艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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今回は誰かな⁇

ビビリのあの人だよ‼︎


97話 ダズル☆マン”K”

レイが駆逐艦寮に行っている時、私、清政は軽空母及び着任したばかりの正規空母の寮に来ていた

 

毎晩一室で電気が点いているとの噂が立っているが、真相は果たして…

 

「こ、ここか…」

 

生唾を飲み、震える手でドアノブに手を掛けた

 

「アヒャヒャヒャヒャ‼︎」

 

「ヒウッ…‼︎」

 

中から聞こえて来た声に、肩を竦ませる

 

どうやら数人居るみたいだ

 

深呼吸して、思い切りドアを開けた

 

「誰だ‼︎夜更かしする奴ぁ‼︎」

 

「そっちこそ誰よ‼︎」

 

「ヒッ‼︎」

 

此方を睨み付ける、丸みを帯びた少女

 

資料によると、改装を終えた”千代田”と言うらしい

 

「ヒッ‼︎だって〜‼︎あはははは‼︎」

 

そこにいた全員に笑われるが、一人だけ反応が違った

 

「あえ⁇ポーラ、この人見た事ありますぅ〜」

 

見慣れた灰色の髪に、タレ目の少女…

 

「コラッ‼︎ポーラ‼︎お前また横須賀に来て‼︎」

 

「ポーラ遠征に来たんで〜すよ〜。今日はここでお休みです〜」

 

「ごめんなさい…私が御誘いしたんです…まぁ座って下さいな」

 

千代田の横に居る、清楚な女性

 

この子は”千歳”だったな

 

後は軽空母”祥鳳”

 

…この子は”半裸”と覚えろと言っていたな

 

後は龍驤だ

 

この子は時々レイと飲んでいるから知ってる

 

「何や〜⁇ポーラの提督さんか⁇」

 

「あえあえあえ…」

 

龍驤はグデングデンのポーラを軽く揺すり、何とか答えさせる

 

「違いますよ〜、ポーラの”好きな人”ですて〜」

 

「ポーラ…」

 

ポーラは酔うとたまに本音が出る

 

今までもちょくちょく聞いて来たから分かる

 

これは本気だ

 

「何や、ボーイフレンドかいな‼︎ポーラも隅に置けやんなぁ‼︎」

 

「ほらほら提督〜、ポーラのハンケッチで顔拭いて下さいて〜」

 

「あ、あぁ…」

 

酒臭い涎塗れのハンカチで顔を拭いている間、ポーラは私の自慢を続けていた

 

「提督は〜、顔はものすご〜く怖いんですけど〜、ポーラにいっぱいい〜っぱい、優しくしてくれますて‼︎一緒にお酒飲んでくれたり〜、ポーラにお休みのチューもおデコにしてくれますて‼︎」

 

ギャラリーから”おぉ〜”と声が上がる

 

「あ、でもポーラちゃん。提督さん、ケッコンして…」

 

祥鳳の一言で場が凍り付く

 

「…ポーラ、提督と出来たらで良いからケッコンしたかったですて…はぁ…」

 

「まだ間に合うかも知れないぞ。ありがと」

 

ハンカチを返すと、ポーラは一度匂いをかいでからポケットに入れた

 

「ホントだ‼︎コワモテだけど、結構イケメン‼︎」

 

千歳とポーラが盛り上がる中、祥鳳は少し反省気味で、千代田は千歳の膝で寝始めた

 

「ポーラ、こんなにお料理も出来るのに…」

 

「何作れるんだ⁇」

 

「このお料理、全部ポーラが作りましたて」

 

手を広げるポーラの先には、料理が沢山さる

 

「へぇ〜」

 

生春巻き、きんぴらごぼう、赤だしの味噌汁に、色とりどりのナッツ

 

「チンじゃありませんて。ポーラ、向こうの国に居た時、チョットだけ、ニッポンで言う”カテーカー”の先生してましたて。あ、流石にナッツは袋から出しただけですて」

 

「へぇ〜意外だな…」

 

よくよく見ると、結構凝っている

 

「ポーラ、こう見えても”ジョシーリョーク”は強いですて」

 

「食べていいか⁇」

 

「どぞどぞ〜」

 

「お酒、注ぎますね⁇」

 

「ありがとう」

 

本来の任務を忘れ、ポーラの手料理と千歳に注いで貰った酒を楽しむ

 

「どうですかぁ⁉︎」

 

「美味いじゃないか‼︎」

 

「えへへ〜、ポーラ、提督に褒められるのが一番嬉しいですて‼︎」

 

ポーラは私の横でニコニコ笑っている

 

酒さえ飲まなければ、ポーラは本当に女子力が高い

 

青葉の一件もそうだし、ポーラには精神的に何度も助けられている

 

感謝しなければな…

 

それに最近、ちゃんとお酒は一日三本に減らしている

 

これも褒めてやらねば

 

「提督〜、もうお家帰りますか〜⁇」

 

「いや、たまには飲んでいい。ただ、ここで飲むのは駆逐艦達の教育に悪い。もう消灯時間だろ⁇」

 

「あぁ…ごめんなさい…」

 

「さ、お片付けは私に任せて。もう少しだけ、みんなとお話してなさい」

 

「あ、は〜い」

 

とは言うものの、皿を数枚洗うだけだ

 

あっと言う間に終わってしまった

 

「さ、ポーラ。行くよ」

 

「提督〜、ポーラ、この草のマットで、ぐで〜っとしてるの好きですて」

 

ポーラは畳の上で寝っ転がり、今にも寝息を立てそうになっていた

 

「よいしょっ…と」

 

ポーラを背負い、玄関まで来た

 

「みんな、どうもありがとう。ポーラ、ありがとうは⁇」

 

「ありがと〜‼︎まったね〜‼︎」

 

「ばいば〜い‼︎」

 

「ほなな〜‼︎」

 

私達が部屋を出てしばらくすると、灯りはちゃんと消えた

 

一応、本来の任務は遂行した

 

「提督〜、ポーラの事好きですか〜⁇」

 

「好きだよ」

 

背負ったポーラは色々質問して来た

 

「ザラ姉様とポーラ、どっちが好きですか〜⁇」

 

「ポーラだな」

 

「ポーラと隼鷹、どっちが好きですか〜⁇」

 

「どっちも好きだよ」

 

「どっちもなんてダメですて‼︎二者択一ですて‼︎」

 

「ったく…何処でそんな言葉覚えた。ホラッ、ここでちゃんとネンネするんだぞ⁉︎」

 

ようやく着いた仮眠室にポーラを寝かせ、完全に取れてない汚れを取る為に風呂へ向かおうとした

 

「提督〜。ポーラからの宿題で〜すよ〜うへへへへ‼︎」

 

「分かったよ」

 

いつも通りにポーラの額にキスをし、部屋を出た

 

 

 

 

「…バカ」

 

 

 

 

 

さ〜てと、私もひとっ風呂浴びますか‼︎

 

「レイか⁉︎」

 

「呉さん‼︎早かったじゃないの‼︎」

 

そして、ドンドンと集まって来る男衆と共に、私達の話は進んで行くのだった


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