艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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チョット短いけど、後日談もあるよ‼︎


97話 ダズル☆マン”T”

三人が見回りを続けている時、私は軽巡洋艦第一寮に来ていた

 

灯りが点いているのは一箇所だけ

 

…もしかしたら楽かも知れない

 

最初で最後のドアを開け、中に入る

 

ここにいるのは軽巡”阿賀野型”四姉妹らしい

 

「寝てますか〜…」

 

広めのリビングに入ると、クラッカーが四発鳴った

 

「おめでと〜キラリン☆」

 

「おめでとうございます」

 

「へ⁇」

 

間の抜けた子”阿賀野”と、しっかりした趣の子”矢矧”にいきなりおめでとうと言われても、何が何だか分からない

 

「トラックさん、今日誕生日ですよね⁉︎」

 

亜麻色の髪の大きな三つ編みがトレードマークの子”能代”がそう言って、ようやく事に気が付いた

 

今日は私の誕生日だったか‼︎

 

「そうだけど…何処でそれを⁉︎」

 

「酒匂が調べて来てくれたの‼︎」

 

「ぴゃあ‼︎」

 

四姉妹の中で一番小さい子”酒匂”が、どうやら私の誕生日を偶然聞き入れた様だ

 

そして、夜、私がここに来る事も

 

「さぁ‼︎チョットだけ阿賀野達とお祝いしましょ⁇」

 

「…分かった。ありがとう」

 

阿賀野に案内され、席に座る

 

「ぴゃあ」

 

酒匂は私の隣でずっとぴゃあぴゃあ言いながらジュースを注いでくれている

 

「酒匂はね、ぴゃあしか言えないの」

 

ニコニコしながら言う阿賀野の目は、少し悲しそうだ

 

「癖か何かか⁇」

 

「ぴゃあ…」

 

「PTSDみたいな感じです。初出撃で運悪く敵戦艦に囲まれて…」

 

軽巡洋艦で戦艦に囲まれれば流石に太刀打ち出来ない

 

軽巡レベルで戦艦に勝てそうなのは、大佐の基地にいるきそちゃん位しかいない

 

あの子は不思議な武器で相手を追っ払うからな…

 

「そうだったのか…」

 

「ぴゃあ」

 

「トラックさんに会いたかったんだよね、酒匂⁇」

 

「ぴゃあ‼︎」

 

話を聞くと、それ以来遠征部隊に回されていた様で、トラックさんと入れ違いでスカイラグーンに何度か行った事があり、そこでトラックさんのスイーツを食べた事があるようだ

 

「美味しかったかい⁇」

 

「ぴゃあぴゃあ‼︎」

 

酒匂は凄く嬉しそうだ

 

ぴゃあしか言わないが、阿賀野達がしっかりしているので、心配はなさそうだ

 

そしてそこそこな時間、彼女達の部屋で彼女達が作った料理を楽しんだ

 

「じゃあ、私はコレで。ありがとう。楽しかったよ」

 

「また来てね〜‼︎」

 

「ぴゃあぴゃあぴゃあ‼︎」

 

「じゃあね、酒匂」

 

結局、酒匂は終始ぴゃあしか言わなかった

 

 

 

時間にして、二時間程度

 

私は結構長く彼女達の所に居たみたいだ

 

集合場所の風呂場に行くと、既に三人は湯船に浸かっていた

 

「おっ‼︎トラックさん‼︎お疲れ様‼︎」

 

「みんな早いな‼︎」

 

体のダズル迷彩を落とし、私も湯船に浸かる

 

話を聞くと、どうやらレイが最強の貧乏くじだったらしい

 

一番気落ちしているが、やはりそこは空の男

 

気丈に振る舞っている

 

こうして皆と集まると、あぁ、やはり私は彼等に着いて間違いはなかったのだなと、再び実感させられた

 

 

 

 

後日談…

 

あまりに気が引けた俺は、行った子供達が好きそうな物を持って、初対面の様に接した

 

最初に出会ったのは漣だ

 

「お前が漣か」

 

「綾波型駆逐艦の漣とは私の事です、スティングレイ様っ‼︎話は聞いてます‼︎」

 

「…コレ、やるよ」

 

渡したのは、ウサギをモチーフにしたミニチュアフィギュアの家だ

 

「わぁ‼︎ありがとうございます‼︎大事にしますね⁉︎」

 

「朧って子は何処だ⁇」

 

「あそこでカニ見てる子‼︎」

 

漣が指差す先には、プラスチックで出来た大きな容器の中身を見ている朧がいた

 

「呼んでくれるか⁇」

 

「朧〜‼︎」

 

「は〜い‼︎」

 

漣が呼ぶと、朧はすぐに気付き、此方に来た

 

「朧と言うのは君か⁇」

 

「あ、はい。綾波型駆逐艦の、朧です」

 

「買い物行ったら、今流行りのオモチャが当たったんだ。朧にあげる」

 

渡したのは、カニをモチーフにした、ミニチュアフィギュアの家だ

 

「あ…貰えませんよ‼︎高い物ですし‼︎」

 

「漣と一緒に遊んでくれ。漣にも似た物を渡したんだ」

 

「じゃあ…ありがたく‼︎あっ…」

 

朧がオモチャを手に取った瞬間、俺は朧と漣を抱き寄せた

 

正直、朧には一番トラウマを与えてしまったかも知れない

 

「化け物は退治してやったから、もう心配しなくていいぞ⁇」

 

「…ありがとうございます‼︎」

 

「パネェ…流石はスティングレイさんだ…」

 

二人を離し、次は雷電姉妹

 

「雷ちゃん、それは消費期限切れなのです‼︎」

 

「腐りかけが一番美味しいって言うでしょ⁉︎」

 

雷は完全に腐っていそうな、変色した牛乳パックの中身を飲もうとしていた

 

「…」

 

俺はすかさず腰のピストルで、雷の牛乳パックを撃ち抜いた

 

「あ、危ないじゃない‼︎」

 

「馬鹿野郎‼︎牛乳は新鮮な奴が一番美味い‼︎」

 

「うっさいわね‼︎アンタはいつも鹿島のおっぱい吸ってる癖に‼︎」

 

「申し訳ありませんでした‼︎」

 

すかさず土下座

 

広場にいた子達の視線が一斉に向く

 

「レイさんが鹿島教官のおっぱいを吸ってるのは有名なのです…ふふふ。提督に報告なのです…」

 

「それはいかん‼︎望みは何だ‼︎」

 

「そうね…新しい自転車が欲しいわ」

 

「電はコマ付きがいいのです」

 

「ふふふ…俺の後ろを見な‼︎」

 

俺はすぐに立ち上がり、背後を指差した

 

そこには、アニメキャラの絵が描かれたコマ付きの自転車があった

 

「貴様等にやろうじゃないか」

 

「わ〜い‼︎」

 

「ブランドじゃないけど嬉しいのです‼︎」

 

「こ…こいつ…」

 

「でも何で電達が自転車欲しいと分かったのですか⁇」

 

「リサーチは得意なんだよ」

 

「ストーカーなのです‼︎変態なのです‼︎」

 

「鹿島のおっぱい吸ってる位だから変態よ‼︎」

 

「くっ…」

 

事実なだけに、反論出来ない

 

「でも、ありがとう‼︎嬉しいわ‼︎」

 

「慣れたら次はマウンテンバイクがいいのです‼︎」

 

「…はいはい。じゃあな」

 

「「ばいば〜い‼︎」」

 

最後は初月だ

 

「初月」

 

「何だ。またお前か」

 

「これやる」

 

初月に渡したのは、120色のクレパスセット

 

「いいのか⁉︎高いものだろう⁇」

 

「自爆されて被害被るよか安い買い物だ」

 

「…分かった。ありがたく頂くよ」

 

「ゼッテェ自爆すんなよ‼︎」

 

「分かった。肝に銘じよう」

 

こう見たら初月は聞き分けの良いいい子なんだけどなぁ…

 

これで全員か…

 

「あら、レイ。どうしたの⁇」

 

最後の最後で横須賀に見付かった

 

「ナンパしてんじゃないでしょうね⁉︎」

 

「バカ。嫁の前ですっか‼︎ホラよ‼︎」

 

横須賀に四角い物を投げた

 

「何これ」

 

「”キュービックルーブ”だ。見りゃ分かんだろ‼︎クジ引きのハズレだ。お前にやるよ」

 

「はぁ〜⁉︎アンタ今なんて言った⁉︎キュービックルーブ⁉︎」

 

「キュービックルーブだろ⁇」

 

「ルービックキューブ‼︎」

 

「キュービックルーブだ‼︎」

 

二人の言い合いは、しばらく続いたと言う…


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