艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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109話舞鶴再建”照月、ラーメンを食べる”

「この子が秘書艦の、え〜と…」

 

ふちは上を向いて悩みだした

 

「重巡洋艦”羽黒”です」

 

お淑やかそうで、純潔を絵に描いた様な女性だ

 

どっかで見た様な…

 

「ふちさん。貯蔵庫を見せてくれる⁇」

 

「かしこまりました。どうぞ此方へ」

 

「隊長、レイ、ちょっと待っててね。すぐ帰るから‼︎」

 

横須賀とふちが執務室を出た

 

「はぁ…」

 

二人が去った瞬間、羽黒は提督の椅子にドカッと座った

 

「何しに来た訳⁉︎」

 

「おっと…」

 

羽黒はいきなり態度を変えて来た

 

「秘書艦してんのも楽じゃない訳。用が済んだらサッサと帰ってくんない⁇」

 

「羽黒よ。客人だぞ。丁重にもてなせ」

 

まるゆがごもっともな事を言った

 

「男とか面倒くさいのよ。チラチラコッチ見て来て、隙あらば誘って来るし。付き合ってられないの‼︎」

 

「すまぬな、御二方…羽黒はこういう奴なのだ…」

 

「こういうのは慣れてる。大丈夫さ」

 

「おねぇさん‼︎」

 

そんな険悪なムードの中、照月が羽黒の前に立った

 

「シャリ食べれる様になった⁉︎」

 

「あっ‼︎お前あん時の‼︎」

 

「シャリ残したガール‼︎」

 

照月の一言で疑問が解けた

 

少し前にずいずいずっころばしにいた、シャリ残してネタだけ食ってた女だ‼︎

 

「食べれる様になったわ。貴女のおかげでね⁇」

 

「次は照月とラーメン食べよう⁇」

 

「ラーメンはチョット…」

 

「ちゃんと食べないと、ガリガリになっちゃうよ⁇」

 

「う…」

 

どうやら羽黒は照月に弱い様だ

 

照月は基地の中で武蔵やローマをブッチぎって一番良く食べる

 

巷では”バキューム照月”と言われる位だ

 

だが照月はその分動くので太らない

 

最近は試作の艤装のテストに付き合ってくれたり、たいほうとなわとびもしているのを見掛ける

 

「さぁ‼︎ご飯にしましょう‼︎」

 

横須賀が帰って来た

 

「お前ら何食いたい⁇」

 

「「「ラーメン‼︎」」」

 

三人共決まっていたみたいだ

 

「羽黒。貴女も食べなさい」

 

「はいっ。かしこまりました」

 

ふちがそう言うと、羽黒は素直に立ち上がり、子供達と共に執務室を出た

 

「女は怖いな…レイ⁇」

 

「今に始まった事じゃない」

 

俺がそう言うと、横須賀がキッ‼︎と睨んで来た

 

「まぁいいわ。舞鶴の良い所は、好きな物を食べられる所よ。私達も視察がてら行きましょう⁇」

 

ミニ商店街に戻って来ると、ラーメンの屋台に四人がいた

 

照月の前には既にかなりの量の器が重ねられているが、今は好きにさせよう

 

俺達が入ったのは、喫茶店の様な店

 

雰囲気はそれだが、店員がいない

 

”なんや客か⁉︎”

 

「うおっ⁉︎妖精がしてるのか⁉︎」

 

カウンターに妖精が立った

 

”何にするんや⁇”

 

出されたメニューを見ると、普通の喫茶店の様なメニューがズラッと並んでいた

 

「アイスコーヒー5つと、俺はサンドイッチ」

 

「ピザも頼む」

 

「グラタンもお願いするわ」

 

「私、コーヒーをフロートにして⁇」

 

「我はシーザーサラダを頼む」

 

”任せとき‼︎”

 

注文を聞くと、妖精は厨房に向かった

 

「ここ一帯は横須賀の繁華街をモデルにしたのよ⁇結構イケてると思わない⁉︎」

 

「自由率が高そうだな」

 

「その内、横須賀みたいに一般公開する時間帯も設けようと思うの。二人はどう思う⁇」

 

「良いんじゃないか⁇学生の帰り際とか儲かりそうだ」

 

「人員も妖精で賄えるし、ふちさんが良いなら俺は賛成だ」

 

「私は良いと思う」

 

「じゃっ、決定ね。慣れて来たら一般公開させるわ。チョットまだ〜⁉︎」

 

”早いわ横須賀さん‼︎まだグラタンできてへんねん‼︎”

 

腹が減っているのか、横須賀は妖精達を急かした

 

「あ、そうだ。言うの忘れてた」

 

横須賀が妖精達と言いあっている横で、ふちが何かを思い出した

 

「いつも弟がお世話になってます」

 

「弟⁇」

 

「誰かいたか⁉︎」

 

俺も隊長も、頭の中で世話になっている男性を思い浮かべる

 

ラバウル航空戦隊は多国籍系なので多分違う

 

呉さんは一人っ子

 

トラックさんは年齢的に違う

 

パラオちゃんは女の子

 

「あ」

 

一人思い当たる節がいた

 

「弟は単冠湾の提督です」

 

「ワンコって姉がいたのか‼︎」

 

「初耳だ…」

 

「弟は私を怖がってましたからね」

 

どうやら小さい頃、ワンコを叩き過ぎてワンコから離れて行った様だ

 

ワンコは姉を怖がり、記憶から姉を消して生きているらしい

 

「ま…まぁ、あれだ。今は幸せな生活してるぞ⁉︎」

 

「それならいいです」

 

こんなマヌケそうなのに、やはり人は分からないモノだな…

 

”待たせたな‼︎”

 

ようやく目の前に軽食が運ばれて来た

 

それぞれアイスコーヒーを飲み、頼んだ軽食を口にする

 

「昔ながらの味だな。中々イケる」

 

「グラタンも端が沸騰しててイイわね」

 

「お前の頭と一緒だな」

 

「なっ…何ですって⁉︎」

 

ここでも二人は喧嘩する

 

そんな二人を横目に見る、隊長とふち

 

「二人はいつもこの様な感じですか⁇」

 

「こう見えて夫婦なんだ…」

 

「ほへぇ」

 

隊長から見ても、やはりふちは抜けていた

 

「時にウィリアム殿」

 

サラダを食べながら、まるゆは隊長に話し掛けた

 

「何処かの基地にハンマーを振り回す榛名が存在すると聞いた。その榛名はウィリアム殿の…」

 

「いや。君の弟の基地さ。あの榛名は強いぞ⁇」

 

「そうか…しかし、いつかは逢瀬してみたいものだ…」

 

このまるゆなら、あの榛名に勝てるかも知れない…

 

「食った‼︎子供達見てくる‼︎」

 

「頼んだぞ」

 

「ごちそうさん‼︎」

 

俺はとにかくあの輪から出たかった

 

まるゆの体格に耐えられなかったんだ…

 

あそこまで来たら、もう芸術だ…

 

外に出てラーメンの屋台に向かうと、たいほうときそがベンチに座ってシェイクを飲んでいた

 

「照月は⁇」

 

「らーめんたべてるよ」

 

「見てるだけでお腹いっぱいだよぉ…」

 

チビチビとシェイクを飲む二人と話していると、ラーメンの屋台の方から、麺を啜る音が聞こえて来た

 

屋台の周りにはベンチしか無く、照月はベンチにラーメンを置き、器用に食べている

 

「レイ、早く止めないと潰れるよ⁇」

 

「…止めてくる」

 

きそに見送られ、屋台の前の照月のラーメンを、そ〜っと取り上げた

 

「あっ‼︎」

 

「ったく…何杯目だ⁇」

 

「”まだ”83杯目だよ⁉︎」

 

照月の目は”まだ行ける‼︎”と、訴えかけている

 

「”まだ”じゃない‼︎”もう”だ‼︎潰れちゃうぞ⁉︎」

 

「うん…」

 

「それで最後だぞ⁉︎」

 

「分かった」

 

「羽黒は食ったか⁉︎」

 

「食べたわ。一杯だけだけど」

 

「普通はそうなんだよ」

 

そう言いながら、幸せそうな照月の頭を撫でる

 

「提督との話は終わったの⁇」

 

「終わった。後は建設中の工廠施設を見たら帰るよ」

 

「早くしてよね」

 

「お〜怖い怖い」

 

終始羽黒はそっぽ向いていたが、反面照月が幸せそうな顔をしていた

 

隊長達が迎えに来た後、まだ造りかけの工廠施設を見た

 

きそとたいほうはシェイクを飲みながら着いて来た

 

「おいしいね‼︎」

 

「たいほうちゃん、こっち向いて…」

 

きそは、シェイクでドロドロになったたいほうの口を拭いたり、これでもかとたいほうの面倒を見てくれている

 

照月⁇照月は食後のお昼寝中だ

 

「まぁ、まだ造りかけだからなんとも言えないわね…」

 

「野郎共‼︎集合〜‼︎」

 

俺の一言で、妖精がゾロゾロと集まって来た

 

「どこで言ってもそれで来るのか⁉︎」

 

「俺も元妖精だしな。此奴等も何と無くだろ⁇良いかお前ら。工廠が出来上がったら、ちゃんと提督に説明してやるんだぞ⁉︎分かったか⁉︎」

 

”しゃ〜ないな〜致し方無く、やで⁇”

 

”めんど〜い”

 

”いやや〜”

 

ダル〜ンとした妖精ばかりだ

 

「良いか⁇ちゃんとしたら、ジュースサーバー造ってやる。それでどうだ⁇」

 

”任しとき‼︎”

 

”提督の為や‼︎”

 

”何でも言うてや‼︎”

 

「現金な奴等め…まぁいい。頼んだぞ⁇」

 

妖精達は蜘蛛の子散らす様に去って行った

 

「ありがとう、レイさん」

 

「まっ。その内弟君と榛名には話をしといてやるよ」

 

「はいっ」

 

「頼んだぞ」

 

終始まるゆに対して笑いを堪えるのが必死だった…

 

 

 

 

二式大艇に乗り、全員確認した所で、秋津洲はエンジンを吹かした

 

俺は帰りはようやく普通の席に座り、膝の上では照月が寝息を立てていた

 

たいほうは隊長の膝の上で折り紙

 

きそは横須賀の横で二本目のシェイクを吸っていた

 

外ではふちとまるゆが手を振っている

 

「あのまるゆヤベェな…」

 

「人間、変わろうと思えば変わるモノよ⁇」

 

「あの〜…」

 

秋津洲が申し訳なさそうに話し掛けて来た

 

「さっきは申し訳なかったかも‼︎」

 

「素直な奴は好きだから許してやろうじゃないの‼︎」

 

「レイさんは提督なの⁇パイロットなの⁇エンジニアなの⁇どれかも⁉︎」

 

「全部だ全部‼︎」

 

「凄いかも…だから提督が欲しがるかも⁉︎」

 

「レイは良い所あるのよ⁇肩書きよりも…いっぱい…」

 

横須賀に褒められると、背中に悪寒が走る

 

「ま、まぁ⁉︎横須賀もたま〜〜〜に可愛い所あるし⁉︎」

 

俺は照れ隠しで窓の外を眺めているが、横須賀はずっとこちらを見ていた

 

「しかしまぁ…あのふちとか言う提督。相当マヌケ臭がするな…」

 

「それは思ったな…」

 

「あの人なら大丈夫よ。考えてもご覧なさい。あのまるゆを従えてるのよ⁉︎」

 

「言われてみれば…」

 

ワンコも榛名を従え、ふちさんはゴリゴリまるゆを従え…

 

やはり、兄妹は似るのだな…

 

二式大艇の中で話が尽きる事はなく、あっと言う間に基地に着いた

 

「じゃあな」

 

「気を付けて帰るんだぞ」

 

「また明日お邪魔しますね‼︎では‼︎」

 

「ばいばいかも〜‼︎」

 

二式大艇は再び空に向かった…

 

舞鶴鎮守府視察の一日は、こうして幕を閉じた…

 

 

 

 

 

舞鶴鎮守府が再稼働します‼︎




ふち…舞鶴鎮守府の提督

破壊された舞鶴鎮守府を再建し、そこに着任した女性提督

ワンコの姉であり、相当マヌケ

まるゆや羽黒の名前も覚えていない位マヌケ

ふち本人はワンコの事が好きだが、無意識の暴力を振るっていたらしく、ワンコの記憶からは抹消されている




羽黒…腹黒シャリ残したガール

少し前にずいずいずっころばしでシャリを残していた女性

バクバク食べる照月の押しに弱く、最近少しずつだが色々食べ始めた所、体が健康になって来た

男性に対してかなり冷たく当たる悪い癖がある




まるゆ…ゴリゴリまるゆ

プロテインの過剰摂取と、度重なるトレーニングの末、筋骨隆々になったまるゆ

着任する前までは資料にあるようなナヨナヨッとした普通のまるゆだったが、陸軍の新薬投与により、筋肉量が大幅に増加した

イチゴ味のプロテインを愛飲し、食事制限もしっかり行った結果、この様な事態になった

当時の面影は殆ど無く、口調もまるで違う為、最初は皆まるゆとは分からない

唯一残っている面影が、服の真ん中に赤で書かれた丸と”ゆ”の文字だけ





きそ「次回予告だよ‼︎」

一軸「所詮、我々に似合う花道は、血塗られた花道しかあるまい‼︎よいか‼︎この一軸死すとも花道は残す‼︎行くぞ‼︎」

一軸「狙いは敵の母艦だ‼︎雑魚を相手に構うな‼︎」

一軸「一軸死すとも未来は死せず‼︎やれるものならやってみやがれ‼︎」








きそ「上の次回予告はフィクションだよ‼︎」

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