

 

「がっ…」

 

だが、倒れたのは羽黒の方だった

 

「まぁ…卑怯とは言わんダズル」

 

黒煙の中から見えた榛名は、何かを放った体制で出て来た

 

「榛名の武装がハンマーだけと思ったのが、貴様の敗因ダズル」

 

「ぐっ…強い…」

 

羽黒の眉間からは血が流れていた

 

たった一発のトンカチ投擲で、羽黒は大破判定を受け、海上から離れた

 

「けったクソ悪い女ダズル。後はゴリゴリダズルな…さて」

 

ハンマーを構え、榛名は海面を見回す

 

榛名は対潜装備が無く、武蔵の様に素手で行くか、モグラ叩きの様に出て来た所に一撃を喰らわせるしか無い

 

「ぐわ‼︎」

 

いきなり足を掴まれ、榛名は海中に引き摺り込まれた

 

息が苦しくなる中、ゴリゴリまるゆの顔が見えた

 

榛名はゴリゴリまるゆの顔を蹴り飛ばし、何とか海上に戻って来た

 

「ぷはぁ‼︎よ〜し、いいダズル。榛名を怒らせたダズルな‼︎」

 

榛名は振袖から何かを取り出し、ピンを外して海に落とした

 

数秒後、魚がプカプカと浮き始め、その中にまるゆも浮いて来た

 

「おい‼︎起きるんダズル‼︎」

 

完全に気絶しているまるゆを掴み上げ、何度か頬を叩くと目を覚ました

 

「ぬ…」

 

「榛名の勝ちにするか、それとも口にコレを突っ込まれるか…二者択一ダズル」

 

榛名が手にしていたのはT-爆弾だ

 

海中に落としたのもT-爆弾で、まるゆや魚は酸素不足になり、海上へと浮いて来たのだ

 

「我の…負けだ…」

 

「榛名はタイマンと言ったダズル。それなのにゴリは二人で来たダズル。まっ、言い訳は聞いてやるダズル」

 

「いや…我の負けだ。鬼神よ、うぬと拳を交える事が出来て光栄だ」

 

「再戦はいつでも待ってるダズル」

 

榛名は懐が大きい

 

やはりワンコの影響が大きい様だ

 

「榛名‼︎」

 

「いやぁ〜、辛勝だったダズル。ははは」

 

頭を掻きながら榛名はワンコの所に帰って来た

 

そんな榛名を、ワンコは思い切り抱き締めた

 

「こ、コラ‼︎榛名はビチョビチョダズルよ⁉︎」

 

「あれが姉さんのやり方だ…」

 

ふちさんは顔に似合わず、姑息な手が上手い

 

悪い意味で言えば、卑怯で狡猾

 

良い意味で言えば、相手の裏をかく攻撃

 

だが、鬼神の前では意味が無かった

 

「羽黒はプリンツと比べるとガッツもスタミナも無かったダズル。ゴリは普通に強かったダズルな‼︎」

 

「ワンコ…」

 

申し訳無さそうなふちさんがワンコの所に来た

 

「羽黒を出したの、私なの…」

 

「知ってる。姉さんは昔から卑怯だ」

 

「でも、これだけは信じて⁇まるゆは一人で行くつもりだったの」

 

「榛名は卑怯と思って無いダズルよ⁇」

 

「榛名ちゃん」

 

「戦い方には色々やり方があるダズル。二対一位で、榛名は文句言わんダズル。あれもまた戦い方ダズル」

 

泣きそうになるワンコを抱き留めて頭を撫でながら、榛名はふちさんを諭していた

 

「流石は鬼神…懐も大きい」

 

「そう思うなら、次はゴリとタイマンさせるんダズル。いいな⁇」

 

「うんっ。分かった。お風呂、使ってね⁇」

 

ふちさんは軽く頭を下げ、まるゆの所に帰って行った…

 

「ホレ、もう大丈夫ダズル」

 

「ん…」

 

ワンコはオドオドしていた

 

余程のトラウマがあるのだろう

 

「提督…」

 

榛名はワンコの前に膝を落とし、彼の手を握った

 

「何も無理しなくて良いんダズル。榛名が全部護ってやるダズル。なっ⁇」

 

「うん…」

 

「だったらホレッ‼︎元気出すんダズル‼︎」

 

榛名に背中を叩かれ、ワンコは俺達の所へ来た

 

「にむ。そこにいるんダズル⁇」

 

榛名が呼ぶと、置かれていた物資の影からにむが出て来た

 

「上手くいったにむ⁇」

 

「普段散々にむの相手してなきゃ、倒せ無かったダズル」

 

「にむにむにむ…」

 

榛名はにむを提督から引き剥がす為に、日夜彼女と戦闘を続けている

 

海中でT-爆弾を起爆させて潜水艦を気絶させる方法もにむとの戦闘で覚えたのだ

 

にむは姿を消すのが上手く、もう姿は見え無かった

 

式場に戻ると、榛名は拍手で迎えられた

 

「拍手喝采ダズル」

 

あれだけゴリゴリのまるゆに勝ち、尚且つ二対一の状況で、無傷で二隻共大破判定を出したのだ

 

榛名は改めて最強になっていた

 

 

 

 

「に〜むにむにむ‼︎榛名は満足そうにむ‼︎」

 

にむは離れた所から榛名の様子を見ていた

 

「君」

 

「にむ⁇」

 

振り返ると、そこには三人の男性がいた

 

「この写真に載っている人物を御存知ないかね」

 

中心にいた男性が写真を見せた

 

「にむ知ってる。提督の上司みたいな人にむ」

 

「ほう…そうか。彼はここに⁇」

 

「どっかにいるはずだにむ」

 

「そうか。ありがとう」

 

三人は人だかりに向かって行った

 

「怪しいにむ…」

 

 

 

 

 

 

「さぁ‼︎そろそろお開きにしましょう‼︎舞鶴をこれからもよろしくお願いします‼︎」

 

横須賀の言葉で、再建祝いは幕を降ろした

 

皆が帰路に着く中、俺達は照月を引っ張っていた

 

「せ〜のっ‼︎」

 

「ぐっ‼︎」

 

照月のお腹に紐を回し、大人数人で店から引っ張り出す

 

「えいっ‼︎」

 

「ぐわっ‼︎」

 

照月はいとも簡単に紐を引き千切り、大人達がひっくり返る中、照月はおもむろにエクレアを口にする

 

「やっべぇ…」

 

「お兄ちゃん、何で照月引っ張るの⁇」

 

「お、おうちに帰ろう⁉︎良い子だから‼︎なっ⁉︎」

 

照月は体型は変わっていないが、かなり重くなっており、引っ張ろうにも大人数人でもビクともしない

 

「お店…シャッター閉まってる」

 

照月はミニ商店街にある食べ物関連の店をほとんど壊滅状態にしていた

 

洋菓子店…半壊

 

ラーメン屋…全壊

 

喫茶店…ほぼ全壊

 

ハンバーガーショップ…半壊

 

ステーキハウス…閉店

 

レストラン…半壊

 

そして駄菓子屋に至っては、中がスッカラカンになっている

 

「埋め合わせはすっから‼︎今は紐握れ‼︎」

 

「お兄ちゃん、抱っこ‼︎」

 

「抱っこ⁉︎ぐわっ‼︎」

 

照月がくっ付いた瞬間、背骨がバキバキッと鳴った

 

「おごごごご‼︎お、折れ…」

 

「さぁっ‼︎おうち帰ろう‼︎」

 

照月を二式大艇に乗せるが、二式大艇が沈み始めた為、照月だけ大型タンカーで輸送される事になった

 

「いててて…参ったなぁ…」

 

「さっき体重測ったら1t近くあったらしいぞ」

 

「ナンボ程食ってんだよ…」

 

「ウィリアム・ヴィットリオ…そしてマーカス・スティングレイ…ようやく見付けた」

 

俺達が振り返ると、後ろに男が三人立っていた

 

「誰だ⁇レイ、知り合いか⁇」

 

「知らん…」

 

「先に貴方方の基地に向かいます。そこでお話を」

 

そうとだけ言い残し、三人は去って行った

 

「なんだなんだ⁇軍刀なんか持って恐ろしい‼︎」

 

「人の事言えんだろ⁇」

 

隊長と顔を見合わせ、互いに鼻で笑う

 

「とにかくだ。基地に帰ろう」

 

「だなっ」

 

「早く乗るかも〜‼︎」

 

秋津洲が呼んでいる

 

二式大艇に乗り、俺達は基地に戻った…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。