艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、108話が終わりました

今回のお話は、舞鶴再建のお話です

新しい提督も出てくるよ‼︎


109話 舞鶴再建”その女、マヌケにつき”

「舞鶴に新しい提督が来たわ‼︎」

 

毎朝うるさい位に声を出す横須賀だが、今日のは気になった

 

「呉さんはどうした⁇」

 

「呉さんはその子が来るまでの兼任だったの‼︎」

 

何故か分からないが、今日の横須賀はテンションが高い

 

「何と女性提督よ‼︎」

 

「勘弁してくれ‼︎”コレ”がもう一匹増えんのかよ‼︎」

 

「なっ…」

 

横須賀は頭を抑えた俺の胸倉を掴み、顔を近付けた

 

「なぁに⁇パラオちゃんだって元提督よ⁇それに色気はあるでしょうが‼︎」

 

「あぁ〜…こいつと正反対の奴を願う…美人で可愛くて素直でヒス起こさない子…」

 

「行くわよ‼︎」

 

手を合わせてスリスリしていると、横須賀に首根っこを掴まれた

 

「隊長、貴方も御一緒に」

 

「おぉ。武蔵、ローマ‼︎基地を頼んだ‼︎支援要請はラバウルに回してくれ‼︎」

 

「分かった。気を付けてな」

 

「レイを頼んだわ」

 

高速艇に乗せられ、まずは横須賀に向かう

 

「二式大艇だ」

 

「あれに乗って行くわ」

 

高速艇を降りると、二式大艇の側に誰か居る事に気付いた

 

「おほっ‼︎久し振りかも‼︎さ‼︎乗って乗って‼︎」

 

秋津洲が二式大艇の操縦席に座った

 

「た、隊長。俺、アレで行く…」

 

一気に不安になった俺は、近くにあったジャイロに乗ろうと駆け出した

 

「他人の運転も案外いいもんだぞ⁇」

 

「そうよ‼︎銃座もあるから、そこに座りなさいな‼︎」

 

二人に止められ、二式大艇に押し込められた

 

「おい‼︎」

 

「なぁに⁇私の膝が良かった⁇」

 

「銃座に座らせる約束だろ‼︎何で副操縦席なんだ‼︎」

 

銃座と言ったハズなのに、副操縦席に座らされた

 

しかもご丁寧にチェーンで縛りやがって…

 

「銃座より景色良いわよ⁇」

 

「もういい…副機長すりゃいいんだろ⁇」

 

「そうよ‼︎偉いわレイくんっ‼︎パチパチ〜‼︎」

 

「偉いぞレイ‼︎」

 

「くっ…」

 

まさか隊長までおちょくりに来るとは…

 

「まぁいい…秋津洲、だったか⁇」

 

「そう‼︎秋津洲かも‼︎」

 

「本名だ」

 

「秋津洲かも‼︎」

 

「レイ。秋津洲の”かも”は、どこぞのコロッケ好きのからくり人形の”ナリ”と同じよ⁇」

 

「なるほど」

 

「出発するかも‼︎」

 

二式大艇が出発

 

不安しか無い

 

「案外…揺れるな…」

 

二式大艇が揺れる度に、チェーンがチャリチャリうるさい

 

「ボッロイ機体だなぁ…」

 

「そのボッロイのが味出ていいかも‼︎」

 

これだけ揺れているのに、電子機器に異常は無い

 

「おい‼︎左翼のエンジンから煙出てるぞ‼︎」

 

「いつもの事かも‼︎」

 

「直せよ馬鹿野郎‼︎」

 

「降りるかも‼︎」

 

舞鶴鎮守府の港に二式大艇が着水

 

外から見れば綺麗かも知れないが、中はかなり揺れていた

 

「着水完了かも‼︎」

 

「ったく…墜落の間違いなんじゃねぇのか⁉︎」

 

「そんなワガママ言うなら、レイが二式大艇の代わり造るといいかも‼︎」

 

秋津洲がむくれる横で、俺はニヤついた

 

「秋津洲。レイにそんな事言ったら、ホントに造るわよ⁇」

 

「ワガママ言う人には造れないかも‼︎あの震電造った人に頼むかも‼︎」

 

俺は更にニヤつき、席から立ち上がった

 

「いい子ちゃんで待ってるんだぞ〜⁇」

 

「頭撫でないで欲しいかも‼︎」

 

「ちょっと‼︎貴方チェーンは⁉︎」

 

「んなもん離陸前に切ったわ‼︎」

 

切ったチェーンを横須賀に返し、一番最初に二式大艇を出た俺は体を伸ばした

 

 

 

 

「秋津洲」

 

「どうしたかも⁇」

 

「震電造ったのは、貴方の横に乗ってた人よ⁇」

 

「嘘かも‼︎あんな男に造れるハズないかも‼︎」

 

「帰る時、聞いてご覧なさい。それに秋津洲…」

 

「ひっ…」

 

横須賀は背後から秋津洲の肩を持ち、耳元に口を近付けた

 

「レイは私の旦那よ…あんまり逆らうと…うふふふふ…」

 

「ひっ…ひぃ‼︎帰って来たら謝るかも‼︎」

 

 

 

 

「ようこそ、舞鶴鎮守府へ」

 

「おっ」

 

出迎えてくれたのは清楚そうな女性

 

横須賀と同じ、黒く長い髪で、横須賀とはまた違う美貌だが、此方は大人しそうな外見をしている

 

「マーカス・スティングレイだ。レイでいい」

 

「ウィリアム・ヴィットリオだ」

 

「私は知ってるわよね⁇」

 

「えぇ。ジェミニ・コレット元帥」

 

「ふふふ…」

 

久し振りに本名を呼ばれて、横須賀は御満悦そうだ

 

「私は舞鶴鎮守府提督”ふち”と申します」

 

「ふち…か」

 

「ふちだって‼︎」

 

「ふち‼︎」

 

「そうだぞたいほう。ちゃんと覚え…何でいるんだ⁉︎」

 

あまりにもいつも通りすぎて少し会話してしまった

 

視線を落とすと、たいほうと照月がいた

 

「たいほう、あのおっきなひこーきの、まるいまどのよこにすわってたの」

 

「照月は爆弾倉‼︎」

 

「僕は燃料庫だったよ‼︎」

 

きそまでいる

 

話を聞くと、基地に二式大艇が着き、物珍しさで中を見て回っていると、いつの間にか発進してしまい、それぞれそこにいた場所で大人しく待っていた様だ

 

「大人しくしてるんだぞ⁇」

 

「わかった‼︎たいほうもまいづるみたい‼︎」

 

「ふふっ。では、中に案内しますね。どうぞ」

 

ふちに案内され、鎮守府の内部に入った

 

 

 

 

執務室に入ると、中はある程度の物が揃ってはいたが、まだどこか足りない感じがする

 

「すみません、まだ散らかってて…」

 

「私も最初はこんな感じだった。その内慣れるさ」

 

「艦娘はいないのか⁇」

 

「いますよ。え〜と…どこ行ったのかな…」

 

口元に指を当てて、周りをキョロキョロするふち

 

相当なマヌケと見た…

 

「秘書艦の名前は⁇」

 

「え〜と…”は”何とかです…」

 

「皆目分からんっ‼︎」

 

「あっ。あとは”ゆ”がいます」

 

「…分からんっ‼︎」

 

とりあえず分かったのは、”は”と”ゆ”が頭文字の子と言う事だけだ

 

「僕、探してくるよ⁇」

 

「照月も行く‼︎」

 

「たいほうもいく‼︎」

 

やる気満々の三人の前にかがみ、たいほうの頭を撫で、きそと手を繋がせた

 

「頼むぞ。たいほうはきそと照月から離れるんじゃないぞ⁇」

 

「わかった‼︎」

 

「照月。食料食べたらダメだぞ⁇お腹空いたらコレを口に放り込め」

 

「ガム‼︎」

 

ポケットに入っていたガムを渡し、三人は執務室から出た

 

「すみません…えへへ…」

 

ふちはだいぶ抜けてる…

 

しかし、何処かで見た雰囲気だ…

 

 

 

 

「凄いなぁ…」

 

舞鶴鎮守府の中には商店が幾つか並び、簡易な娯楽品や食料品なら買える様になっている

 

「わぁ〜‼︎ラーメンの屋台‼︎」

 

照月は口を開けてラーメンの屋台の前で足を止めた

 

「ポイッと‼︎」

 

きそは照月の口にガムを放り込み、ゆっくり手を引っ張った

 

「後でレイに奢って貰おうね」

 

「うんっ‼︎ラーメン楽しみだなぁ〜‼︎」

 

もう照月の頭にはラーメンしかない

 

一旦ミニ商店街を出て、トレーニングルームの前に来た

 

「ふんっ‼︎ふんっ‼︎ふんっ‼︎」

 

中では誰かバーベルを使ってトレーニングしている

 

三人は窓の外から頭と目を出し、中の様子を伺う

 

「きんにくむきむき」

 

「モグラッ‼︎モグラッ‼︎モグラァッ‼︎」

 

「うわぁ…」

 

トレーニングをしている人は、きそもドン引きする程、筋肉ムキムキだった

 

「あのジュース美味しそ〜‼︎」

 

筋肉ムキムキの人はバーベルを降ろし、飲み物の入った容器をしばらく振り、それを飲んだ

 

「そこにいるのは誰だ⁉︎」

 

「や、ヤバッ‼︎」

 

三人は体を隠し、きそはポシェットに入ったT-爆弾に手を掛けた

 

「小賢しい出歯亀モグラめ‼︎姿を現せ‼︎でないと此方から行くぞ‼︎」

 

「わ、分かった分かった‼︎」

 

三人は観念して筋肉ムキムキの人の前に立った

 

「なんだネズミか。それも三匹」

 

「ゆ」

 

筋肉ムキムキの人の着ている白い水着の様な物の胸元には、赤丸の中に”ゆ”と書いてあった

 

「貧弱なネズミ達よ。この”まるゆ”に何用だ⁇」

 

「て、提督が呼んでたよ⁇」

 

「ふち嬢が⁉︎それは行かねばならないな‼︎有難う、小さなネズミ達よ‼︎」

 

まるゆは地響きを起こしながら、トレーニングルームを去った

 

「何だろう…すっごく叩きたい気分…」

 

「たいほうねずみ⁇」

 

「向こうから見たらネズミだろうね…モグラなのに」

 

「おいひ〜‼︎」

 

「あっ‼︎コラッ‼︎」

 

照月はまるゆの飲んでいたイチゴ味のプロテインをガブ飲みしていた

 

「そ…そんなの飲んだら…」

 

「照月ッ‼︎ムキムキッ‼︎」

 

どうやら特殊に配合されたプロテインらしく、照月は一瞬でムキムキになった

 

「こなこな」

 

たいほうの前には、粉末プロテインの袋があった

 

「え〜と…このプロテインの効力は数分で切れます…良かっ…」

 

「元に戻った‼︎」

 

「はやっ‼︎」

 

「すてぃんぐれいのよんでたまんがにあった。”せかっこー”だね」

 

「アレしたら死んじゃうよぉ…」

 

トレーニングルームを出て、再びミニ商店街に戻って来た

 

「おっ、いたいた‼︎三人共‼︎そろそろおいで‼︎」

 

レイが迎えに来た

 

「秘書艦が来るから、みんなで挨拶しよう。終わったらラーメン食おうな⁉︎」

 

「やったぁ‼︎」

 

執務室に戻って来ると、まるゆが仁王立ちで待機していた

 

「ま、まるゆは艦種は何⁇」

 

「我か⁇我は陸軍出の潜水艦だ」

 

「…そんな筋骨隆々で潜れるの⁇」

 

「容易いぞ。何なら、地中にも潜って進ぜよう‼︎」

 

「こ…こいつがまるゆ⁉︎」

 

きそが話している横で、レイはまるゆに関しての資料を見た

 

資料ではナヨナヨッとした女の子だ

 

「おぉ…我の資料か。この頃の我は弱くてな。魚雷の一発でさえ撃てなんだ…」

 

まるゆは指先で資料をヒョイと摘むと、パラパラと捲り始めた

 

「特殊な光線浴びたんじゃねぇのか…⁇」

 

「お待たせしました‼︎」

 

ようやく秘書艦が来た


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