艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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照月もいるよ!!


101話 横須賀鎮守府秋祭り“しおいの金魚すくい編”

「はい‼︎出来たよ‼︎」

 

きその声が聞こえた

 

「寸分の狂いも無くやったよ」

 

「う…うん…」

 

どうやらきそは型抜きをしているみたいだ

 

「じ、じゃあ、これが賞金だ…」

 

「えへへ…じゃあ次アレ‼︎」

 

「わ、分かった‼︎」

 

ギャラリーをかいくぐり、きそが見える位置まで来た

 

屋台の番をしているのは呉さんだ

 

何か役が当たってるとか言ってたな…

 

「はいっ」

 

「ありがとう‼︎」

 

きそは型抜きを瞬時に形にくり抜き、にやけ顔で呉さんの所に来た

 

「500円だね」

 

「うっ…」

 

よく見ると、きそがいた机には小銭が大量に置いてある

 

「レイ‼︎助けてくれ‼︎」

 

「俺もやる」

 

「くぅ…」

 

呉さんは渋々俺の前に型抜きを置いた

 

「や…やれるモンならやってみろい‼︎」

 

置かれたのはメチャクチャ複雑な龍の型抜き

 

「最高難易度だ‼︎賞金は5000円‼︎やれるモンならや…」

 

「はい‼︎」

 

「ほい」

 

ものの見事にくり抜かれた二匹の龍

 

呉さんは何度も確認するが、寸分違わずくり抜かれている

 

「ま…負けました…」

 

「やったね‼︎18300円の儲けだ‼︎」

 

「俺は4900円だ‼︎」

 

「頼む‼︎この辺で手を引いて頂きたい‼︎」

 

きそ一人でも商売上がったりなのに、俺まで加われば破綻だ

 

「分かった分かった‼︎きそ、行くぞ‼︎」

 

「まだ出来るよ⁉︎」

 

「ダメだ‼︎呉さんが泡を吹く前に行くぞ‼︎」

 

「くっ…分かったよ…」

 

何とかきそを引き連れ、大通りに出て来た

 

「しかしまぁ、型抜きオンリーで一万も稼いだな」

 

「得意なんだ、型抜き‼︎龍なんか序の口だね‼︎」

 

「でだ。何か食べるか⁇」

 

「あれあれ‼︎あれ食べたいんだ‼︎」

 

きその目線の先には、チョコバナナの出店があった

 

「レイにも奢ってあげるよ‼︎」

 

「たまにはいいな」

 

チョコバナナの出店に向かう途中、照月と秋月にすれ違った

 

秋月は手に一本しか持っていなかったが、照月は片手に3本ずつ、計6本チョコバナナを持っていた

 

おいしいおいしいと言いながら、すれ違い様に2本のチョコバナナが消えた

 

「チョコバナナ下さい‼︎」

 

チョコバナナ、1本100円

 

結構安いな

 

「ごめんなさい‼︎売り切れました‼︎」

 

チョコバナナの店番をしていたツインテールの女の子は、俺達に深々と頭を下げた

 

「もう無いの⁇」

 

「えぇ…さっき”イーッ‼︎”とか言ってる女の子と、ず〜っと口開けてる女の子が全部買って行っちゃって…」

 

両方共思い当たる節がある

 

思い当たる節しか無い

 

「…照月かなぁ⁇」

 

「…だろうな」

 

「ホントにごめんなさい…貴方はマーカスさんときそちゃんですね⁇」

 

「そっ。よくご存知で」

 

「有名になったね‼︎」

 

「私は”瑞鶴”今度お店に来た時、飛び切りのネタ奢るから、それで勘弁して⁇ねっ⁇」

 

瑞鶴は両手を合わせてお願いしている

 

「瑞鶴は何してるの⁇」

 

「私、明日から繁華街で回転寿司をやるの‼︎私も握るから、味は保証するわ‼︎」

 

今度は舌を出して親指を立てている

 

「これ、チラシね‼︎」

 

”幸運を呼ぶ回転寿司”ずいずいずっころばし”明日オープン‼︎”

 

艦娘の開く店は、どれもネーミングセンスがぶっ飛んでてユニークだ

 

「おいしそ〜‼︎」

 

「今度連れてってやるよ。じゃあな、ずいずいずっころばし」

 

「ばいばいずい」

 

「あっ‼︎ちょっ‼︎」

 

俺は単なる冗談

 

きそはチョコバナナの腹いせを言い放って、その場を後にした

 

元の場所に戻る前に、子供達に出逢った

 

「上手よ、たいほう‼︎」

 

「でめきん」

 

子供達はたいほうを中心にして、金魚すくいをしていた

 

やっぱり霞が面倒を見ている

 

「何で金魚すくうのに紙ですくわなきゃいけないのよ」

 

叢雲は1匹もすくえず、一人でキレている

 

「そぉいそぉいそぉい‼︎」

 

しおいはしおいで、変な掛け声で金魚をすくい続ける

 

「やぶれた」

 

「おしまいね。袋に入れて貰いましょ⁇」

 

「そぉいそぉいそぉいそぉいそぉい‼︎」

 

霞とたいほうが帰って来た

 

「きんぎょとれた‼︎」

 

たいほうは、いの一番に俺に店に来た

 

「水槽作ってあげる‼︎」

 

きそとたいほうが話している間に、こっそり霞の頭を撫でる

 

「そぉいそぉいそぉいそぉい‼︎」

 

「あ…」

 

「サンキューな」

 

「う…うんっ‼︎」

 

最近霞は大分素直になって来た

 

やたらめったら噛みついていた頃に比べたら、かなり可愛くなった

 

まっ、気が強いのは変わらずだが…

 

「そぉ〜〜〜い‼︎」

 

「ふーせん」

 

たいほうは横のヨーヨーが気になるみたいだ

 

「やってみるか⁇」

 

「そぉいそぉいそぉい‼︎」

 

「すてぃんぐれいとする‼︎」

 

「よっしゃよっしゃ」

 

たいほうを前に立たせ、後ろからたいほうの手を掴んで取れそうなヨーヨーを幾つかすくう

 

「取れたな‼︎」

 

「びょんびょん‼︎」

 

たいほうはヨーヨーを気に入った様で、右手の中指に輪ゴムを付け、取った瞬間からビヨンビヨンしている

 

「たいほうヨーヨー好きか⁇」

 

「よーよーすき‼︎ありがとう‼︎」

 

「そぉいそぉいそぉいそぉいそぉいそぉいそぉいそぉいそぉい‼︎」

 

「しおい」

 

いい加減気になった

 

「そぉいそぉいそぉいそぉい‼︎」

 

「し〜お〜い〜‼︎」

 

「まだ行けますよぅ‼︎」

 

「おしまいだ‼︎もう三杯分ミチミチじゃないか‼︎」

 

しおいの前にあるブリキの器には、三杯分ミチミチに金魚が入っていた

 

既に紙部分は無いのに、しおいはプラスチックの部分で金魚をすくい続けていた

 

結局、一杯分の金魚を貰い、事無きを得た

 

《みなさんにお知らせします。広場にて、盆踊りを開催致します。少し遅いですが、是非納涼に訪れて下さい‼︎繰り返します…》

 

「さっ、隊長も来るから行こう。盆踊りが終わったら、もう少しだけ回ろうな⁇」

 

子供達を引き連れ、俺達は盆踊り会場に向かって歩き始めた


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