艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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突然思いついたので書きます

本編とも少し関係があります


特別版 雷鳥の知らないもの

どの基地に行っても、レイの人気は高い

 

艤装を造ってくれるし、駆逐艦の子を助けた記録も残ってるからだ

 

そんな彼が、唯一知らない事がある

 

それは…

 

 

 

 

「すてぃんぐれい」

 

「たいほうか??どした。きそと遊んでなかったのか??」

 

「きそねんねしたよ」

 

「ったく…」

 

後頭部を掻きつつ、たいほうを膝の上に乗せ、パソコンを弄る

 

たいほうにヘッドフォンを付け、ヘラとの会話を楽しませる

 

クイーンは翔鶴になり、食堂でご飯を食べているから、ここにはいない

 

「すてぃんぐれいは、へらのおとーさん??」

 

《違うわ。犬よ》

 

「すてぃんぐれいいぬなの??」

 

「ヘラ。いらん事を教えるな!!」

 

《犬は犬よ。あら、駄犬の方が良かったかしら??》

 

「くっ…」

 

「すてぃんぐれいのおとーさんはどんなひと??」

 

聞かれたくない質問が来た

 

俺は父親や母親を知らない

 

俺は産まれてすぐに捨てられ、俺はスパイとして日々を暮していた

 

だから正直な話、俺は子供とどう接して良いか分からない

 

たいほうや子供達とこうして接しているのは隊長の真似事に過ぎない

 

「俺はお父さんもお母さんも知らないんだ」

 

「すてぃんぐれい、やっぱりおほしさまなの??」

 

「ははは!!そうかもな。でもっ…」

 

たいほうの頭を撫で、少し強めに抱き締めた

 

「たいほうのパパは、俺にとってもパパなのかもしれないな…」

 

「パパがすてぃんぐれいのパパなら、おかーさんは??」

 

「そ、そうだな…かし…」

 

《鹿島は無しよ。鹿島は犬の嫁でしょ??》

 

「うっ…」

 

ヘラにそう言われ、言葉に詰まる

 

「あらレイ。ヘラとお話??」

 

「よこすかさん」

 

「横須賀か…」

 

隊長が父性をくれたなら、母性を教えてくれたのは此奴が一番最初かも知れない

 

何かあった時、傍に居てくれた女は此奴以外に居なかった…

 

「ヘラ」

 

《雌犬の下半身の体温が上がってるわ》

 

「スクラップにした方が良いんじゃないかしら??」

 

「俺にとっての母親は此奴かも知れない…」

 

「え…」

 

《ふぅん。まっ、妥当ね。雌犬には一応母性はあるわ》

 

「し…失礼ね…」

 

「此奴だけなんだ。良い事したら、素直に褒めてくれて、悪い事したらぶん殴る女って。だから、俺にとっては鹿島と同じ位大切な女だ」

 

《好きなのね。横須賀の事》

 

「あぁ」

 

「すてぃんぐれいうわき??」

 

「そうかもしれないな…」

 

《たいほう。人にはそれぞれ愛し方があるわ。だから、一概に二人を好きになるのが悪い事じゃないのよ》

 

ヘラがそう言ってくれて助かった

 

傍から見れば、俺は完全に浮気者だ

 

《それに、鹿島は知ってるわ。犬が雌犬を好きな事》

 

「やっぱな…」

 

《それでもいいみたいよ。犬が罪を感じてても、それでも私を娶ってくれたから…だから、雌犬の事は黙ってるだけ》

 

「たまにはっ、デートでも行くかなっ!?」

 

《犬の一番好きな所に連れて行ってあげなさい。鹿島は犬の行く所が好きになるわ》

 

「んっ。サンキュ」

 

「おなかすいた」

 

膝の上に居たたいほうのお腹が鳴り、膝の上から離れた

 

「ありがとう。またたいほうとあそんでね??」

 

「おぅ」

 

たいほうを見送り、三人が残る

 

「れ、レイ…その…」

 

「お前はまた今度な??それまでにどこ行きたいか決めとけ」

 

「あ…うんっ!!じゃあね!!」

 

横須賀も工廠から出た

 

《たまには女になるのね》

 

「アイツは良い女さ。俺が悩んでる時、随分頼りになった」

 

《まっ、犬も犬でたまには良い所もあるようね》

 

「へっ…サンキュ」

 

《そっ。主人には素直にしときなさい。それとね、犬は間違ってないわ》

 

「何がだ??」

 

《子供との接し方よ。犬は誰から見ても良い父親よ》

 

今日のヘラはやたらと優しい

 

最近、罵声は減って来た気はするが、まだ褒める事は少ない彼女が人を褒めるのはちょっとレアだ

 

「お前が褒めまくるとはな…明日は雨か??」

 

《たまには褒めないとね。それに、明日はピーカンよ》

 

「残念だ!!」

 

《…犬》

 

「なんだ??」

 

《私になら、いつでも相談して良いから。話した事はロックしておくわ。だから…》

 

「ホントどうしたんだ??」

 

ヘラは少し黙った後、口を開いた

 

《わ、私もアンタの事、好きって事よ!!じゃあねっ!!》

 

そのままヘラは通信を落とした

 

通信の落ちたモニターを撫で、呟いた

 

「ありがとう。俺にとっちゃ、お前も母親だ…」

 

パソコンを閉じ、俺も食堂へと向かった…


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