艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、110話が終わりました

激動の110話でしたが、鹿島はこの後もちょくちょく出て来ます

今回のお話は、横須賀に学校ができ、たいほうが通い始めるお話です


111話 がっこー

学校が横須賀に出来た

 

「がっこー」

 

頭の上にいるたいほうは、リュックを背負い、今か今かと楽しみにしている

 

今日から毎週、金曜日の朝から昼の3時まで行われる

 

「そうだそ〜。給食もあるし、色んな人と出逢える」

 

「きゅーしょく⁇」

 

「お昼ごはんだなっ。よいしょ…」

 

たいほうを降ろし、軽く身嗜みを整えた

 

「よしっ‼︎行ってこい‼︎」

 

「いってきます‼︎」

 

たいほうを見送り、横須賀の執務室に向かった

 

「横須賀ぁ‼︎」

 

扉を蹴破ると、横須賀は漫画を読んでいた

 

「オメ〜仕事はどうしたっ‼︎」

 

「あっ‼︎」

 

漫画を取り上げると、にやけ顏の横須賀が一瞬見え、すぐにいつもの横須賀に戻った

 

「なぁに⁉︎私だってたまにはサボるわよ‼︎」

 

「飯行くぞ‼︎」

 

「ちょ、ちょっと待ってて‼︎」

 

横須賀が奥の部屋に入ったのを確認して、没収した漫画を読んで見た

 

たいほう並にロリッロリの女の子が沢山出て来ている

 

見てるだけで口が甘くなりそうだ…

 

「オッケー‼︎行くわよ‼︎」

 

「ホラよ」

 

「これは置いとくわ。明石‼︎何かあったら連絡頂戴‼︎」

 

「了解です‼︎」

 

「さっ‼︎行きましょ‼︎」

 

俺が誘ったのに、何故か横須賀が主導権を握っている

 

基地を出てすぐ、冷たい風が吹いた

 

「さぶっ‼︎」

 

「年がら年中タンクトップのアンタが寒がるとはねぇ…ほらっ」

 

横須賀が腕を組んで来た

 

数年振りだ

 

横須賀は体温が高く、いつも温かい

 

それに、いい匂いもする

 

「…サンキュー」

 

「はいはいっ」

 

繁華街に行き、間宮に入った

 

「ホットコーヒーと小倉トースト」

 

「私もそれ‼︎」

 

「かしこまりました。レイさん、今日は生はどうされますか⁇」

 

「今日はいいや」

 

「かしこまりました。少々お待ち下さいね」

 

間宮が厨房に向かうのを見て、タバコに火を点けた

 

「吸うか⁇」

 

「ううん。随分前にやめたの」

 

「そっ」

 

タバコをポケットに仕舞うと、離れた席から聴き覚えのある声が聞こえて来た

 

その声を聞き、咥えたタバコの灰が足に落ちた

 

「気になるなら出る⁇」

 

「いや、いい」

 

少し考えれば分かる事だ

 

学校が出来たし、生徒に教えに来たのだろう

 

だが、あの出来事からまだ数日

 

完全に踏ん切りがついていないと言えば、嘘になった

 

「ならコッチ見なさい‼︎アンタの嫁はコッチよ‼︎」

 

横須賀に顔を持たれ、無理矢理彼女の方に向けられた

 

「すまん」

 

「立ち直れなくて当たり前よ⁇逆にこんな短期間で立ち直ってたら、アンタの神経疑うわ⁇」

 

「お前は優しいな…」

 

「失礼ね。いつも優しいでしょうが」

 

二人は笑った

 

昔からそうだ

 

こいつが笑うと、色んな意味でホッとする

 

「私が埋めてあげるわ。いつか鹿島を越えられる様に…ねっ⁇」

 

「うん…」

 

「だったらホラっ‼︎ちょっとは元気出して食べなさい‼︎」

 

背中を叩かれた後、注文した小倉トーストを齧った

 

「たいほうちゃんは上手くやってるかしら⁇」

 

「まぁ、元は賢いからな…」

 

コーヒーを飲みながら、二人はたいほうの心配をした

 

確かにたいほうは元は賢いが、たまに抜けている所がある

 

貴子さんに似てるのか、時たま頑固な所がある

 

「れ…レイ⁇」

 

鹿島が気付いた

 

「幸せか⁇」

 

「え…えぇ…」

 

「なら良かった。学校にはたいほうがいる。よろしく頼むぞ⁇」

 

「レイ…その…」

 

「なんだ⁇」

 

「私、レイの事、最初は殺したい程憎んでた…」

 

「だろうな」

 

「でも、最後の方は本当に幸せでした…みんなに囲まれて…貴方がいて…それは本当です‼︎」

 

「…」

 

呼吸が重くなる

 

鹿島は俺が何もかも気付かないと思っていたのだろうか…

 

「…今の方が幸せだろう⁇本当に好きな人の所にいれて、誰も憎まなくていい」

 

「レイ…」

 

「今まで通り話してくれたっていい。鹿島が良ければ、だけどな⁇」

 

「…はいっ‼︎」

 

「ホラ行けっ。旦那が待ってるぞ‼︎」

 

俺といた時より遥かに幸せそうな鹿島を見て、ため息が出た

 

「レイ、無理しなくていいのよ⁇」

 

「してないさっ。いつも通りの俺だろ⁇優しくてイケメンで博識な‼︎」

 

「そうそう‼︎バカでマヌケでアホなアンタが一番よ‼︎」

 

「言いたい事言いやがって…」

 

「素直でいいでしょ⁇」

 

こいつといると、本当に時間が短い

 

素の俺でいられるし、なんせ全部受け止めて理解してくれる

 

間宮から出て時計を見ると、一時になっていた

 

「レイ、服買ってあげるわ‼︎」

 

「いらん。足りてる」

 

「ダ〜メッ‼︎アンタそろそろ風邪引くわ⁇」

 

服屋に連れて行かれ、横須賀はこれは似合う、これなんかどう⁇と悩み始める

 

「ありがとうございました〜」

 

「結局革ジャンなのね…」

 

「これが一番落ち着くんだよ‼︎」

 

「ん〜…まぁいいわ。そろそろたいほうちゃん迎えに行きましょ⁇」

 

学校の前に行くと、ゾロゾロと生徒が帰って来た

 

「ばいば〜い‼︎」

 

たいほうも出て来た

 

手には紙を握っている

 

「おかえり‼︎」

 

「たらいま‼︎」

 

俺を見るなり、すぐに抱き付いて頭に登る

 

「かしまいたよ‼︎」

 

「そっかぁ〜。何教えてた⁇」

 

「こくご‼︎これみて‼︎」

 

たいほうの持っていた紙は、簡単なテストの様だ

 

「どれどれ…」

 

問題を見ると、小学校で習う言葉を勉強していた様だ

 

ただ、たいほうのテストは罰印が多い

 

その答えはすぐに分かった

 

問題はこうだ

 

問題…はんたいのことばをこたえましょう

 

・あつい

 

・おもい

 

・あかるい

 

・すくない

 

・すき

 

たいほうの答え

 

・あつくない

 

・おもくない

 

・あかるくない

 

・おおい

 

・すきじゃない

 

 

 

解答を見て、笑いが止まらなくなった

 

「かしまケチなんだよ。たいほうあってるよね⁉︎」

 

「あってるわ…あってるけど…」

 

「くくくっ…」

 

確かにたいほうの解答は、ある意味正解だ

 

「たいほう、夏は暑いよな⁉︎」

 

「なつはあついよ⁇かきごおりがおいしいね‼︎」

 

「じゃあ冬はどうだ⁇」

 

「ふゆはさむいよ。たいほうゆきだるまつくりたいの」

 

「じゃあ、この答えは”さむい”だな⁇」

 

「わぁ。すてぃんぐれいかしこい‼︎」

 

たいほうは凄いと思う

 

何処に居ようが、子供がいたら…と言う気分を味わわせてくれる

 

恐らく横須賀も同じ気分だと思う

 

基地に入るまで俺達は三人でたいほうのテストの答案を考えながら歩いた

 

「じゃあね。今日は楽しかったわ‼︎」

 

「次の休みは、どっか行こうな⁇」

 

「ふふっ、ありがとっ。私も料理練習するわ」

 

横須賀を見送り、帰りの高速艇に乗り込んだ

 

「よこすかさん、すてぃんぐれいのおよめさん⁇」

 

「そうだぞ〜。たいほうは偉いな‼︎」

 

「かしまは⁇」

 

「鹿島はそうだな…友達だ‼︎」

 

「たいほうとすてぃんぐれいといっしょ⁇」

 

「そうだっ。俺もたいほうも友達だもんな‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

終始嬉しそうなたいほうを膝に乗せ、久し振りの船に揺られ、基地に帰った…


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