艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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96話 シンデレラと合鴨の行進曲(2)

「ごめん下さ〜い‼︎」

 

合鴨直売所と書かれた建物の扉を開けると、合鴨の雛が山ほどピヨピヨ言っていた

 

「いらっしゃい。合鴨かな⁇」

 

奥からおじいさんが出てきた

 

「何羽か売って頂きたいんです。え〜と…出来れば10羽程」

 

「10羽だと4千円だね。一羽サービスしておくよ」

 

合鴨がプラスチックのケースに詰められていく

 

「レイ、これは⁇」

 

きそが一羽抱き上げ、俺に見せて来た

 

「ピ…合鴨だ…」

 

「ふふふ。ローマに怒られるよ⁇」

 

「じゃあ、これ代金。後、わらび餅食べたいから少し置いといてもいいですか⁇」

 

「じゃあ、また取りに来ます」

 

「ありがとうございます」

 

きそが手を振ると、おじいさんはにこやかに振り返してくれた

 

「買えたね‼︎」

 

「また照月の口が開くぞ⁇」

 

「照月は仕方ないよ。行こっ‼︎」

 

久し振りのきそとのデート

 

久し振りとは言うが、正直言うと、鹿島よりきその方が多いかも知れない

 

「わらび餅」

 

店に着くとメニューは少なく、看板メニューであるわらび餅と、ラムネしか置いていない

 

「わらび餅二つとラムネ二つ」

 

「はいよ。ちょっと待ってね。ラムネはそこから取ってね」

 

アンティーク感のある冷蔵庫からラムネを取り出し、きそに渡す

 

「開けて⁇」

 

忘れてた

 

きそと照月はラムネを開けられない

 

一度開け方を教えたが、きそは開ける時の音が嫌いなのか、未だに俺に開けさせる

 

「ほらっ」

 

「へへへ…ありがと‼︎」

 

両手でラムネを飲むきそを見て、目線を風景に切り替える

 

「な〜んもねぇな。ホント」

 

「レイはパイロット辞めたらどうするの⁇」

 

「そうだな…ちっさい町医者でも開業したい気も最近出てきたな」

 

「居住区は⁇」

 

「そうだなぁ…居住区で開業するのもいいな」

 

「はい、わらび餅二つ」

 

「わぁ‼︎ありがとう‼︎」

 

皿に盛られたわらび餅を見て、きそは目を輝かせる

 

「ぷるぷるだね‼︎」

 

「きな粉をこうやって付けるんだ」

 

フォークでわらび餅を刺し、きな粉に付けて、きその口に放り込んだ

 

「冷たくて美味しい‼︎」

 

「ゆっくり食えよ」

 

「うんっ‼︎」

 

きそを横目に、少し考える

 

確かにパイロットを辞めたら何をするか考えていなかった

 

町医者でもいいし、昔の様にセスナのインストラクターになるのもいい

 

…俺は空から離れられそうも無いな

 

「きそは何になりたい⁇」

 

「僕は開発者になりたいな。色んな家具とか、生活に役立つ物を作りたい」

 

あまり先の事を考えていない俺よりウンと立派だ

 

「ごちそうさま‼︎」

 

皿を見せたきその口元には、きな粉が大量に付いている

 

これだけ美味しく食べられたら、わらび餅もさぞ幸せだろう

 

「ちょっと待ってろ」

 

残ったわらび餅を食べ、ハンカチできその口元を拭いた

 

「きな粉付いてた⁇」

 

「口元コナコナだぞ⁇」

 

「ありがと。さぁ”ピヨちゃん”貰いに行こう‼︎」

 

「…」

 

ハンカチを仕舞い、代金を座っていた椅子に置き、一礼して店を去った

 

合鴨を取りに戻り、フィリップの所まで戻って来た

 

きそはフィリップに入り、モニターには合鴨達が映っている

 

《ハッチの中に入れた合鴨の様子はモニターで分かる様にしておくよ》

 

「分かった。んじゃ、帰るとするか‼︎」

 

全くと言っていい程場違いな黒い戦闘機が、美しい風景残る農村地帯から飛び立った

 

 

 

 

 

基地に帰ると、照月とたいほうが今か今かと俺達を待ちわびていた

 

「ただいま〜っと」

 

「おかえり‼︎どうだった⁉︎」

 

「ハッチオープン‼︎」

 

フィリップのハッチを開けると、プラスチックの容器が落ち、中から合鴨達が出て来た

 

「うわぁ〜‼︎可愛い〜‼︎」

 

「がーがーさん‼︎」

 

合鴨達はすぐに二人に懐き、丁度半々位に二人の足元に集まっている

 

「お散歩しよっか‼︎」

 

「がーがーさんとおさんぽ‼︎」

 

「お兄ちゃん、ありがとう‼︎」

 

「すてぃんぐれいありがとう‼︎」

 

「行っておいで」

 

照月とたいほうが合鴨達と散歩し始めた

 

「レイ、これ渡しとくね」

 

きそから渡された書類は、一気に現実に帰す物だった

 

「美味しい合鴨の食べ方…」

 

「合鴨農家の人は、最後はちゃんと食べて、立派な合鴨農家になれるんだって」

 

「…デカくなったら売り飛ばすさ。流石に残酷過ぎる」

 

「美味しいらしいよ、合鴨」

 

「う…」

 

「合鴨」

 

きその目が怖い

 

もしかしたら、きその目的は最初からコレだったのかも知れない…




小話…

ここで一つ小話をします

こんなお便りがありました

”戦艦四天王があるなら、他にも無いの⁇”

あります

”七大魔王提督”です

それぞれ知らない子から見たり聞いたりしただけの印象ですが、そう呼ばれています

以下は素性を知らない子達が言っている文を纏めた物


①パパ…山程航空機を落として来た”航空機バスター”。眼力だけで殺されそうとの意見多数

②レイ…見た目が怖い。よく分からない変態ドクター。バケモノみたいな戦闘機に乗ってるお兄さん。四連撃の魔女を産んだ張本人。逆らったら殺さry

③呉…色々いる中で、見た目が一番怖い。凄い強い基地だから着任したい子もいるが、外見の所為で躊躇っている子が多い。呉に艦娘が少ないのはこの所為

④トラック…最近子供達で噂になっている”人食い蒼龍”を手懐けている怖いおじさん。蒼龍の話の所為で寝られなくなった駆逐艦娘多数存在

⑤ワンコ…あのハンマー榛名を従えてるお兄さん。本人は好印象だが、榛名が怖い。演習でフルボッコにされた駆逐艦娘多数有り

⑥ラバウル…いつも敬語使う怖い人。ニコニコしてるけど怖い。とにかく怖いとの意見多数

⑦横須賀…上記六人を一喝出来る爆乳提督。最近少しでもいらない事を言うと、すぐ”蒼龍の所に送る”とか言ってくる。レイとか言う人とケッコンしてから、ちょっとだけ色っぽくなったとの噂





オマケ

パラオちゃん…提督達のマスコットキャラ

パラオ泊地の提督時は少しクールな印象だったが、逆にそれが良かったとの意見有り

スカイラグーンに赴任してから、社交的で明るくなった

迂闊にパラオちゃんに手を出すと、潮が「イーーーーーッ‼︎‼︎‼︎」とか言って来るので注意




これからも個性的な提督が出るかも知れません 笑

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