艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

342 / 1086
103話 ♡パーテーニショータイ♡(2)

その頃、スカイラグーンでは…

 

「ウーシーオー…ですか⁇」

 

「なんだ貴様は‼︎」

 

呉さんと共に待機していたポーラが、潮と睨み合っている

 

だが、ポーラはボーッと潮を見ているだけ

 

「お口の悪い子は、こ〜です」

 

ポーラは潮を抱き締め、膝の上に固定した

 

「イやだ‼︎離せ‼︎イーッ‼︎イーッ‼︎」

 

 

 

 

 

《着陸許可を貰ったよ》

 

「よし、着陸だ」

 

禍々しい雰囲気の滑走路に降り、地に足を降ろす

 

「隊長…」

 

「うん…」

 

「イラッシャイ‼︎ヨクキタネ‼︎」

 

「マーカスマーカス‼︎」

 

「ウィリアム‼︎」

 

思っていたのとは裏腹に、水着に着替えた深海の子が三人出迎えてくれた

 

「マズハ”ヒメ”ニアイサツ‼︎」

 

麦わら帽子を被った白い肌の女の子に案内され、奥へと入る

 

「ここは…」

 

奥に行く途中、大きな試験管の様な物が幾つも並び、中には傷付いた深海の子達が入っている空間に辿り着いた

 

「ココハ、コワレタコヲハコンデクルバショ。イツモハワタシノタントウ」

 

「あ…」

 

見れば見る程、本物の女の子にしか見えない子が何人か入っていた

 

俺は彼女達に目が行った

 

「こんな子達が戦ってるのか…」

 

「ソウ…ドッチモオナジ。マーカスダッテワカイ」

 

言葉に詰まる

 

これ位の子なら、学校に行ってる年齢だ

 

「ココ。ココハイッタラ、ヒメイル」

 

重圧そうな扉の前に着いた

 

ここだけ雰囲気が違う

 

「ありがとな」

 

「アトデツメタイジュース、ヨウイシトクネ‼︎」

 

麦わら帽子の女の子と別れ、俺達は意を決して中に入った

 

「イラッシャイ。オマチシテオリマシタ」

 

出迎えてくれたのは、大きな縦ロール髪の女の子

 

目付きが鋭く、威圧感が凄い

 

「ドウゾ、オスワリニナッテ」

 

薄暗く、だだっ広い部屋の中心に大きな机があり、そこに案内され、席に座ると、目の前に豪華な食事が運ばれ、ワインが注がれた

 

「最後の、晩餐…か⁇」

 

俺は既にワインを口にし、チーズを摘んでいた

 

「フッ…」

 

「本当にパーテーだけか⁇」

 

「イヤ…チガウ…タダ、コレダケハシンジテクレ。コレハサイゴノバンサンデハナイ。ソレダケハイワセテクレ…」

 

「ならっ…早くボスを出すんだな」

 

「レイ⁇」

 

「雰囲気で分かる。縦ロールは、ここのボスじゃない」

 

「フフッ…ヤハリミヌカレテイタカ。ダマシタツモリハナイ。ミルメガアルカ、タメシタダケダ」

 

「それを騙したって言うんだよ‼︎」

 

「ア…」

 

俺がいつも通りにツッコミを入れると、縦ロールは何故か頬を赤らめた

 

「…ヒメガナゼヨンダカ、イマワカッタ」

 

「ほれほれ、俺達ゃ忙しくないが気は短いんだ‼︎早くしないと全部食っちまうぞ⁇」

 

「ワカッタ。ヨンデクル」

 

縦ロールはカーテンの奥に消えた

 

ボスが来るまでの間にも、俺は料理を口にした

 

「レイ、何であの子がボスじゃないと分かった⁇」

 

「んなもん目ェ見りゃ分かる。こう見えても、人を見る目はあるんだぞ⁇俺」

 

「ヨンデキタ」

 

食事の手を止め、ナプキンで口元を拭き、カーテンの奥を見る

 

縦ロールがカーテンの奥に消え、代わりに奥からモデルウォークで来た女性は、明らかに人を統べる風貌と顔付きをしていた

 

「イラッシャイ♡マッテタヨ♡」

 

カーテンを捲って此方を見るなり、満面の笑みで俺達を見た

 

「う…思ってたのと違う…」

 

もっと厳しい性格だと思っていたが、やたらテンションが高く、笑顔が良く似合うとの第一印象だった

 

「ゴハンオイシイ⁉︎ヒトノクチニアウヨウニツクッタノ‼︎」

 

「お、おぅ‼︎最高だぜ‼︎な⁉︎隊長‼︎」

 

「うん。中々イケるな」

 

「モ〜ットタベテネ♡」

 

やたらテンションの高い彼女に不安を抱きながらも、今しばらくは食事にありついた

 

しばらくして手を休めた時に、彼女は口を開いた

 

「ショウカイガオクレマシタ。ワタシハ”チュウスウセイキ”トイイマス」

 

「マーカス・スティングレイだ」

 

「ウィリアム・ヴィットリオです」

 

「シッテル。アナタガタヲソノカラダニシタノハ、ワタシデスカラ…」

 

ようやく隊長が気付く

 

そう、俺達は一度、此処に来た事がある

 

反抗作戦で撃墜された俺達は此処に運ばれ、深海化の手術を受けた

 

そして何故、彼女が俺達を助けてくれたのか、俺は薄々気付いていた

 

「率直に聞く。俺達を助けてくれたのは何方が目的だ⁇繁殖か、架け橋か⁇」

 

「リョウホウ…ト、イッタラオコル⁇」

 

「やっぱりな…」

 

「ワタシタチハ、ナゼウマレタカモワカラナイ。ノコサレ、タサイショデサイゴノアガキガ、コウゲキ…ソレヲクイトメルタメニ、フタリヲオクリコンダ…オコッテル⁇」

 

中枢棲姫は目をウルウルしながら此方を見て来た

 

「怒ってない。ある程度は無敵になったし⁇今となりゃ、スカイラグーンの温泉で回復出来るし、まっ、満足はしてるから大丈夫さ」

 

「ヨカッタァ…ソレデ、フタリノヨウスヲミルタメニフタリ、アナタガタノトコロニテイキテキニオクッタノ」

 

「コーワン=サンとほっぽちゃん、だな⁇」

 

隊長も隊長で鋭い

 

「ソウ。フタリカラホウコクヲキクト、ヒトニモドッタコガイルトキイタ」

 

「戻るぞ。彼女達は優しさに触れると、人の心を取り戻す」

 

「フ…ヤッパリフタリデセイカイダッタネ♡ソレデネ、オネガイガアルノ♡」

 

「まぁ…ある程度は聞く」

 

「コドモタチガサイキン”ガッコー”ニキョウミヲモッタノ」

 

要は、深海の子達を学校に通わせて欲しいとの事

 

出来なさそうで、案外簡単かもしれないし、これは和解の大チャンスだ

 

「横須賀に頼んでみる。恐らく断らないだろう」

 

「俺も賛成だ‼︎ただ、一つだけ約束してくれ」

 

「ナニナニ♡」

 

「スカイラグーンは知ってるな⁇」

 

「ウンッ♡ワタシモイツカイキタイ♡」

 

「学校に通わせている間は、互いに助け合う。それだけだ」

 

「スルスル♡ブキナンカポイヨポイ‼︎」

 

「ならオッケーだろ」

 

「ホント⁉︎タスカッタワァ♡ジャアタベテタベテ♡」

 

結局、パーテーは本当にそれだけだった

 

襲われたり捕虜にもならなかった

 

散々食べた後、席を立ち部屋から出た

 

「マタショータイスルネ♡」

 

「あぁ、待ってる」

 

「学校は任せな‼︎」

 

中枢棲姫に見送られ、俺達は彼女と別れた

 

「フゥ…」

 

俺達を見送った後、扉を閉めた中枢棲姫はため息を吐いた

 

「オツカレサマ、ヒメ」

 

「ネ⁉︎イケメンデショウ⁉︎」

 

縦ロールこと”運河棲姫”に駆け寄り、ハイテンションのまま会話を続ける

 

「ナカナカノジョウダマデシタ」

 

「サイショハネ‼︎ハンショクモクテキダッタンダケド‼︎イマカラオモエバセイカイダッダナァ♡ウフフッ♡」

 

「ハハハ…」

 

しばらく中枢棲姫の話は尽きる事は無かった…

 

 

 

 

「…」

 

隊長と二人で道を戻っていると、再びあの巨大な試験管が目に入った

 

「隊長、先に行っててくれないか⁇」

 

「治してやるのか⁇」

 

「あぁ。出来る気がする」

 

「分かった。伝えておくよ」

 

一人残った俺は、巨大な試験管の近くにあった機械を弄り始めた…

 

 

 

 

「ウフフッ…ヤッパリイケメン…」

 

「ロマンスグレーモキタイデキル…」

 

「サァ‼︎ワタシタチト”コービ”シマショウ‼︎」

 

「うわぁぁぁぁあ‼︎」

 

隊長に戦艦夏姫が襲い掛かる‼︎

 

俺が深海の子達を修復している間、隊長は別の意味でピンチを迎えていた

 

「よしっ‼︎野郎共‼︎隊長と戦艦夏姫を引き剥がせ‼︎」

 

「イーーーッ‼︎」

 

帰って来た俺は、多数の深海棲艦を引き連れて戻って来た

 

「マサカ…アノケガカラナオッタノ⁉︎」

 

「ウワ、ヤメロ‼︎タマニハワタシモシタイ‼︎」

 

「ツマミグイハダメ‼︎」

 

「パパカラハナレル‼︎」

 

駆逐艦や重巡まで、こうもズラァーっと並べば、流石の姫もタジタジである

 

「マーカス…アリガトウ…」

 

港湾夏姫が頭を下げる

 

実はあの巨大な試験管に入っていた子は、大破して修復不可能だったのだが、きそがやっていた建造装置からボディを構築する技術を思い出し、余ったパーツで破損箇所を補い、高速で癒着させれば何とかなった

 

「土産を持って来るの忘れたからな。その代わりだ。じゃ、またな‼︎」

 

三人に見送られ、俺達は中枢基地を後にした


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。