艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、103話が終わりました

先に言っておきます

今回のお話は、艦娘が一人しか出てきませんし、内容がかなり重いです

横須賀のお話です

とある曲がモデルですが、題名の曲ではありません


104話 ズルい女

執務室でシュークリームを食べている私は、至福の時を過ごしていた

 

「提督、そう言えばレイさんの何処がすきなんですか⁉︎」

 

明石の唐突な質問の所為で、シュークリームの中身が変な位置に付いた

 

「き…嫌いよ。あんな奴…」

 

「じゃあ何でケッコンまでしたんですか⁇」

 

「な、何回か助けて貰ってるし⁉︎そのお礼⁇」

 

「その割には強引過ぎじゃなかったですか⁇」

 

「う…」

 

確かに強引だった気もする

 

だけど、アレが私の精一杯の愛情表現なのだ

 

私はいつもレイと喧嘩して啀み合ってるケド、好きなのはホント

 

鹿島を妬んでるのも嘘じゃない

 

現に執務室にはレイのサイン入りポスターも飾ってある

 

レイはいつもポスターを見て”俺も有名になったもんだなぁ⁉︎”と、自画自賛している

 

机の上には、大分前にたまたま撮ったツーショット写真も飾ってある

 

「良い所もあるのよ、レイは」

 

「聞かせて下さいよぉ」

 

「話しても楽しくないからダ〜メ‼︎」

 

「あ〜ぁ、残念だな〜…レイさんの隠し撮り写真あげようと思ったのに…」

 

それを聞いた瞬間、明石の服の裾を掴んだ

 

「待ちなさい。気が変わったわ」

 

「じゃ、先払いで‼︎」

 

明石から数枚の写真を受け取り、私は少しだけレイへの思いを話し始めた

 

「好きよ、レイの事。彼と出逢って、人生が反転したわ…」

 

 

 

彼と出逢ったのは、隊長が彼を保護したあの日

 

当時隊長は私とグラーフ、そして隊長の三人

 

時たま臨時でエドガー…今のラバウルさんが編隊に入っていた

 

隊長は元々ラバウルさんと同じ部隊だったの

 

その話は今はいいわ

 

最初はホント、いけ好かないガキだったわ

 

人の胸はつつくし、すぐ逃げるし…

 

でもね、彼は私をいつだって護ってくれる

 

空では囲まれた時、彼は自分の身を捨てる様な戦い方で私の退路を作ってくれた

 

理由は簡単だった…

 

”おまえみたいな巨乳が死ぬのはもったいない”

 

だって…

 

でも、今だってそれは変わらない

 

必ず私を助けてくれる

 

私にとっては、隊長と同じ位のヒーローなの

 

彼と出逢ってから、見る物が輝いて見えたわ

 

それと同時に、彼を見る目も変わって行った

 

でも、私は彼の愛し方を知らなかった

 

唯一出来たのは、彼に言い返す事

 

今みたいに叩きはしなかったが、彼との口喧嘩は昔から絶えなかった

 

それでも、いつも先に謝るのは彼の方だった…

 

 

 

「まぁ、提督チョットヒステリックの気がありますからね…」

 

「うるさいわね‼︎」

 

「ほら」

 

「…話を続けるわ」

 

 

 

レイが最初に好きになったのはグラーフだと知っている

 

でも、グラーフは素っ気ない態度を取るからレイは泣く泣く諦めた

 

その時、私はようやくレイに優しくする事が出来た

 

口論は相変わらず絶えなかった

 

それでも、私はレイの傍に居れる事が嬉しかった

 

一緒にご飯食べたり、休暇の日は基地から出掛けられる街にも出掛けた

 

側から見れば、付き合ってる様に見えたと思う

 

隊長は気付いていたらしい

 

でも、何も言わなかった

 

そして、鹿島の事を知った

 

飛び込んだ愛は、既に別の人の物だった…

 

だから私は、初めてレイを叩いた

 

鹿島を泣かした罰としてレイは受け止めてるらしいけど、あの時の私の

ビンタは鹿島への嫉妬だけだったと思う

 

空でも脇役

 

恋でも脇役

 

当たり所のない怒りと虚しさを彼にぶつけてしまった…

 

後悔してるわ…

 

私だけじゃないのよ⁇

 

レイが死んだ時、大泣きしたの

 

鹿島と同じ位泣いたわ

 

レイを思い出しては、色んな意味で枕を濡らしたわ

 

それでも、レイは帰って来た

 

嬉しかったわ

 

これでまた、レイとつまらない口喧嘩が出来る‼︎

 

そう思った時、体が熱くなった

 

そっか、私、やっぱりレイが好きなんだ…

 

ようやく本物の恋に気が付いた

 

でも、それも遅かった

 

レイは鹿島とケッコンした

 

指輪を渡した時、ほんの少しでも私にくれる事を期待したけど、無駄だった

 

レイは一度そうと決めると、隊長か私が滅多打ちに言う位しないと変えない

 

それからは、鹿島に対するヤキモチを隠して過ごすのが精一杯だった

 

でも良かった

 

私、レイをほんの少しでも愛せたから…

 

幸せだった…

 

だから、私は最後の反抗をした

 

それが、あのネックレス式の指輪

 

二人までケッコン可能にしたのは、ケッコンした艦娘は士気が上がり、戦闘結果にも著しく影響を及ぼすとの結果が明確になったからだ

 

これを理由にして、半ば無理矢理ケッコンさせれば、レイは少しでも振り向くと考えた

 

案の定、レイは振り向いた

 

誘拐された時だって助けに来てくれた

 

それでも、レイの心は鹿島にある…

 

今でも何だか悔しい…

 

 

 

 

「ホントに好きなんですねぇ…」

 

「口はホントに悪いけど、私は知ってる。私は、レイのそんな所を含めて好きなのよ」

 

「最初はお金目当てかと思いました。提督、お金に汚いし‼︎」

 

「それは無いわ。もし仮にレイが貧乏パイロットでも、私は好きになってた」

 

「へぇ〜…」

 

明石が頬杖を付いて私に向かってニヤニヤしている

 

「な、何よ…」

 

「普段は、人生金よ‼︎とか言ってるのに〜…んぶっ‼︎」

 

ムカついたので明石の口元を握った

 

「どこぞの映画みたいに口縫うわよ⁇」

 

「わ、わかりまひたわかりまひた‼︎ぷはぁ‼︎」

 

「横須賀ぁ‼︎」

 

勢い良くドアが蹴破られる

 

話の張本人だ

 

「おっと、お邪魔だったかな…」

 

どうやら私が明石の口元を握っているので、変に見られてる様だ

 

「い、いい‼︎いい‼︎どうしたの⁇」

 

「ん」

 

「何よ。お口は無いの⁇」

 

「見りゃ分かる」

 

内容を言わないまま、レイは私に書類を突き付けた

 

「そいつは強化型の散弾機銃だ。欲しけりゃやる」

 

「駆逐艦の子が使ってる奴の強化版ね。頂戴するわ‼︎」

 

「素直で宜しい」

 

レイはそのまま執務室を出ようとした

 

「あ、ちょっと⁇」

 

「んあ⁇」

 

「私の事…好き⁇」

 

「忙しくないけど忙しい。帰るぞ」

 

「答えなさいよ意気地無し‼︎ヘタレ‼︎イン◯テンツ‼︎」

 

「んだとテメェ…」

 

レイは此方に振り向き、怒りながら歩いて来た

 

「誰がイ◯ポテンツだ‼︎ビンビンしとるわ‼︎」

 

「怒るのそこですか⁉︎」

 

明石はレイの怒りのポイントに驚いた

 

普通の人ならどう考えても、その前の2つで怒るだろう

 

「でっ⁇私の事好き⁇」

 

「好きに決まってんだろ‼︎」

 

「えっ…」

 

余りにも予想外の答えが返って来たので、少し怯んでしまった

 

「当たり前だろ…こんだけ俺と口論して、まだ飽き足らずに食って掛かるのお前位だ」

 

「ならチューして頂戴」

 

「おい、お前仮にも嫁のま…」

 

面倒くさくなったので、レイの胸倉を掴んで無理矢理キスをした

 

たまには私からしたっていいはず

 

その内、レイの力が弱まり、力んでいた肩が落ちた

 

唇を離し、もう一度軽くキスをした

 

「私、幸せよ⁇貴方を好きになれて…」

 

「ズルい女だな…」

 

「私知ってるわ…貴方、鹿島の人生狂わせちゃったから、その代わりをしてるんでしょ⁇」

 

「…これだけは言っておく」

 

レイは私の肩を持ち、一呼吸置いた

 

「俺は鹿島が好きだ。間違いない。じゃないとケッコンなんてしない。だけど…本当に好きな人は誰かって聞かれたら、もしかしたらお前だと言うかも知れない…それ位、俺は横…ジェミニが好きだ」

 

「私もよ…」

 

「だけど、俺は鹿島の人生をたった一発の誘導弾で狂わせちまった…だから、俺は残りの人生を賭けて、あいつを護り通さなきゃならない…それだけは分かってくれ…」

 

「…いいわ。じゃあ、これも分かっておいて」

 

「なんだ⁇」

 

私はレイの頬を撫で、彼の目を見つめた

 

「そんな貴方を、心の底から本気で愛していたズルい女がいた事よ…」

 

「ジェミニ…」

 

「いつか私を迎えに来るのを夢見てるわ…いつだっていい。明日でも…数年後でも…それが来世であっても…私は貴方を待ってるわ…」

 

「…俺はそんないい男じゃねぇぞ⁇」

 

「万人が貴方を最低な男だと言っても、私だけは知ってるわ。貴方が最高の男だって事…」

 

「…ありがとう」

 

素直になったレイを見て、もう一度キスを交わす

 

あぁ、貴方を好きになれて良かった…

 

ずっとこうしていたいな…

 

そうしたら、鹿島の所に行かなくてすむのに…

 

「おっと‼︎今日はたいほうとオヤツを作るんだったぁ〜‼︎じゃあな‼︎」

 

レイはそう言い残すと、執務室から出て行った

 

「提督…そんなにレイさんを好きだとは…グスッ」

 

明石が泣いている

 

弁解が出来ない

 

嫁の前で大失態を犯したのだ

 

「惚れ薬、作ってきますね…」

 

明石は泣きながら執務室を出ようとした

 

「ちょちょちょ待ちなさいよ‼︎」

 

明石を止め、抱き締める

 

「貴方も勿論好きよ⁇ここまで、我儘な私に着いて来てくれてありがとう…」

 

「グスッ…いいおっぱい…」

 

「アンタも変態ね…」

 

私はしばらく彼女を抱き締めていた…

 

 

 

 

 

 

「ホント、ズルい女だよな…」

 

フィリップに乗った俺は小言を漏らした

 

《横須賀さんの事⁇ズルいらしいね。この前間宮でお釣りをチョロまかしたんだって‼︎》

 

フィリップは無邪気に答えている

 

「いつかお前にも…いや、分からない方がいい…」

 

《…泣いてるの⁇》

 

「泣いてない。俺が泣くのはウンコしてる時だけだ」

 

《帰るよ‼︎》

 

「あぁ」

 

涙を拭き、俺は基地へとエンジンを吹かせた…




何の曲か分かりましたか⁇

きそ「それと、横須賀さんのレイの呼び方、徐々に変わって行ってたのも気付いたかな⁉︎」

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